らしくない
福島正則「お前の戦い方は隠し事と言うものが無い。尤もこれまではその必要が無かった。完璧な布陣に物量で圧倒しさえすれば、相手が勝手に屈服して来たのだから。ただこれが通用するのは……。」
太閤殿下の威光が働いている時のみ。
福島正則「この事を見せつけられたのが先の唐入り。降伏し、味方になったふりをしながら遊撃戦を仕掛けて来る者。講和の交渉で時間稼ぎをしながら反撃に打って出る等、これまで経験した事が無い危機に直面した。その事はお前も?」
石田三成「殿下が亡くなられた瞬間。撤退に動いた事でもお判りであろう?」
福島正則「しかしこの事を理解していただけない方が……。」
石田三成「うむ。」
福島正則「ただお前はその戦い方しか知らぬ。一方、家康を始めとした多くの諸将はそうでは無い。寡兵で戦わなければならない事態に陥った経験のある方々であり、
『戦っても勝つ事は出来ない。』
と判断した場合は、苦渋の決断で頭を下げ。権益の保持を試みながら時機を待った経験のある方々である。」
石田三成「……。」
福島正則「お前は味方の中に家康に通じている者が居るとは?」
石田三成「考えていなかった。」
福島正則「家康に付いた者への切り崩しは?」
石田三成「しては居らぬ。」
福島正則「小早川秀秋に吉川広家……他にも居るが、ここで名前を出さない方が良いかな?あの日、あの場所に居た者だけであればこちら優位となる事が確定したが故……。」
家康は決戦を挑んだ。
福島正則「三成は恐らく予め設定した陣所で待ち構えているに違いない。正面突破は不可能と思われる布陣であるが、綻びがある。しかもその綻びが、致命傷を負わせるだけのものである事も……。
しかし現実はそうでは無かった。囮を使って誘き寄せるわ。又兵衛は何処かに居なくなるわ。白兵戦に持ち込まれるわ。秀秋は追い返されるわ。吉川が押さえこんでいたばすの秀元が加わって来るわ……。かと言って行き当たりばったりでは無い事は……。」
大筒の使用が物語っている。
福島正則「当初の予定通りとはとても思えぬ。それについては?」
石田三成「正直な事を申せば、予定通りでは無い。」
福島正則「ただな……どう考えてもお前が出来る芸当では無いのだが。」
石田三成「宇喜多様や小西も居ましたので。」
福島正則「秀家も小西も唐入りで苦労した面々だが、基本戦い方はお前と同じ。」
石田三成「私等足元にも及びません。」
福島正則「しかしこのいくさでお前程の働きは見せては居らぬが……。お前。」
何か隠していないか?




