40話 依頼
「ふむ。」
クポの街。
活気あふれるこの街に潜む影。
その影にある中の一つ、高級感漂う部屋で
「エリュシオンからの避難冒険者にSランク級・・・」
「どうやら・・・監視を付ける必要がありそうだな。」
「そうですな。だが、これ以上の能力・・・均衡を保つには不必要でございます。」
「暗殺・・・もやむなしというわけか?」
「いえ、私に考えが御座います。…………」
・・・現在。
「お、こんなとこで何してんだ、お金なんか数えて。」
「買いたい物があるからな。それがまあ高いから・・・」
「いくらするんだ?」
「2000マール」
「おい、なんで俺達の資金をそんなに使いこもうとしてんだ!というか何買うんだよその大金で!そもそもそんなにマール持ってねーだろ!」
ラースの会話に適当な返事をしていたら怒られたが、今やっていることはお金を数えているわけではない。
数えているふりをしてログを確認していた。
「ログ」は普段の状態では、視たいときだけ情報が見れるように設定してあるが、現在は常に見えるようにしている。
それで、何を見ていたかというと・・・
「冗談だよ。怪しい人がいないか探していただけだ」
「何のためにだ!・・・はぁ」
「なんだ?悟ったような顔して」
「怪しい人ならここにいるじゃないか。ほら」
指差した方向は・・・俺。
「まあ確かに怪しいけどさ。そうじゃないんだよ」
「最近誰かにつけられている気がしてな。」
そう小声で言うと、すぐさま真面目モードになったとラースの顔が主張した。
「・・・本当なのか?」
「ああ・・・今は居ないみたいだがいつどこで見られてるかわからない。」
「居ないみたい・・・?分かるのか?」
「なんとなくだけどな」
「怪しいな・・・お前が一番」
「お、そうか、・・・シッ」
ここはクポの街の中でもあまり人が通らない裏路地だ。ここならログのミニマップ機能を使っての判別がしやすい。
人・・・一人がこちらへ近づいてくる。
「!!」
・・・殺気ではない何か。
ただ一つ分かる事は、この人を信用しないほうがいい。ということだ。
「ヒソヒソ会話とは行儀が悪い。」
「申し遅れました。私の名はセールス=バム=スルール。以後、お見知りおきを。」
「バム・・・どこかで聞いた気がするな」
「セバスと略していいか?」
「どうぞお好きに。」
「で、何しに来たんだ。」
「あなたが白様でいらっしゃいますね?」
「ああ、そうだ」
「本日は白様にしか頼めない依頼が御座いまして、引き受けてくれますかな?」
「しかし、引き受けなければ・・・ほほほ」
引き受けなければ何があるのかとても気になる。
「先に内容を話すことはできないのか?」
「それは無理でございます。今ここで引き受けるか、引き受けないか。お選びください。」
「引き受けた。で、どんなのだ?」
「実はドラゴンの卵焼きを食べたいと坊ちゃんが言い出しまして。」
ドラゴンを倒せそうな人と言ったら、真っ先に浮かんだ人といえば俺達だったそうだ。
確かに少し困難な依頼も達成できるようになってはいるが、個々の強さはまだまだだと思う。
こういった指名依頼も街では少なくない。といってもほとんどは迷子のペットを探してほしいとかそんなものだが。
「で、そのドラゴンはどこに?」
「竜の巣という場所がございます。てっきりあなたなら知っているものと思いましたが」
「卵が目的だからドラゴンは倒しても倒さなくてもいい・・のか?」
「そうですが・・・ドラゴンの目を搔い潜る事は難しいのでは?」
「俺からしたらドラゴンを倒すことも難しいかもしれない。できたら戦闘は避けたいと思っていてね」
だって中堅ボスモンスターじゃん。無鉄砲に向かっても返り討ちにされそうな未来が見えてくる。
「仕方ありませんね・・・ではこれを」
「・・・?」
手渡された物は謎の球体。ドラゴ〇ボール並に綺麗な玉だ。
「あなた方を守ってくださる幸運のお守りとでも思っていただければ結構です。」
「では、頼みましたよ」
「報告はギルドでいいのか?」
「忘れるところでした。ギルドではなく、こちらへ。」
案内された所は豪邸。あまり目立たない場所にある。
「わ、わかった」
「では、ゴブ運を」
ちょっとニュアンスが違ったな・・・
この世界に来てから元の世界と少し違うところぐらいよくあるから気にしないでおこう。
「竜の巣、か」
すっかり忘れていた・・・付いてきていたのかラース。
「今日から行くか?」
「少し準備をさせてくれ。」
「ラースは仲間を集めて宿で待っててほしい。」
「わかった。」
この街、クポの街を代表するものと言えば港がある。
その港を中心に様々な店が立ち並び、一言で言えば商店街のような、買おうと思えば大体のものは何でも買える街だ。
その街にしか揃ってないものもあるが今回は違う。
雑貨屋にあるポーションを買うためだ。
エリュシオンが崩れた、その時にポーションのありがたみが身に沁みて分かった。
ポーションの効果は即効性に優れており、飲めば体から、塗れば外からという一言で言うと万能薬である。
まあ、毒とかそういうものは治せないみたいだが。
多分ドラゴンと言うぐらいだから火傷も負うだろう。そういう傷はたいてい治せるので、買っておいて損はない。
「いらっしゃいませ!」
「あっ」
うん。
ララの元になった女の子が店番をしていた。あの時マッチを売っていたのはなぜなんだ。
「この前のお兄さん!」
「・・・」
黙って中級ポーションと書かれた物を取る。中級と下級があるが、まあ中級が無難そうだ。
「これください」
「あっ・・・はい、100マルになります。」
ちょっと高くない?・・・効果を考えればそれぐらいはするか。即効性の万能薬だし。
「ありがとうございましたー」
さて。準備は整った。
宿に戻って作戦会議だ。




