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イチャつく2人に世界樹の福音を  作者: 筆々
2章 彼は彼女の世界との繋がりを知る。
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2-8話 陽は大地を臨む

「ん?」



 俺の肌をピリと撫でる感覚、俺は後ろをついてきているステラに意識を向ける。



「ステラ」



「お休み中の子を起こしてしまったみたいですね。アンナたちは――」



 俺とステラは揃ってシャルとアンナが探索している方に顔を向けるのだが、そちらから何やら騒がしい声が聞こえる。



「シャルくんみてぇ! この爆弾飛べるよぅ!」



「アンナちゃん? アンナちゃん! ちょっとなに浮き上がってんの! どこへ、どこへ行くんだ!」



 俺は頭を抱えると、ステラが申し訳なさそうな顔を浮かべたのが見えた。



「……うちのウサギがすみません」



「いやまぁ、騒がしウサギだしな。あのまま元気いっぱいに育ってくれることを祈るよ」



 そう言いながら、俺はグローブから精霊を呼びだそうとするのだが、ステラにそっと手を押さえられた。



「シャルさん、こちらを」



「ん? これは、精霊手甲――わざわざ作ってくれたのか?」



「はい、これはそっちの蒼い子用に」



 精霊使いは精霊を入れておく容器が必要になる。それがこの精霊手甲なのだが、これ1つにつき精霊を1人しか入れられず、使っても戻ってくる蒼い炎の精霊を入れておくと、他の精霊が使えない状態だったのだが、どうやらステラが気を利かせて作ってきてくれたようだ。



「助かる。代金は――」



「今回の報酬ということで」



「……わかった。だが俺も何か礼を考えておく。時間が出来たら誘いに行くから頭の隅にでも入れておいてくれ」



「はい」



 そして俺たちが準備を済ましていると、のそと2足歩行の人ほどの大きさのトカゲのような魔物が2体ほど現れた。



「リザルバンド、そんなに強くはないが……ステラ、お前は後ろに――」



「いいえ、今回は僕も」



 どこから現れたのかステラがやけに豪華な杖、まるで聖女が使う聖杖のような杖に幾つもの宝石が周囲を浮いており、その杖をクルクルと回し、先端を魔物に向けた。



「サポートは任せてくださいね」



「……頼りにしてるよ」



 頷くステラを横目に、俺は精霊手甲を中心に世界に呼び掛ける(・・・・・・・・)



「その目覚めを以って呼びかけに答えろ。大地の――」



 大地の精霊を手甲に呼び込もうとすると、ステラが杖を振り、さらには俺がさっきしまい込んだ蒼い炎の精霊が大地の精霊にくっ付いた。



「僕が紡ぐのはフェアリーテール、大地を語る一節――彼の者は大地を割り、その力を変幻自在に操った」



 ステラが語る言葉と同時に蒼い炎が大地に纏わりついて姿を変えた。

 大地の精霊は俺の正面で2つの少し大きめなガントレットに変わり、俺が装備するのを待っているようだった。



「ソルさん!」



「せめて事前に説明してくれ!」



 俺はガントレットを腕に装着すると、飛び出してきたリザルバンドが振り上げてきた剣を受け止めた。

 そして剣を弾くと、俺はリザルバンドを殴ろうとするのだが、ガントレットに変わった大地の精霊がそっちではないと訴えてくるような感覚に、そのまま拳を魔物ではなく、大地に放つ。



 その瞬間、大地は棘となって隆起し、リザルバンドの1体を貫いた。



「うをっと!」



「ソルさん、格闘戦も出来るんですね」



「それなりには。だがいきなりはちと困るな、今度から説明してくれよ」



 楽しそうに了承したステラに俺は苦笑いを向けると、もう1体残っているリザルバンドに向かって拳を構えて駆け出した。



 1,2と連続でテンポよく殴ると、魔物は俺の拳に合わせて剣で防御してくる。しかし俺の連続攻撃にいよいよついて来られなくなったリザルバンドが防御を解いた一瞬、体を思い切り傾け、大地を抉りながら魔物に向かって拳を振り抜く。

 俺が放った拳は大地を引き連れて、リザルバンドを打ち抜いていくと、そのまま風穴の空いた体を宙へと放り投げて、俺は息を吐いて肩から力を抜くのだった。



「うっし終了」



「お疲れ様です。さすが戦闘科ですね、武器の扱いは一通り?」



「ああ。学校で、というよりは親父仕込みだがな」



 俺はガントレットを外し、精霊をまた世界に返そうとしたが……。



「ん? おいステラ、また精霊が帰らない。というか、精霊手甲から離れようとしないのだが」



「あらら。う~ん、ソルさん結構精霊に好かれやすい人なんですね」



「まあそうみたいだな。しかしこれじゃあいくら精霊手甲があっても足りないぞ」



「確かに……そうだ、僕、また作ってきましょうか?」



「いや、しかしそう何度も頼るわけには――」



「……」



 ジッと俺を見つめてくるステラに、たじろぎそして肩を竦める。



「さっき言ったように何度も頼めん。これはお前がしっかりと報酬を受け取るべき技術だ。それはわかっているな?」



「はい。今回のことは実験も兼ねているので、それでお相子です」



「……わかった、それで手を打とう。必要なものは俺が取りに行く。いいな?」



「はい、一緒にお出かけしましょうね」



 そんな風に言うステラに、俺はため息をつき、探索を再開するのだった。

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