義理立てする
大谷吉継が小早川秀秋への攻勢を強める中……。
「私は家康に味方する予定であった。いや違う。そもそもこれは豊臣と上杉のいくさであったはず。」
言葉の主は脇坂安治。賤ヶ岳の戦い等羽柴秀吉の家臣として活躍し、今は淡路洲本城の城主。
「息子の安元を家康の下へ派遣する予定であった。しかしその最中に宇喜多が挙兵。石田三成に行く手を遮られてしまった。心ならずも私は大谷吉継に付く事になってしまった。身の安全を確保するのがその理由。今、私は……。」
藤堂高虎に通じている。
「安元が行く手を遮られた際、(家康と共に会津に居た)山岡景友へ連絡を取る事が出来たのが幸いした。私の希望は既に受け入れられている。ただ条件が提示された。それは……。」
脇坂の陣近くに居る朽木に小川。そして赤座の3名を内応させる事。
「彼らも此度のいくさに巻き込まれた面々。家康と争うつもり等さらさら無かった。故に話はすぐに付いた。後は発動させるだけ。しかしこれには条件がある。それは……。」
徳川の勝ちが確定した時のみ。
「私の主君はあくまで秀頼様。家康でも無ければ毛利でも無い。宇喜多や石田に頭を下げる等以ての外。共に秀頼様を奉じている以上、私が兵を動かすのは勝つ側としてである。私の手勢は少ないが、4人合わせれば3千。戦況を決めるには十分。後は……。」
小早川秀秋と大谷吉継のどちらが勝つかを見定めるのみ。
小早川秀秋「脇坂は何をしておる!約束とは違うでは無いか!!鉄砲でもぶっ放して参戦を促すか?」
「殿。それはなりませぬ。今は目の前の敵に集中し、稲葉様平岡様の到着を待ちましょう。」
小早川秀秋「あいつらは何を手間取っている。松尾山はもぬけの殻ぞ。とっとと切を付けてこちらへ来い!!」
「(出発前と言っている事が……。)」
小早川秀秋「ん!?何か言ったか?」
「いえ。殿の仰る事御尤もであります。」
大谷吉継「脇坂の方はどうだ?」
「変化は見られません。」
大谷吉継「戦況は?」
「戸田様に平塚様の活躍により、優勢に進めています。」
大谷吉継「松尾山は?」
「変化は見られません。」
大谷吉継「三成の備えとこれまでの戦いで足止めさせる事が出来ているが、無人である以上いづれ破られる。それまでに何とか決着を付けなければならないが、如何せん押し切るには数が足りぬ。さりとてここで弱みを見せると脇坂らが敵方に転じる恐れがある。もし彼らが秀秋に付いたら我らに勝ち目は無い。ここは……。」
無理攻めを承知で進むほかない。




