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不遇な少女達の魔王道  作者: 那由多 ユラ
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第23話

「そうだ、ダンジョン行こう」


「えっ、おねーちゃんいきなりどうしたの」


自動人形二、三号機を筆頭に数名がヘルムートに住まうための書類やら何やらを片付けた希依が立ち上がる。


「琴音、私達は世のオタク共の憧れ、異世界トリップを果たしたんだよ?」


「う、うん。正確にはタイムスリップだけど、それがどうかしたの?」


琴音は何を言っているのか分からないと言わんばかりに首を掲げる。


「魔王に勇者、冒険者ギルドときたらあとはダンジョンでしょ!」


「あぁ、そういうこと。行ってらっしゃい。お土産は無理に買ってこなくてもいいよ」


「…え、琴音来てくれないの?」


「冗談冗談。いいよ、一緒に行ってあげる。そもそも場所わかるの?」


「分かったところでたどり着ける気がしないね」


「だろうね。

ダンジョンは『おねーちゃんが作った砂漠』を過ぎて、さらに私達が召喚された国、『アルバーン』をさらに過ぎて行ったところにある、荒くれ者の集う街、『アララ』の冒険者ギルドが管理してるよ」


アララ…

「なにその諦められたような名前」


「おねーちゃん、今そこにつっこむと話が長くなるよ?話というか、会話がだけど」


おっと、それはいけない。


「琴音、そこまで転移でとべる?」


「ごめん、行ったことないから無理。

ちなみにめちゃくちゃ遠いよ」


「…どのくらい?」


「日本列島12個分」


「ごめん、ぜんっぜんピンとこない。てかこの時代の大陸どうなってるの?」


「そりゃあもう、私達の頃よりさらに文明三回分年月が経ってるからね、全部くっついたよ?南極と北極以外。ってほら、もう会話が長引きそうだよ。

方角はモーゼスがあった方に真っ直ぐ飛べばつくからおねーちゃん連れてって」


「ま、私が言い出したことだしいいんだけどさ。

前と後ろどっちがいい?」


「ん~、今日は後ろからおっぱい揉みたい気分かな」


「揉めるほどなくてごめんね。ほら、身体強化を忘れないでよ」


『身神強硬剛』と、琴音は肉体強度を極限まで上昇させる超古代魔法を唱えてから希依の背におぶさる。

通常のおんぶよりも手を前に出し、希依の胸あたりまで伸ばす。

希依は琴音の太ももを下から支えて落ちないようにする。


「…おねーちゃんのエッチ」


「琴音には負けるよ。

ほら、どっちに飛べばいいの?」


「んーと、あっち!」


「おっけぇ!」と言いながら、その方向にある窓を開け、亜音速を上回る速度で飛び立つ。





「おねーちゃん!壊れちゃう壊れちゃう!」


「あっやば。『破壊力 min』」


ヘルムートの希依による暇つぶしの被害は窓と窓枠、城壁の一部に留まった。




空を飛ぶこと数分、大した危険も無いまま砂漠を超えて国を超えて、男達が賑わうアララへと辿り着いた。


見渡す限り頑丈に組み上げられた木造建築、道具を使わずに畑を耕す筋骨隆々な老人、馬すらも正面から一刀両断しそうな大きな剣を肩に担ぐ筋肉の塊のような冒険者。


まるで隕石でも落下してきたような着地音を響かせた希依達に注目が集まる。

砂煙はすぐに晴れ、希依達の姿が顕になると男達はすぐに目の色を変えて寄ってくる。


「おねーちゃんに、そんな目を向けるな変態ども!『衝風』」


希依達に性的な欲求を隠さずに近寄る男達に琴音は、触れると軽々と人を吹き飛ばす衝撃を放つ風を、薙ぎ払うように放つ。


希依は、全身を震わせながら琴音に縋り付く。琴音は希依を抱きしめ、頭を撫でながら吹き飛ばした男達を睨みつける。


「おねーちゃん、大丈夫?」


「だ、だだだっ、だいじょうっ…」


希依は今にも泣き出しそうな表情で必死に答えようとするが、なかなか上手く言葉が発せない。


希依はかつて、複数の男達からレイプされそうになった経験が多数ある。

そのいずれも偶然に救われ、裸体の写真や動画をネットにあげられただけで処女を失うことにはならなかったのだが、それでも当時小学生、中学生だった希依には多大なトラウマを残した。

今思うと、恐らくその偶然も希依の父親によるものなのだろう。


「おねーちゃん、大丈夫、大丈夫だから。私がおねーちゃんを守るから」


そう言いながら琴音は希依の涙や鼻水をハンカチで拭い、また抱きしめる。


数分、そんなことをしていると希依は何とか気を落ち着かせて立ち上がると、タイミングを見計らったかのように希依達に男が声をかける。


「なんの騒ぎだ、お前ら。事情を聞くからギルドまで来てもらおうか。拒否権はないぞ」


男は鋭く、濁ったような目で希依達を睨みつける。


「おねーちゃん大丈夫?ちゃんと歩けそう?」


「うん。ごめんね、私から来たいって言ったのに、こんなで」


琴音の左腕に抱き着く希依はとても弱々しく、今にも折れそうだ。


「おい、俺は来いと言ったぞ。さっさとついて来い」


「こいつっ…」


今にも殴りかかりそうな琴音だが希依がまずい状況な以上、希依から離れる訳にはいかない。


「フンっ」と、鼻を鳴らしながら男は歩く。







希依達がいた場所とは反対側に位置する冒険者ギルドに着くと、男はドアを開けて希依達に振り返る。


「俺はここのギルドマスター、カールハインツ・アルデンカルト。ギルドマスターであると同時にこの街の長だ。

さて、騒ぎを起こしてくれやがったお前らへの罰だが、まぁここの男達の相手でいいだろ。この街はいつでも女が枯渇してるからな」


女が男の相手をする。つまりは、そういうことだろう。


「へぇ…男、…ね。じゃあまずは、あんたからね!」


道中に完全復活した希依はカールハインツを殴り飛ばす。

現在強制的に破壊力だけをminに設定している希依の一撃はカールハインツを壁まで飛ばすも、カールハインツにも壁にも一切のダメージが入らない。


「ちっ、おいお前ら!あのメスガキぶち犯せ!」


「ヒィッ!?」

カールハインツの言葉とギルド内にいた男達の視線に希依は腰を抜かし、体をガタガタと震わせる。


「だぁから、おねーちゃんにその目を向けるな!『無限・鬼身乱力』」


いま琴音が使った魔法は強化魔法、『無限シリーズ』の身体強化。ステータス的には魔王のMAXをも上回る。その凄まじい力で腕を振るい、ギルドを血と瓦礫の海へと変貌させる。

数値の限界を超える魔法ということもあってか魔力の消耗が激しいようで琴音はゼェゼェと息を荒らげ、顔色を若干悪くする。


「こ、琴音、大丈夫?」


再度トラウマをつつかれた希依もまた、体を震わせながらも琴音の心配をする。


「大丈夫だよ、おねーちゃん。この程度の、奴らに、負けたりなんかしない、から」


「じゃあ、なんでそんなのに無限なんて、使ったの?いつも通りでも勝てたでしょ?」


「すぅぅ…はぁー」と、深呼吸して呼吸を落ち着かせてから琴音は答えた。


「だってさ、私の大好きなおねーちゃんをそんなにしたんだもん、ちゃんと殺さないと。

ぶっ殺して、滅っ殺して、真っ殺さないと」


かろうじて無事なソファを瓦礫から見つけた琴音は破片等をどかし、希依をそこに寝かせる。


「ことね?なにを…」


琴音はソファに座り、太腿に希依の頭を乗せて頭を撫でる。


「少しはこれでマシになった?」


「…うん。ありがと」


普段とは逆の位置にいる希依は赤く染めた顔を隠すために琴音のお腹がある方に顔を向けてうずめる。


「ねぇ、おねーちゃん」


「…なに?」


「この姿勢でよく耳かきしてくれるけどさ、やりずらくない?」

琴音は希依の右耳を触りながらふと気になったことを訊ねる。


「…今聞くこと?まぁ、やりずらいけど。リンちゃんとかリリアちゃんみたいな獣人の子は縦に膝枕するとやりやすいよ」


「へー。おねーちゃん、そんなことしてたんだ。浮気?」


「浮気じゃないもん」


「そっか。

おねーちゃん、今日はもう帰ろ?ダンジョンはまた今度来ればいいよ」


「やだ。もう来ない」


「そう?私は別にいいけど」


「ダンジョンはヘルムートに作る」


「そっか。

その時は事前に相談してね?急にやると私まで怒られるんだから」


「ん、がんばる」


「がんばるって…

ま、おねーちゃんらしいか」



この後希依は眠ってしまい、琴音の魔力が回復してから希依をおんぶしてヘルムートまで転移して二人は帰っていった。

琴音「それでおねーちゃん、どんなダンジョンにするの?」


希依「お父さんに協力してもらってクトゥルフ神話の神話生物がいっぱいいるダンジョン」


琴音「それはやめて。誰も近寄れなくなるから」


希依「…だめ?」


琴音「そ、その目は反則だよ…

せめて、モーゼスがあったところにできた砂漠でやって」


希依「まぁ、それでいっか」

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