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ベター・パートナー!  作者: 鷲野高山
第二章 シュラハト・フェスタ編
46/67

十九話 それぞれの一歩

期間があいてしまいましたが、読んでいただきありがとうございます。


さて、突然ですがこの話の後書きをお借りして、少し書かせていただきたいことがあります。

尚、本編とは全く関係ありませんので、読まなくても問題はありません。部類としては、私の別の作品の話になります。この作品以外にも私の作品に興味を抱いて頂ける方がいらっしゃれば、チラッと見て頂けると嬉しいです。


では、どうぞ。

「いや、本当にすまない。事前に知っていたなら、同行を申し出なかったのだが」


 いつもの余裕をもった笑みと異なり、僅かに眉尻を下げた天坂舞が、姫華に向けて申し訳なさげに顔を伏せる。


「あっ、いえ、そんな。……そ、その、私達も、先輩方と一緒に鍛錬できて勉強になりますしっ!」


 それに対し、姫華はわたわたと小さく手を振りつつも、眼前の舞に言った。


「折角の機会、あわよくば君達と一緒にイベントを楽しめれば、というつもりだったんだ。しかし、ああなった雨音は頑固というか……」


 伏せられていた舞の視線が、姫華から離れて別の方向へ移される。

 姫華もまた顔を動かし、つられるようにそちらを見た。


「――ちゃんとよ! ちゃんとやりなさいよ、黒星堅一!」


 二人のいるすぐ側に展開されている、二つのバトルフィールド。

 それぞれの中心には、お互い向き合っているようにして立つ黒星堅一と鳴瀬雨音の姿。


「……あの、天坂先輩。どうして鳴瀬先輩は、堅一さんに勝負を挑んだのでしょうか? それに、堅一さんには、その――」


 一転、姫華の顔が曇る。

 と、いうのは。宿からこの経験者エリアへと来るまでの道中、突然の勝負の申込みもそうであったが、雨音は堅一にあまり友好的ではないように姫華には見えたのだ。


 むしろ――態度が攻撃的というか、好戦的というか。


 これが姫華共々ならば、まあ分からなくもない。雨音とは、初対面でこそないものの、特別親交があるわけでもなく。あくまで学園の先輩後輩の関係なのだから、人によってはそういう部類の者もいるだろう。

 だが、雨音は姫華には普通だったように思う。

 発せられる雰囲気というか、言動のキツさというか。

 姫華へはないそれが、堅一に対しては端々から感じ取れた気がしたのである。


「ふむ。……まあ確かに雨音は、市之宮君のことは嫌ってはいないだろう。が、私としても残念ではあるが、黒星君に関してはよく思っていないようだ」


 そして、舞は姫華の感じたそれを隠すことなく肯定した。

 本人でこそないものの、他でもない、雨音のジェネラルたる舞の言葉。であれば、その言葉はきっと正しく、姫華の感じた通りで間違いではないのだろう。


「もっとも最初は、恐らくそんなことはなかったと思う。どちらかといえばそこまで大きく興味を抱いていないようだったが、少なくとも嫌ってはいなかったはずだ。だが、黒星君のことを色々知るにつれ、よくないほうへ傾いた」


 これは私の推測にすぎないが、と前置きして、舞は言葉を続ける。


「多分、そうさせた一番のきっかけは、闘技場でのことだろう。――ああ、0クラスへの加入を断ったのもあるかもしれないが、大きく傾いたのは十中八九そこだ」

「闘技場……」

「雨音は、なにより手抜きというものを嫌っている。あの時雨音の目には、黒星君が手を抜いていた不真面目な下級生と映ったのだろう。加えて言えば、黒星君が4クラスだったという事実も要因の一つか。恐らく雨音は、黒星君の能力が4クラス(成績下位)の枠組みを越えているのを、直感で悟った」

「ですが、それはっ……!」


 その推測を聞き、堅一の事情を知る姫華は思わず声を荒げようとするが。


「ああ。詳しくではないが、私も黒星君のことは少しだけ知っている。だから私は、それで彼を嫌いにはならないさ」


 苦笑を浮かべた舞に制され、一時的に口を閉ざす。

 しかし、続いての舞の言葉に、姫華は完全に勢いを失うこととなった。

 

「だが実を言うと、そう感じているのは雨音だけではなさそうでね。無論、正確な数は不明だが、あの訓練を見て黒星君のことをよく思わなかった生徒は確実にいる」

「…………」

「ただ、それとは逆に、黒星君に目をつけた生徒が何人かいるのも事実」

「目を……?」

「市之宮君も知っての通り、あの訓練は私が少し手を加えて、闘技場の予約を確定させた。それを知った何人か――君達にとっては上級生に、黒星君のことを聞かれたよ。本心か冗談かは分からないが、取り敢えず接触しようと考えたり、仮契約を匂わす発言をした生徒もいたね」


 舞が何らかの形であの訓練に関わっていたのは、姫華とて知っていた。なにせ、姫華を闘技場へ連れて行ったのが、眼前の上級生、天坂舞だったのだから。そうでなければ、姫華は堅一が闘技場で訓練をすることすら知らなかった可能性がある。


 が、それ以外は初耳。それも、真偽は不明だが、ライバル(契約の取り合い)になったかもしれない上級生がいたなどと。

 その事実に、姫華は少々の驚きを見せる。そんな彼女に対し、舞はいつもの如く余裕を湛えた笑みに戻り、言った。


「――もっとも、私が狙っている、と告げたら諦めたみたいだが」

「ダ、ダメですっ!!」


 反射的に、舞へと一歩詰め寄る姫華。

 それを見た舞は、クツクツと含み笑いし、あっさりと返す。


「そう慌てずとも、私はもう彼には振られているよ。君がまだ、彼と契約する前の話だ」

「え……」

「だから、心配することはない。それに、君はもう彼と契約して正式なパートナーとなったのだろう? なら、焦る必要はないさ」


 呆気にとられる姫華を前に、舞はフッと笑い、バトルフィールドに立つ堅一をチラと見やった。


「しかし、黒星君は変わったな。……あの時とは違う、幾分の迷いを振り切ったかのような、いい目になった。夏休み前、そして昨日までとも、大違いだ」


 次いで、今度は姫華に視線を戻し、言う。


「そして、市之宮君もいい顔をしている。これなら、二学期が始まっても大丈夫そうだね」


 優雅な微笑み。

 いい顔、のところで姫華の頬が少し朱に染まったが、後の言葉に姫華は首を傾げた。


「二学期、ですか?」

「0クラスに所属する他の生徒へのお披露目。それにさっきも言ったように、闘技場で黒星君を見た生徒は様々な思いを心に抱えている。だが、今の君達なら、きっと学園が始まっても大丈夫だろう、ということさ」


 あくまで、他人の評価。穿った見方をすれば、無責任な発言。


 二学期は、姫華にパートナーが――それも、初めてパートナーができてからの、学園生活だ。

 姫華の心の中には、新しい環境への期待、楽しみがある。だが、それと同時に不安も混在しているのも、隅へと追いやることのできない事実。

 実際、舞の言葉を聞き、そして知り、不安は増した。

 堅一の問題は堅一だけでなく、パートナーである姫華の問題でもある。一部の面識のない生徒、上級生から既によく思われていないなど、それだけで気後れしてしまう不安の種。

 だが、それでも。


「……はいっ!」


 万感の思いを込めて、姫華は大きく、そして力強く頷いた。

 舞の言う通り、今の自分達であれば、きっと乗り越えられえるはず、と。

 しばらく、無言ながらもにこやかにそれを見つめていた舞。

 それは本心か、或いは仮面か。その胸中を推し量る術は、ない。


「――っと、話が逸れたが、雨音のことだったか」


 が、彼女はやがて思い出したように苦笑し、顎に手を当てた。


「恐らく、雨音は雨音なりに黒星君を見極めようとしているのだろう。そのやり方はあまり褒められたものではないが、ある意味手っ取り早くはある。黒星君は割とミステリアスな人間だから、待っているだけではなく、こちらから知ろうとしなければ何も期待はできまい」


 そこまで言って、舞はクスリとした笑みを浮かべた。

 苦笑とはまた違った種類の、どこか妖艶さを伴った微笑。


「……もっとも、そこが魅力でもあるわけだが」

「……」


 この時、姫華の頭に一つの疑念が過った。

 それは、舞が未だ堅一のことを諦めていないのではないか、というもの。

 先程、舞は堅一をソルジャーとして狙っていたと言っていた。あっさりと流され、すぐに話題も転換されたことから一時すっぽり抜け落ちてしまったが、確かに、契約を申し込み振られたと言ったのだ。姫華が堅一と正式に契約を結ぶ前に。


「……敵、です」

「ん? 何か言ったかい?」

「い、いえっ!」


 ポツリと漏らしてしまった呟きは、しかし幸いにも聞こえてはいなかったらしい。

 なにせ単純に姫華が懸念するだけであって、本当に舞にその気があるかは分からないのだ。しかし、心配はいらないと言われたものの、同性である姫華から見ても天坂舞は充分に魅力的な女生徒にして上級生。万に一つも、堅一が揺らぐとは思いたくはないが。


 ――嫌な先輩ではないが、油断ならない先輩。


 慌てて誤魔化しつつ、姫華は内心、眼前の上級生をそう評した。


「さて、始まるな」


 そんな姫華の視線を受けている舞はというと、既に視線はバトルフィールドの方へと向いている。

 彼女の言葉にあわあわと無駄に焦り、姫華もまたバトルフィールドへと視線をやった。


「流石に、黒星君は倒れた昨日今日。なんとか一騎討ちを望む雨音を宥めて種目を変更させたが、はてさて……」


 そうして舞の呟きを横に、姫華は開始されようとしている堅一と雨音の勝負を見守る。


 勝負ということで、最初は堅一との一騎打ちを望んでいた雨音。しかしそれは堅一の体調を慮った舞によって変更され、種目はバトルフィールド内に出現する目標(ターゲット)の全撃破タイムを競う<撃滅>に決定した。


 二人同時にスタートし、互いへの妨害はなし。撃破目標たるドールは、20体。このアトラクション施設ではドールの強さも設定できるため、強さは標準であるレベル3。勝敗条件はタイムの早い方で、残存体力は勝敗判定に含まれない。


 これが、今回の勝負のルール。当事者たる雨音と堅一が二人で話し、決定したものだ。

 要するに、出現する撃破目標(ドール)を先に20体全滅させたほうが勝ちという、簡単な話。


 視線の先、雨音に名ばかりの審判を命じられた南雲が、面倒臭そうに以上のルールを読み上げる。

 そうして、スタートまでの気の抜けた声でのカウントダウン。南雲が、これまた億劫な動作で備え付けられた機械のボタンを押せば。


 ――ブゥン!


 二つのバトルフィールド内に複数の空間の波紋が現れ、撃破目標のドールが出現した。

 それが、スタートの合図。


 動き出したのは、堅一、雨音共にほぼ同時。本来であれば、まだ差は生じないはずのスタート直後、序盤の序盤。

 だが、この時点で既に両者のある一部に違いがあった。

 真っ先に気付いたのは、姫華。と、いうより、それに意識を向けていた姫華であったから、気付けた。


 ――堅一の体力バーが、減った。


 無論、スタート後数秒とも経過していないこの合間に敵であるドールから攻撃を喰らったのではない。

 となればそれは、呪い(天能)による反動。つまり、堅一は勝つためにやる気ということ。


 姫華と契約する前の堅一であれば、いくら上級生である雨音に言われようが十中八九天能を行使しなかっただろう。そして昨日までの彼であっても、その可能性がないとは断言できず、面倒臭さに天秤が傾いたかもしれない。

 雨音の申し出を受けたのもそうだが、適当に流さないのは、やはり心境の変化か。


 身体強化の呪いによって強化された腕から振るわれる銀の手甲は次々とドールに迫り、撃破数を増やしていく。

 

 対して、鳴瀬雨音が用いる契約武装は。剣や刀というには短く、そして小さい、小刀であった。

 傍から見れば、そして剣や槍といった大抵の人が想起するであろう武器からすると、比較的地味で心許ない。

 だがしかし、傍から見た印象がどうであろうと、鳴瀬雨音のそれは確かに彼女の契約武装だ。

 彼女の両手に持たれたそれは素早く投擲され、撃破対象(ドール)に突き刺さる。堅一と比べ遜色なく、順調に撃破カウントを重ねていく。


「……鳴瀬先輩は、確か武装特化型のソルジャーでしたね?」


 姫華が実際に見たのはこれが最初だが、ある程度名の知られた上級生の情報というのは、必然的に下級生にも伝わってくる。

 ゆえに姫華は、名の知られた部類にあたるジェネラルの天坂舞や、そのソルジャーである雨音のことを少しは知っていた。

 ……ただし、南雲に関しての噂は聞いたことはない。が、ジェネラルの舞共々、いずれ天能を見る機会は訪れるだろう。


「そう。雨音の契約武装は、見ての通りあの小刀だ。ただし、攻撃の殆どは投擲によることが多いから、飛刀といった方がいいか。無論、間合いに入られたらあれで斬り合いをすることもある」

「特殊能力は、どのようなものなのですか?」


 武装特化型のソルジャーは、堅一でいう呪いのような契約武装以外の異能力を持たない代わりに、その契約武装に特殊能力が込められている。

 そのため、雨音の契約武装――飛刀に込められた特殊能力を舞に訊ねる姫華であったが。


「……ふむ。ここで私が教えるのは簡単だが、ジェネラルは相手の能力を観察し、分析するのも役目だ。特に、事前の情報がない相手では、必須」


 しかし問われた舞は、安直に答えるのではなく。少しの間を置き、返答した。


「まずは、市之宮君が雨音の動きを見て、考えてみるといい」

「分かりました、やってみます」

 

 姫華は異を唱えるどころか、むしろ舞の言葉に納得して、雨音を観察するようにじっと見やる。

 堅一のような近接戦闘とは異なり、雨音は飛刀による中、遠距離タイプのソルジャー。


 まず、すぐに思い至ったのは、飛刀の数だ。

 普通に考えれば、投擲武器というのは回収しない限り投げたそれが手元に戻ることはない。

 しかし、投げても投げても雨音の手から失われることのないそれは、ドールの足を地面に縫い付けて動きを封じ込めたり、間を置かない連続投擲で自身に近づけさせることなくドールを撃破している。

 時にはアクション映画さながらの身のこなしで宙に舞い、滞空を維持したまま地上にいる複数のドールへ一斉掃射。


 どう見ても、回収はしていない。

 と、いうより。


 むむっと眉根を寄せた姫華が雨音の手元を注視してみれば、そもそも彼女は投げるように手を振るってこそいるが、その実一度たりとも飛刀から手を離してはいないではないか。

 しかし、それでは放たれるはずのない飛刀が、弾丸のように飛び出していく。


 どういうことか、と姫華はより集中して雨音を見つめる。

 激しく動いているため、見間違えたのかもしれない。離していないように見えるだけで、実際は見間違うほどのスピードで投擲しているのかも、と。


 だが、それを確かめることは叶わず。


「嘘っ!? 負けたっ!?」


 そんな驚愕の声と共に、雨音は動きを止めた。

 思わず姫華も、えっ、と声を出し、目を瞬き。


「ははっ、観察に集中しすぎていたようだな、市之宮君。タッチの差で、黒星君が勝ったよ」


 隣からの舞の声によって、ようやく状況を把握する。

 20体という、あまり多くはない目標の数。加え、ドールの強さがレベル3であったことと、堅一と雨音の強さにより、そうそう時間がかからずに決着がついたのだ。


 結果は、僅差で堅一の勝利。雨音は19体まで撃破しており、残すは1体と惜しくも敗北。しかも、その1体も後一、二回攻撃すれば、というところであった。


「では答え合わせといこう、市之宮君。ズバリ、雨音の契約武装の特殊能力とは?」


 姫華に振り返った舞が、少々仰々しく問う。

 最後に確かめることはできなかったが、頭の中で情報を整理。ややあって姫華は口を開いた。


「数、ですよね? 一度投げたものを回収する必要はなく、何度も放てる……それ以上は分かりませんでした」

「漠然としているが、半分正解ではある。まあ、投げたのを回収する必要がないのは、理由の一つでしかないが」


 自信無さげな姫華の答えを聞いた舞は、二、三度頷いて、言葉を続ける。


「正確に言えば、実際に投擲せずに投げる素振り――つまり手首を捻るだけで、手中にあるのとは別の小刀が複製され、それを飛ばしている。先程敢えて飛刀といったのも、ちょっとしたフェイクさ」

「……やっぱり、手から離してはいなかったんですね」

「まあ、一度見ただけでは難しかったかな。大もととなるのは雨音が両手に持つ二本の小刀、その能力によって別に小刀が飛んでいくと考えればいい。さて、そういうわけで、雨音の小刀の特殊能力の一つ目は複製だ」

「一つ目、ですか?」


 きょとん、と姫華が首を傾げる。

 すると、舞はどこか予想していたかのように、笑みを浮かべた。


「時間が短かったのもあるが、一つに囚われすぎだな。特殊能力は、なにも一つだけとは限らない」

「全く気が付きませんでした……」


 言われた通り、姫華は一つの特殊能力にしか気が回っていなかった。しかも、その一つですらちゃんとした正解に辿り着いていない。

 確かにそう、特殊能力は一つだけとは限らないのだ。


「では、それはまた次の機会にでも。……こちらも、次で確信が持てる」

「え?」


 反省に嘆息する姫華。

 しかし、ボソリとした舞の呟きに、目線を上げる。


「いや、なんでもない。――時に、市之宮君。雨音の戦いぶりはどうだったかな?」


 だが、舞は即座にそう言うと、姫華に雨音の評価を求めた。


 鳴瀬雨音の飛刀を用いた戦い方。

 単純に凄いという感想はあったが、それを見ていて姫華は心に思うことがあった。

 言うなれば、それは――。


「凄かったです――まるで、忍者みたいというか」


 そう、忍者だ。

 その戦闘に派手な剣戟や鈍い殴打音はなく、比較的静か。

 複数の小刀を操り、軽やかにして鮮やかな身のこなしで敵を倒す、武士や騎士のようなそれとは異なる戦闘方法。

 

「そうか、それは雨音もかなり喜ぶだろう」


 無論、姫華には貶しているつもりは毛頭ない。

 もっとも、それを褒め言葉ととるかは、受け手次第だろうが――しかし、かなり喜ぶとは?


「えっと……」

「ああ、そのままの意味だ。なにせ雨音は、ああ見えて超の字がつくほどの忍者好きだからな」


 少々意外であった。いや、それは好きな物の一つは誰しもあるだろうが、それが忍者だということが、だ。


「ドラマや時代劇などで忍者が出てくると、それはもう騒ぐ騒ぐ。この前なんか――」

「――まーいー!?」


 苦笑と呆れが混じり入ったような表情を浮かべ、詳しく話をしようとする舞であったが、しかしそれは多大なる怒りの込められた声によって遮られた。


「ああ、二人共お疲れ様」


 振り返った先には、バトルフィールドから出てきた堅一と雨音の姿が。

 声の対象である舞だったが、何事もなかったかのようにしれっと慰労の言葉をかけ、二人を出迎える。


「な、ん、で、それを言うの!?」


 当然、それで誤魔化せるはずもなく、舞に食って掛かる雨音。


「まあまあ、喜べ雨音。市之宮君が、君を忍者みたいと言っていたぞ?」

「ほ、ホントっ!? ……って、違うっ!!」


 しかし舞は舞でしれっとした態度は変わらず。彼女の言葉に一瞬喜色を浮かべた雨音も、すぐさまその表情に怒気が戻る。

 傍らのそれをなんら気にした様子もなく、堅一が姫華に近づいて声をかけた。


「姫華、回復頼む」

「…………」

「姫華?」

「あ、は、はいっ! ただ今っ!」


 上級生二人をぼぅっと見守っていた姫華。

 だが、慌てて我を取り戻し、堅一の身体に優しく触れた。




はい、それでは前書きにも書いた通りの内容で、ここをお借りして少し。


活動報告にも記載しましたが、私勘違いものを書いてみたくて、そのため少し期間が空いてしまいました。

同時投稿、タイトルは『最強のおもちゃ箱』です。

ジャンルは異世界、勘違い要素あり。以下、簡潔にあらすじです。

気弱な少年が異世界に行ってしまい、そこで彼が以前大切にしていたおもちゃに命が宿り、巨大化+超強化されます。ただ、少年自体は非力のまま。彼のおもちゃ、つまり周囲が最強もの。その影響で少年も勘違いされる、的な感じです。

興味を持っていただけたら、読んでいただけると嬉しいです。


ただ、一応メイン投稿はこちらになります。

それでは、以上、お付き合いありがとうございました。

また次話にて。


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