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   アレしか呼べない嫌な才能


「次は気合いを入れてやりなさい。あれは見ているだけでも、声を聞くだけでも、腹が立って仕方がないんですよ」


 そこまで嫌がるなら、嫌がらせにわざと呼ぼうかと思ったが、カシアもあのミミズもどきはもう見たくないという思いでいっぱいだった。

 カシアは「分かってる」とエミリオの手を払い退け、再び手を上にかざす。


「今度こそ強そうな幻獣を呼んでやる!」


 息巻いて魔力を放ち、カシアは空を仰いで行方を見守る。

 現れたのは――ぽよん。


『まいどーおなじみのー、カットロン十三世にございまするン』


「また来やがった! もう来るな。絶対来るな」


 召喚して約五秒。カットロン十三世は『アデュー』と言って消えた。


「もう一度!」


 手をかざして魔力を放ち――ぽよん。


『みなさんに愛されて五十年、カットロン十三世ですよン』


 無言でカシアはカットロン十三世を蹴りつけ、今度は三秒でその姿を消した。


「ええい、今度こそ!」


 ――ぽよん。

 ――ぽよん。

 ――ぽよん。


 召喚魔法に挑戦し始めて十回目を終え、カシアは息を切らせてその場にうなだれる。


「な、なんでアレばっかり来るんだ? チッ、あんな腹立たしい顔しやがって……もう顔も見たくない」


 そんなカシアにルカが近づき、背中を叩く。顔を上げると、心から哀れむ顔があった。


「まさかあなたみたいな人がいるなんて、想像すらしていなかったわ。幻獣には好みがあってね、好きな味のする魔力に飛びついていくの。大抵は複数の幻獣が呼べるはずなんだけれど――カシアはアレしか呼べないようねえ」


「あんな伸びて縮むしか能のない、最高にウザいヤツを呼び出す才能なんて……」


 悪態をつくディーノだが、彼の口調も哀れみに満ちている。

 死刑宣告をされたと同等の衝撃を受け、カシアは呆然となって目を丸くし続ける。


 ぽんぽん、とランクスがカシアの肩を叩いた。


「ここで落ち込んでいても仕方ないだろ。アレを呼びたくなけりゃあ、お前さんが召喚魔法を使わなければいいだけの話だ」


「……そ、そうだな」


 どうにかカシアが気を取り直していると、ランクスは腕を組み、眉間にシワを寄せてうなり始めた。


「これまでの結果をまとめると、魔法も剣も中途半端に使いこなすことになりそうだな。万能って言えば聞こえはいいが……」


 ランクスがなにを言いたいのか、カシアには嫌になるほどよく分かった。

 要は突出した力が持てない、器用貧乏だということだ。つまり純粋に力を極めたギードに、正面から挑んでも勝てはしないと言いたいのだろう。


 それでもギードに勝つにはどうすればいいだろうかとカシアが考えようとした時、ランクスは「少し手間はかかるが」と言葉を続けた。


「剣と魔法の特訓だけじゃなく、戦い方も教えていかないとな。頭はついてこれそうか?」


 あまり頭を使うのは得意ではなかったが、自信がないとは口が裂けても言いたくない。必要ならば挑むのみ。


「強くなれるなら、なんでもやってやるさ」

 カシアは両拳を強く握りしめ、そう言い放った。


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