episode 1-9
相棒とダンジョンへ潜るようになって2週間、俺たちは快進撃を続けていた。
オロバスのスピード、攻撃力は凄まじく 今までどのモンスターも一刀両断で屠ってきた。俺は周囲の警戒とマッピングを担当しどんどんと奥へ進んでいた。
敵を寄せ付けないオロバスの強さが、ここがダンジョンだという緊張感が薄れ油断を生じさせていた。
それは第9階層の中ほど、通路の行き止まりに隠された大部屋を発見した時だった。一見ただの行き止まりだが俺の『収納空間』に付随する空間把握能力で短い通路とその奥に全貌が窺えない広さの部屋があった。
俺は隠し部屋を見つけた興奮に警戒することもなく突き進んだ。その部屋は幅が20m奥行きが30mはあるだろうか、行き止まりに祭壇のようなものが見え長椅子があったら教会のように見えたかもしれない、祭壇に興味を惹かれガランとした部屋を歩く、祭壇まであと5mといったところで異変が生じた。
ブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーンブゥォーン
部屋全体に喧しいほどのモンスターのポップ音が響き大量のモンスターが部屋を埋め尽くす、全方位から押し寄せるモンスターを全て相手にするなどオロバスでも無理な話だ、囲まれる状況が先日の暴行を蘇らせモンスターに奴らの姿を幻視する。
後ろから殴られ膝をつく恐怖に竦み小さくなろうと丸くなる、背中に足に頭に幾度となく殴られ斬られる「オロバス、オロバス、オロバス」と心の中で叫ぶ。
少しだけ背中に当たる攻撃が減ってそろそろ終わりか?と顔を上げると違った、オロバスが俺を護るように攻撃を受けていた。刀身が欠け罅が走り俺の目の前で折れ砕け散った。
「あぁぁあぁ・・・・・・あぁぁああああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!」
目の前が真っ赤になり視界が狭くなる、体の感覚が曖昧だ。
古くなった8ミリフィルムの映画を見ているような場面は飛び飛びでくぐもった何かが聞こえてくる、獣の唸り声のような子供が泣いているようなそんな叫びがずっと聞こえていた。
動くものを見つけては拳で殴り手刀で突き刺す、繰り返し繰り返し 暫くすると部屋の中に動く姿がなくなっていた それと同時に俺の意識も闇に沈んだ。
どれくらい落ちていたのか、気が付くと俺の周りには魔石が散乱していて俺1人座り込んでいた。
周りの状況でさっきのことが夢ではないと嫌でもわかる、俺の盾になり砕けたオロバスを思い涙が溢れる顔を覆い嗚咽を漏らす。
「俺が弱いくせに調子に乗ったから、俺のせいで・・・俺のせいで・・・オロバスが」
トクンッ
微弱な、だがよく知っている魔力の波動。
「今のはっ!?この魔石の中にオロバスの魔石が?」
トクンッ
「どこだ!?どこだっオロバス!返事をしてくれ!!」
トトクンッ
「違う!!オロバスは、オロバスはまだ・・・」
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「ようやく気が付いたか。」
「オロ・・バス?」
「うむ、これは我の核になるものだ。」
「やっぱりあの時壊れてしまったんだな。ごめんな、俺が弱いせいで。もう元には・・・」
「何を言っている?核があるのだ時期に戻るぞ?」
「えっ!?元にもどる?」
「あぁ、一昼夜ほど時間は必要だが元に戻るだろう。」
「よかったぁ・・・グスッ・・本当によかったぁ・・・」
「汝は変わり者だな。我は道具だ大切に使われるのはうれしいが、使っていればいずれ壊れる。」
「それは解っている。だけど大切なものが目の前で壊れのは辛いし悲しいんだ。」
「ふむ、それが人の感情と云うものなのだろうな。だが核がここにあるならいくらでも復活できよう、いくらでも壊すがよい。」
「それはダメだ!復活に時間がかかるんだろう?それまで誰が俺を護るんだよ!」
「ふっ・・ここから見ていたが凄まじい暴れっぷりだったぞ、誰が弱いんだと?汝は特別な力を持っておるこの空間もそうだが、汝の体は相当頑丈にできておる。だが心が弱い、明日より我が鍛錬を付けてやろう。」
「わ、わかった俺強くなるよ。」
視界が白に埋め尽くされる。気が付くと元の部屋に戻っていた。
服はボロボロ過ぎてどれだけ攻撃を受けたのかわからないほどだった、にも拘らず傷は無いし血で汚れてもいない 手を見てもきれいなままだった、ザンザ達に暴行を受けていた時の違和感の正体に気づいた。
「これって『丈夫な体』の効果なのか?」
自傷する意思が無ければこの程度ではかすり傷1つ付かない、『丈夫な体』を過信せず少しずつ強くなろうと心に決めた。
-------- オーランのダンジョン第10階層 --------
オロバスが居ないままダンジョンを進む、9階層から戻るより10階層でポーターを使ったほうが早いと思ったからだ。
通路を進んでいくと奥から話し声が聞こえてきた、声は徐々に大きくなり結構な人数が居る感じだ。
角からそっと顔を出し様子を窺う、ボス部屋の前で10人ほどがなにやら話し合っていた。
「どうする?いくのか?」
「無理だろう、見たことないモンスターが混じっているぞ。」
「あぁ、前に入った奴らは緊急脱出用の魔道具で逃げたに違いない。」
「ボスのレアポップに違いない、ギルドに戻って報告だ。」
話がまとまったのか一人が魔道具らしきものを操作すると全員姿を消した。
静かになった通路を進みボス部屋を覗くとリビングデッドに雑じって白いローブがフワフワと浮いていた。
体は無くローブにサークレット、ブレスレット、アンクレット、サンダルと右手側に白い杖を持っているようだった。
「モンスターが魔法を使うのか?」
いかにも回復職っぽい感じで欲しくなった。
「これはやるしかないでしょう。」
意を決してボス部屋に飛び込む、後ろの扉が閉まりモンスター達が一斉にこちらを向いた。
『集中』を起動して待ち受ける、後ろで白ローブの足元に魔方陣が展開される、やっぱり魔法が使えるのかぁ 益々欲しくなった。
押し寄せるモンスターを全部範囲内に収めて一気に片づける、魔法を発動しようとしていた白ローブが目標を失いオロオロしている感じだ。
素早く距離を詰め杖とローブを掴む。
「お前は俺の物だ!」
気合を入れ収納へ引きずり込む、目の前から杖とローブが消え、オロバスと同じように繋がった感覚が増える。
うまくいくかは賭けだったが、無事に2体目の傀儡を手に入れることに成功したのだった。
これが俺の、白ローブ【仮】との出会いだった。
お待たせしました。
脳内の妄想を文字に落とし込むのにえらい苦労します。
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