唐入りの件
福島正則「尤もお前は絶対勝つ事が出来ない相手に向かったがな?気持ちはわかるし、完治させるためにはここしか無い。それもわかる。ただお前は20万石の当主。多くの家臣の生活を左右する事を忘れてはならぬ。」
石田三成「しかし自分が生き残るために、秀頼様を蔑ろにするわけには……。」
福島正則「ん~~ん。違う話をしようか?唐入りについてどう思っていた?」
石田三成「そもそもが殿の八つ当たりから始まった案件でありますので。」
福島正則「文禄の時は明を目指していた。事の成否はともかくとして目標があった。しかし慶長は違っていたな……。」
石田三成「一応、沿岸部に拠点を設けると言ってはいました。しかし実態は単なる報復。どのような成果を上げようと、見返りを期待する事は出来ないいくさ。その指示を出したのは殿。手筈通り事を進め、手筈通り兵を戻したにも関わらず殿は……。」
戦線離脱と受け取られてしまわれた。
石田三成「殿の考えを正す事が出来なかったのは偏に私の力量不足。皆の憎悪の念が私に向けられても仕方が無い。」
福島正則「次の年。俺らが渡る予定であったよな?」
石田三成「はい。」
福島正則「どうなると見ていた?」
石田三成「各々の戦いで負ける事はあり得ません。これについては文禄も慶長も同様であります。ただ問題となるのが補給であり、統治であります。沿岸部に拠点を設ける事自体に問題はありません。ありませんが、その拠点を維持するために必要なのが……。」
海の制圧。
石田三成「こちらにつきましてもいくさをするだけであれば、現状でも対処する事は可能であります。ただ凌駕する事は出来ません。加えて大陸までの海。取分け冬の渡海は危険を伴います。大陸で兵糧を調達する事は出来ません。全て海を使っての輸送に頼らなければなりません。多くの兵を留め敵と戦っている以上、それだけの兵糧と弾薬を送り続けなければなりません。たとえ悪天候が続こうとも。これに耐え得る船が決定的に不足しています。」
福島正則「そんな中、殿が考えられていた内陸部への大規模展開は?」
石田三成「一時的に勝利を収める事は出来ると考えます。ただそれは敵も織り込み済み。北へ北へ引き入れた上、糧道を断つ作戦に出る事は必定。これは当地の。我らに恭順の意を表した方々が担う事になります。敵は内から。それも表向きは味方の素振りを見せながら。であります。彼らにとって我らは余所者。心服する事はあり得ません。それは文禄で経験済みであります。ただそれを……。」
豊臣秀吉に説き伏せる事は出来ません。




