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旗の立つほうへ

 黒紫の壁が、ふっと消えた。


 崩れたのでも、裂けたのでもない。王都の白い屋根のあいだに立っていた禍々しい光が、ひと息に薄くなり、輪郭を失い、夜気の奥へ吸われた。遠い街区の石目に残っていた縁も、排水路の底に光っていた細い筋も、同じ拍で沈む。


 中央公園だけは、もとから何もなかった。


 だからこそ、その白さが、いっそう冷えて見えた。


 誰かが、息をした。


「……消えた、ぞ」


 かすれた声だった。隣の男がそれを拾う。


「消えたって、終わったのか? なあ、終わったんだよな?」


 終わったのか。


 口にした者は少ない。けれど、出す前に、同じ考えがいくつもの胸へ移っていった。担架を持つ手から力が抜け、標識棒を掲げていた憲兵の肩がわずかに落ちる。北東へ向かう列の端で、子どもを抱いた母親が、初めて顔を上げた。


 その弛みは、ほんの一滴だった。


 けれど、張りつめていたものが切れるには、それで足りた。


 噴水の音が、戻らなかった。


 水は落ちている。白い石の縁から細い糸を引いて、いつもなら石鉢の底を叩き、軽い音を散らすはずだった。その水音だけが、途中で失われていた。見えない指が、音だけを摘み取ったようだった。


 赤と青の布を結んだ標識棒が、夜気の中で止まる。


 風はある。髪の端は揺れ、外套も膝のあたりでばたついている。なのに布だけが、空中へ縫いつけられていた。


 北東へ進めと叫んでいた騎士の声が、半ばで落ちた。


 言葉の終わりが、聞こえない。声は出ていた。口も動いていた。ただ、その先だけが、広場の真ん中へ吸われていく。


 誰かが噴水を見た。つられて、別の誰かも見る。


 噴水の直上に、小さな黒い点があった。


 針穴ほどの黒だった。柱ではない。炎でも煙でもない。光ってもいない。ただ、そこだけが黒い。夜の黒ではなく、穴の黒だった。白い広場の明るさが、その一点へ向かって細く削られていく。


 噴水の水は落ち続けていた。けれど黒点の真下だけ、飛沫が上がらない。水が見えない厚みに触れ、その手前で消えていた。


「……なんだよ、あれ」


「見るな。見るんじゃないよ、あんた」


 母親が子どもの頭を胸へ押しつけた。けれど、その母親自身の目が、黒点から離れない。


 最初に足を止めたのは、列の半ばにいた老人だった。杖をついたまま顔を上げ、動かなくなる。後ろの若い男が肩へぶつかり、謝ろうとして、同じものを見た。


 足が止まる。肩が押される。担架の片側が沈む。


 抱かれていた子どもが母親の首へしがみつき、泣き声を上げようとして、その端だけが細く切れた。


 黒点が、少し大きくなった。


 広がったというより、白さを食べた。噴水の縁、広場の中心、石畳の目地。何も割れていない。砕けてもいない。なのに、そこだけ遠近が狂い、見ている者の目が奥へ落ちていく。


 白い広場の中心が、奥行きを失っていた。


「戻れ、戻ったほうがいい!」


「ばか、後ろがつかえてる。押すな、押すなって!」


「子どもがいるんだぞ! 退いてくれ。頼む、退いてくれよ!」


 走る者は、少なかった。


 そのかわり、止まる者が増えた。戻ろうとする者が出た。荷を拾おうとする者、家族の名を呼ぶ者、手を合わせる者。進む足と止まる足と戻る足が、同じ石畳の上でぶつかり合う。


 流れは、そこでほどけた。


 銀翼の騎士が声を張った。憲兵が標識棒を振る。赤は通るな、青は進め。さっきまでなら、それだけで人の列は水路のように向きを変えた。


 だが今は、色が届かない。


 人々は布を見ていない。騎士も、北東も、離宮の方角も見ていない。見ているのは、噴水の上の小さな黒だけだった。


 濃紺の外套の一団が、群衆の縁を固めていた。


 ローベルトとともに中央公園へ入った左翼の隊だった。市民と避難民の間へ壁を作り、導線を保つ。それが翼の役目のはずだった。けれど、群衆が黒点へ吸い寄せられ、列が渦を巻きはじめると、壁は内側から押された。


 ひとりの若い騎士が、剣の柄へ手を伸ばした。


 恐怖ではない。焦りだった。声は届かず、号令は黒へ吸われ、押し返そうとした腕は人波に飲まれる。市民を傷つけるためではない。ただ、この流れを断ち切る手立てが、腰の鉄しか思い浮かばなかった。


 その手首を、横から伸びた手が押さえた。


 壮年の隊長格の男だった。


 ローベルトの傍らで馬を駆り、同じ濡れた石畳をここまで来た男。その手は、若い騎士の手首を強くは握らなかった。ただ、それ以上は抜かせない重さだけが、革手袋越しに伝わる。


「銀翼は人民のための騎士団であれ。ユベル・グロンダイルの魂を穢すことは許さん」


 声は大きくなかった。


 怒鳴りではない。号令でもない。低く、けれど芯の硬い声が、人波のざわめきの底をくぐって、若い騎士の手のこわばりへ届いた。


 若い騎士の指が、柄から離れる。離れた指が、わずかに震えていた。


 隊長はそれ以上、何も言わなかった。ただ、抜かなかった手を見届け、視線を群衆の渦へ戻す。


 その背の向こうで、地が震えた。


 空気ではない。石畳の下から突き上げるような、岩が割れる音に近い怒号が、北側の入口の外縁で落ちた。


 人々の顔が、一斉にそちらを向く。黒点へ吸われていた視線が、乱暴に引き剥がされた。子どもが泣き出し、担架を持つ男がはっと息を吸う。剣を収めたばかりの若い騎士も、思わず肩越しに振り返った。


「いまのは、なんだ」


「人の声。人の声じゃないのか、あれは……」


 北側入口の外縁、王宮側へ抜ける道の縁に、ひとりの大男が立っていた。


 上半身を覆うものはほとんどなく、褐色の肌に古い傷と太い入れ墨が走っている。獣の鬣めいた黒髪が、頭の上で荒々しく立っていた。背には、男の身の丈に負けないほどの巨斧。


 魚市場の者たちは、その男を知っていた。


 南港から上がる商人も、声だけは知っている。怖い男だと噂する者も、酒が入ると笑い声が大きすぎると眉をひそめる者もいた。だが、いまその声を聞いて、誰も逃げなかった。


「あれ、魚河岸のバルグの旦那じゃないか」


「ああ、あの声は間違いねえ。バルグ・キーンだ」


 彼は、王宮の者ではない。街の側の男だった。


 その傍らに、丸い眼鏡の女がいた。異国風の衣をまとい、髪はゆるくまとめている。軍の硬さはない。肩の鞄から、紙片や紐や、印を付けた小さな札が覗いていた。


 中央市場の商店主たちは、その女を知っている。


 帳簿のつけ方を教わった者がいる。荷が遅れたとき、どの倉庫へ回せばよいか助けられた者がいる。揉め事を、いつのまにか揉め事でなくしてしまう女だった。


「情報屋のカテリーナか。あの人がなんでここに……軍に戻ったって噂だが」


 そのさらに横に、町娘としか見えない少女がいた。


 髪を高く結い上げ、衣装は質素だった。手は小さい。けれど、汚れを知らない手ではない。水桶を持ち、箒を握り、朝の石畳を洗ったことのある手だった。


「あの子も……見たことがあるぞ」


 街区の清掃に出た者たちは、その子を知っていた。


 誰より先に水を運び、誰より後に道具を片づける。偉ぶらず、前へ出すぎず、人が困ればいつのまにかそばにいる。子どもたちは、優しい姉のように呼んだ。


 その腕に、赤い布の塊が抱えられていた。


 標識棒の赤より深い赤。折り畳まれた端から、金の糸が細く光っている。


 カテリーナが、大男を見上げた。こんな場に似つかわしくないほど、口元だけがいつもの調子に戻っていた。


「しかし、でかい声だねぇ。鼓膜が破けるかと思ったよ。ま、あんたを引っ張ってきた甲斐があるってもんさ」


「であろう? 軍場(いくさば)でも儂の声はよく通るぞ」


「ああ、おかげでツカミは十分だよ。けど、急に呼びつけてすまなかったね」


 バルグは鼻を鳴らし、まだ東へ細く流れている避難民の列を一瞥した。


「魚市場の方はあらかた片付いたのでな。あとは若い衆に任せておけばよい」


 カテリーナが、呆れたように肩をすくめる。


「何言ってんだい。あんただってまだ若造だろうが」


「細かいことを気にするでない。儂は皆から頼られておるのだ。年嵩の者扱いされるのも仕方なかろうが、ガッハッハッ!」


 大男の笑い声が、黒に削られた空気を、少しだけ人の側へ戻した。


 陽気な笑いではない。恐怖を消し飛ばすほど軽くもない。けれど、その場にいる誰かがまだ笑えるという事実だけが、群衆の胸の奥へ、小さな杭のように打ち込まれた。


 笑える者がいる。逃げる道を知っている者がいる。立っている者がいる。


 それだけで、崩れかけていた人の波が、わずかに形を取り戻した。


 町娘のような少女が、一歩前へ出た。


 足取りに迷いはなく、布をほどく指にも乱れはなかった。抱えていた赤い布を、両腕で胸の前へ掲げ持つ。それから、結び目をひとつ、指先でほどく。畳まれていた布が、腕の長さのぶんだけ垂れ、深い赤が夜気の中で一度だけ大きく波打った。


 少女は、その端をバルグへ差し出した。


 小さな手から、大きな手へ。布の重みが移る。荷を預ける仕草ではない。武器を渡す仕草でもなかった。


 何かを、背負わせる手だった。


 この旗を渡せば、街で伏せてきた顔は、もう完全には戻らない。その重さを、彼女は知らずにいるわけではなかった。


 けれど、隠してきた顔と、目の前で沈みかける人の足を、同じ秤に載せるつもりはなかった。


 選ぶ時間は、もう別の場所で終えてきたのだ。


 バルグは無言で布を受け取ると、背の巨斧を下ろした。


 斧頭を地に立て、柄を旗竿のように握り直す。垂れた布の上端を斧頭の付け根へ巻きつけ、革紐を噛みしめるように引いた。太い指が、結び目を二度、押さえて確かめる。カテリーナが、紐の端をひとつだけ直した。


 少女はもう布を見ていない。


 その視線は、王宮側へ抜ける大通りのほうを向いていた。


 巨斧が、持ち上がる。


 ゆっくりと、バルグの腕が伸びていく。斧頭が群衆の頭より高く昇り、巻きつけられた赤が、重さに引かれて一度だけ縦に落ち、それから夜気を孕んだ。


 赤い布が、ひらいた。


 金糸の双翼が、赤地の上で光る。


「あれ……あれは」


「双翼だ。それも金の刺繍。つまり……王家の」


「王旗だ。王旗じゃないか、どうして、こんなところに」


 その瞬間、群衆の息が変わった。


 声にはならない者が多い。けれど、いくつもの身体が同じ意味を受け取った。祭礼の行列で遠くから見た者がいる。王宮の高楼で、風の強い日にひらめくのを見た者がいる。先王時代の式典で、子どものころ父親の肩の上から見上げた者もいた。


 先王陛下の御命。


 さっき騎士の声として広場に渡った言葉が、今度は目に見えるものとして立っていた。


 黒点は、まだ噴水の上にある。


 何も終わっていない。水音は戻らず、旗の下の空気は冷え、白い広場の中心は奥行きを失ったままだった。黒点は、少しずつ、確かに大きくなっている。


 それでも人々の視線は、いま一度だけ黒から外れた。


 赤い旗へ。金糸の双翼へ。それを掲げる街の男へ。その隣に立つ、街の女と、街の少女へ。


 カテリーナが、群衆へ向き直った。


 声が、変わっていた。さっきまでの軽口ではない。中央市場で値を読み上げるときの、遠くまで通る商いの声だった。


「聞きな、みんな。この旗が御印だ。北側にいる者はこっちへ回りな。こいつは先王陛下がお認めになった、『灰色の塔から見てる奴』からの指示だ」


 言葉は短かった。けれど、ひとつも飾りがなかった。


 御印。先王陛下。灰色の塔。指示。恐慌に乱れた頭でも、そのいくつかだけは掴める。誰かが旗を見上げ、それからカテリーナの指さす先を見た。王宮側へ抜ける大通りだった。


「一体、誰だよ?」


「あんたらがよく知ってる緑髪だよ。それで、わかるだろ? あの子が『道は開けてるって』言ってんだ」


 その一言が落ちた瞬間、人々のあいだで、いくつもの記憶が同じ方角を向いた。


「緑髪って……もしかして、あの」


「ミツルちゃんか?」


「精霊の巫女さまの再来……」


「そうか。あの子の指示なら、でたらめじゃない。なあ、でたらめじゃないよな」


「なんたって、カテリーナさんが言うんだ。罠なら、あの人が真っ先に止めている」


 街を知り尽くす女が言うのなら。


 その確かさが、人から人へ移っていく。情報屋のカテリーナは、罠を嗅ぎ分ける女だ。その女が道は開いていると言う。ならば、ある。理屈ではない。街で積み上げた信用が、恐怖の上へ薄く張られていく。


 少女が、細い腕を上げた。


 その指先は、噴水ではなく、王宮側へ抜ける道を示していた。


 彼女は名乗らなかった。


 町娘の顔のまま、ただ道だけを示している。いま群衆が見ているのは、清掃の日に水桶を運んでいた少女であり、街の情報屋であり、魚市場の男だった。それでよかった。遠い肩書きよりも、見知った手が示す道のほうが、いまは人の足へ届く。


 王宮へ入れという意味ではない。王宮へ近づけという意味でもない。ただ、黒点へ吸われて一つに詰まりかけた流れを、王宮側へ逃がし、そこで割る。そのための腕だった。


 新しい道ではなかった。


 すでに命令は回っている。先王の押印を添えた命令文が、将軍府から現場へ、灰色の塔から灯信所へ、短い符号と伝令の息を継いで届いていた。


 だが、紙の上で開いていた道は、群衆の足にはまだ見えていない。


 少女の腕が、その見えない道を、白い石畳の上へ下ろした。


 カテリーナが、抱えていた紙束を開く。何本もの線を引いた簡略な王都図だった。古い図ではない。灯信で受けた更新と、灰色の塔から走った指示が、赤と青の短い線で上から書き込まれている。


 風に煽られないよう、少女が空いた手で隅を押さえる。女の指が、中央公園から王宮側へ伸びる大通りをたどり、白銀の塔へ突き当たる前に、横へ折れた。


 指先はそこで、二つに分かれた。


 片方は、広い石畳を北へ回る。もう片方は、水路沿いの線をなぞる。どちらの端も、同じ北東へ向いていた。


 一本の道へ人が殺到すれば、進む者と戻る者が同じ幅でぶつかり、足を取られた者が沈む。けれど逃げ道がもう一本ひらけば、流れは二手に分かれ、互いの圧が下がる。詰まった喉が、二つになる。


 少女は、地図ではなく人を見ていた。


 担架を持つ男たち。子どもを抱いた母親。老人の肩を支える娘。荷を捨てきれずにいる商人。橋を渡れる者。橋へ押し込んではならない者。その違いが、彼女の視線の中で、静かに分けられていく。


 街の道を、彼女は知っていた。どの街角で荷車が詰まるか。どの石畳が雨のあと滑るか。どの橋のたもとが朝の市で狭くなるか。机上の地図ではなく、水桶と箒と人の足で覚えたものだった。


 だから、その腕は迷わなかった。


 黒点へ目を奪われず、王宮の門へも、王旗の双翼へも、長くは留まらない。彼女の視線は、次に人が足を置く場所を見ていた。赤い布を渡した手はもう空いている。その空いた手が、王宮側の道をまっすぐに切った。


 王家の旗を見上げるために、そこへ立ったのではなかった。


 彼女は、人の足が次に置かれる場所だけを見ている。声が吸われる広場で、旗よりも細い腕が、沈みかけた流れの縁をそっと押し返していた。


 誰かが一歩、王宮側へ踏み出した。けれど、すぐに止まりかける。王宮へ近づいてよいのか、という迷いが背を強張らせた。


 それでも王旗は、高く掲げられたままだった。金糸の双翼が、夜気の中で揺れる。


「よし、行こうぜ!」


「そうだ。道はあるんだ」


「おい、担架はこっちだ。橋には行くな、運河沿いを回れってよ」


 誰かの声が、別の誰かの足を押した。


 旗を見上げた者たちには、それが王家の許しに見えた。


 王宮へ入ることではない。それでも、王宮の方角へ足を向けてよいという、ただそれだけの保証が、赤地と金糸の双翼の下で形を持っていた。


 担架を持つ男たちが、顔を見合わせた。東へ向かっていた列の尻が一度乱れ、それから王宮側へ膨らむ。憲兵がはっとして標識棒を動かした。青い布が王宮大通り側へも引かれ、赤い布が噴水側へ回る。


 濃紺の隊長が、短く号令を返した。


 左翼の壁が割れ、二筋になる。ひとつは王宮大通りから大学正門側へ。ひとつは運河沿いから北東へ。剣を収めたばかりの若い騎士が、群衆の肩を押すのではなく、腕を広げて道の幅を示していた。柄に伸びかけた手は、いま人を傷つけない形で人を導いている。


 最初の分かれ目は、ひどく小さかった。


 歩ける者が、王宮側へ回る。抱えられる者が、運河沿いへ逃げる。担架は橋へ押し込まない。足の速い若者は、大学正門側へ。子ども連れは、壁沿いの広いほうへ寄せられる。


 誰かがそれを声にした。別の誰かが手で示す。意味はまだ揃わない。けれど、足は少しずつ分かれはじめた。


 ひとつだった流れに、もう一本の逃げ道が生まれた。


 銀翼の号令だけではない。魚市場の男の怒号が重なり、カテリーナの声が市場の調子で道を指し、清掃の少女の腕が、人の目を引いた。


 子どもを抱いた母親が、旗を見上げてから、足元を見た。


 それだけで、乱れた足並みが、ほんの少し揃い直す。


 走らない。止まらない。前へ。


 恐怖は残った。黒点は消えない。噴水の水音も戻らない。


 それでも、人の流れは一方向だけではなくなった。詰まりかけていた流れが二つに割れ、細い喉だった逃げ道が、もう一本、夜の中へひらいていく。


 赤地の旗が、巨斧の上で揺れていた。


 金糸の双翼は、白い公園の中心に開きかけた黒を、まだ消せない。


 だが、人々の目を、奪い返すことはできた。


 その旗の下で、町娘のような少女が、もう一度、王立魔術大学へ向かう道と、運河沿いへ抜ける道を示す。


 黒点を見て止まった足が、二つの方向へ、もう一度動き出した。

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