まさか
増田長盛退室。足音が消えてから重苦しい空気が流れる中、沈黙を打ち破ったのは……。
福島正則「……これもお前の差し金か?」
石田三成「……まさか……。もしそうだったとしたら岐阜なんぞに其方を呼び出したりはせぬ。仮に呼び出すのであれば全員を集める。それに場所はここでは無く大坂城。秀頼様の前で執り行う。」
福島正則「そうなってしまったら……お前の独壇場だな?」
石田三成「そのような事は無い。これまで通り、皆様の考えをお伺いした上で私の意見を述べるのみ。ただ今の私の立場で皆を召集する事は出来ない。故に佐和山に引き籠っていたに過ぎぬ。」
福島正則「賢明な判断だな?」
石田三成「そう言う其方も?」
福島正則「お前なんぞと話した所で、言い負かさせるに決まっている。ましてや此度のいくさで我らはお前の部隊を屠る事が出来なかった。そればかりか今いくさになったら困る程の損害を受けた奴も居る。交渉となって不利益を被るのはこちら。斯様な状況でお前と話し合いの場を持つ事等あり得ぬ。」
石田三成「共に増田に一本取られたわけだな?」
福島正則「……そう言う事だな。どの辺りから話そうか?」
石田三成「憎き徳川家康を亡き者にするには……。」
福島正則「俺が家康側にある事を忘れぬな。」
石田三成「そうでしたね。ならば……。」
石田三成を襲撃した件について。
石田三成「私の発言により、海を渡られた多くの方々を苦しめてしまった事。深くお詫び申し上げます。」
福島正則「その件については、さっき増田が言った事で理解した。其方に確認せず。皆の話を鵜呑みにしてしまい申し訳無かった。」
石田三成「わかっていただきありがとうございます。」
福島正則「……これは恐らくではあるが、皆。誰が悪いのかを知っていると思われる。」
石田三成「誰でありますか?」
福島正則「この言葉を俺に言わそうとしているな?正直認めたくは無いが……。」
豊臣秀吉。
福島正則「ただ皆が皆。亡き太閤殿下が居なければ、今の地位に就く事は出来なかった。故にどんな理不尽な裁定を下されたとしても、殿を悪く言う事は出来ない。しかし納得する事は出来ない。何処か理由となるものが無ければ、事を収める事は出来ない。殿は大陸はおろか前線基地である名護屋にも居なかった。大坂で静養されていた。御自身の目で確かめられたわけでは無い。誰かの言葉を聞いた上で判断されている。誰が事の次第を伝えているのだ?」
石田三成「殿が総指揮官である。耳障りの良い事だけを伝えては、唐入りされている方々を更なる苦境に立たされる事になり兼ねん。」
福島正則「その事はわかっている。わかっているが……。」
同じ境遇に陥ったら、そうなるだろ?




