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第22話 龍、劉備軍を迎えるのこと

男手様、けいすけ.com様、コメントありがとうございます。


たいへんお待たせしてすいません。

第二十二話、更新しました。よかったら読んでください。

砦に近づく大人数の気配で目を覚ました。

まぶたをゆっくりと開ける。目に赤く染まった空が飛び込んでくる。

意識を下に向けると、毛布が掛けられていた。


≪目が覚めたようだな、政也。充分に休めたか?≫

「ああ、調子はいい。ありがとう」

≪礼はよい。我の使命だからな≫

「そうだったね。ところで、この毛布は?」

≪助けた娘の一人が掛けてくれた。そのままだと風邪をひくと思ったのだろう≫

「そうか・・・。お礼を言わないといけないな 」


毛布を掛けられたことに気付けないほど、深い眠りになっていたことに対して、心の中で苦笑する。

それほどの疲労を気づかないうちにためこんでいたらしい。

背伸びをして気を引き締める。そして、立ち上がって白狐を腰に差した。


「さて、一刀くん達の軍がもうすぐ到着するようだ。彼女たちに知らせないといけないな」

≪そうだな≫


そう白狐に呟き、少女たちが休んでいる大広間に向かった。


*****


 コンコン


全員が大広間で休んでいることを気配で確認し扉をノックした。

少女たちが、息をのむ気配がしてくる。少し警戒をしているようだ。


「私だ。入ってもいいかい?」


なるべく優しい声色を心がけて声をかけた。

『りゅっ!?』と全員が大声をあげそうになるが、寸でのところで声を抑えた。

おそらくあの子を起こさないようにしたのだろう。


『どうぞ。お入りください』


すぐに落ち着きを取り戻した少女の一人から入室の許可を得る。

『失礼する』と告げてから中に足を踏み入れた。そして、一人ひとり顔色をうかがいながら奥へと進み、横になって眠っている少女に近づいた。


「・・・・・・まだ眠っているようだね。中景(ちゅうけい)殿」

「はい・・・・・・」


少女の顔を覗き込んで眠っていることを確認し、そばで脈をとっている、銀髪を少しウェーブのかかったボブにしている少女に話しかけた。

彼女は、姓は張、名が機、字が中景といい、かの有名な張中景かどうかはおいといて、医術の心得があるということで、今までこの子のことを看てもらっていた。


「気力は回復しているので、そろそろ目を覚ましてもいいはずなのですが・・・・・・」

「おそらくは身体ではなく彼女の心が、拒んでいるんだろう」

「そう・・・、ですね・・・」


彼女は私の呟きに、苦渋の表情になった。

私はポンと彼女の肩をたたき微笑んだ。彼女もつられて微笑む。


「みんな。もうすぐ義勇軍が到着する。私が迎えに行くので、もう少し待っていてくれないか?」

『『『『『はい』』』』』


再度、眠っている少女の顔を覗き込んでから振り返る。

そして、劉備軍が到着する旨を伝え、中景殿に少女のことを頼むという旨のアイコンタクトをした後、入口に向かった。



**********


賊討伐の後始末を終えた俺たちは、政也さん達がいるであろう砦に向かって行進していた。


「ご主人さま、桃香さま。砦が見えてきました」

「うん」

「分かった」


朱里の言葉に頷くと、前方を見つめた。

そこには賊が拠点としていた砦が静かに佇んで建っている。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。お姉ちゃん、あの砦にいるんだよね?」


さっきまで『腹減ったのだ~』と呟いて、愛紗にたしなめられていた鈴々が、そう訊ねてきた。

鈴々が言う“お姉ちゃん”というのは、政也さんのことだ。

それというのも鈴々は政也さんを女だと認識しているからだ。鈴々に限らず、皆、そう思っている。

俺が政也さんは男だよと言うのは簡単だ。しかし、政也さん本人が男であると訂正していないのに、他人の俺が訂正するのはちょっと(はばか)れる。


まぁ、男だと言ったところで、信じてもらえないのが、オチだろう。


「お兄ちゃん、どうしたのだ?」


質問に答えずにそんなことを考えて苦笑すると、鈴々に首を傾げられた。


「ん? あ、ああ。なんでもないよ。政也さんだよね? 政也さんなら、愛紗に砦で待っていると言っていたらしいから、いるんじゃないかな。それに朱里や雛里とも約束してるしね。で、政也さんがどうかした?」

「鈴々。お姉ちゃんとヤッ(戦っ)てみたくなったのだ」

「うーん。それは(鈴々!? 何をご主人さまに言っているのだ!?)あ、愛紗?」


政也さんと戦ってみたいという鈴々に、『それは政也さん次第だよ』と言おうとしたとき、愛紗が顔を真っ赤にしながら怒鳴ってきた。

その剣幕に呆気にとられて、愛紗を見つめる。


「りゅ、龍殿とヤッてみたいたいだのと。お、お前たちは女同士ではないか!?」

「愛紗は何を言っているのだ? ヤる(戦う)のに男も女も関係ないのだ!」


いや、関係ある・・・、いや、ないか・・・、この世界では・・・・・・。


「お、お前というやつは!」

「なんなのだ!」

「り、鈴々ちゃん、愛紗ちゃん、落ち着いて!」

「しょ、しょですよ~!」

「へ、兵士の皆しゃんも見ていましゅ!」


言い争いを始める二人を、桃香、朱里、雛里が三人がかりで宥めにかかった。その三人もなぜか若干顔を赤くしている。

俺はどうでもいいことを考えていたため、なだめに入るタイミングを見逃してしまった。

仕方がないので、面白そうに成り行きを見ている星と話をすることにした。


「で、愛紗はなんであんなに怒っているんだ?」

「分かりませぬか、主。愛紗は鈴々の『ヤッてみたい』という言葉を龍と戦ってみたいという意味で捉えていないということですよ」

「あ。ああ・・・、なるほど」


星の的確な説明に、先ほどの鈴々の言葉を反芻(はんすう)して理解した。

つまり、愛紗は鈴々が政也さんとエッチしたいという意味で言ったと勘違いをしているわけだ。


「やれやれ」

「ご、ご主人さま~。なんとかしてよ~」


苦笑い気味に言い争っている二人を見つめていると、困り切った桃香に涙声で呼ばれた。肩をすくめると、今にも武器を構えそうになっている両者の間に割り込んだ。


「二人とも、そこまでだ!」

「し、しかしご主人さま! 鈴々めが、訳の分からないことを!」

「訳の分からないことを言っているのはそっちなのだ!」

「なにを!」

「ああ、はいはい。落ち着けって」


さらにヒートアップしそうになる二人を何とか制して、距離をとらせる。

そして、愛紗が冷静になったところで、勘違いをしていると伝えた。


「か、勘違い・・・、ですか?」

「そうそう。鈴々」

「なんなのだ?」

「鈴々はお姉ちゃん、つまり政也さんと戦ってみたいと言ったんだよな?」

「うん、そうなのだ」

「「ええ!?」」


いまだに怒った表情をしている鈴々に、苦笑しながら確認をとると愛紗ではなく、桃香と朱里が大声を上げた。どうやら勘違いは愛紗だけではなかったらしい。

桃香たちのほうを振り向くと、驚いた表情をしていたのは二人だけではなく、雛里もだった。しかも兵士の何人かも驚いた表情をしていた。


「ふぅ・・・、鈴々の言い方も悪かったかもしれないけど、よくよく考えれば鈴々がそんなことを思うわけがないって分かるだろ?」

「うう。ごめんなさい」

「す、すいません」

「「ご、ごめんなさい」」


四人は恥ずかしそうに頭を下げた。

俺は肩をすくめて苦笑すると、鈴々に向き直った。


「鈴々も言い方には気を付けるんだぞ」

「分かったのだ。ごめんなのだ」


素直に謝る鈴々の頭を撫でる。そして、恥ずかしそうにしている桃香たちと兵士たちを見渡し、号令をかけた。


「さぁ、砦まであと少しだ。けど、砦にいる者たちを待たせるわけにはいかないから、急ぐぞ」

「「「「「「はい!(はっ!)(うん!)」」」」」」

『『『『『おうっ!』』』』』


*****


駆け足で進んだ結果、約十分で砦の入り口前に到着した。

その時、タイミング良く扉が大きく開け放たれた。一瞬、警戒を強めた愛紗と星だったが、そこから現れたのが政也さんだと気づいて警戒を和らげた。

政也さんは愛紗と星に笑顔で一礼してから、俺たちを砦に迎え入れてくれる。それに従って俺たちは粛々と砦内に入っていった。



**********


「賊に捕えられていたのは、十四名でした。今は大広間のほうで休んでもらっています」


一刀くん達を迎え入れた後、一刀くん、玄徳殿、雲長殿に今までの状況を大広間に向かいながら説明する。ほかの子龍殿たちは兵士たちに休憩を取らせながら待機してもらっている。

ちなみに少女たちの人数に貂蝉は含まれていない。白狐に貂蝉は誰も覚えていないと言われたからだ。

なぜ私だけ覚えているのかは不明だ。しかし、少女たちが覚えておらず、本人もいない状況では、貂蝉がいた事実を説明しても意味がない。ここは黙っていたほうがいいと判断したわけだ。


「あ、あの龍さん。あの子のお姉さんは無事でしたか?」

「・・・・・・・・・・・・一応は」


説明が一区切りついたとき、玄徳殿から質問が上がった。

私は立ち止まって振り返ると、そう答えた。


「一応? それはどういうことですか? 龍殿」


これが気にくわなかったのか、雲長殿が目を吊り上げながら訊ねてきた。

私は目をつむって数秒考えるフリをすると、回れ右をした。


「命に別状はありません。しかし、未だに目覚める気配がないのです。もしかしたら彼女の心が起きることを拒んでいるのかもしれません」

「え? それはどういうことですか?」

「彼女が、あの子、自分の妹を逃がしたことに腹を立てた賊たちが、ほかの少女たちの見せしめという形で」


私はそこで言葉を止める。後ろの三人が息をのむのを背中で感じた。

しかし、それ以上何も言わなずに廊下を歩きだしたのだった。

第二十二話をお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想、お待ちしております。

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