序
以前投稿していた作品の何度目かの改稿です。
つまるところ、わたしは__ いつも誰かからの愛情を夢みていました。
いつか誰かから与えられるかもしれない温もりを、どうしても諦めきれなかった。
だから。
わたしがいて、それでも「幸せだね」と笑ってくれた彼女を、
わたしは、 愛さずにはいられなかったのです。
たとえ__それが、わたしの何もかもを知らないが故の、無知な言葉であったとしても。
***
序
私は空を滑空し、敵陣へと向かう。
目的のものを見つけ、それを奪い去る。 大慌てで抵抗する兵士たちを蹴散らし、私は上空へと舞い上がった。
高く、高く。 地上の誰も、この光に焼かれないように。
風の粒子で編み上げた翼が上昇気流を掴み、私を遥か高みへと運んでいく。
魔術を紡ぎ、風の障壁で爆弾を厚く、幾重にも囲った。
有害な魔素が、ひとしずくも漏れ出さないように。
ついでに__眼下の町や、戦う兵たちにも、守りの魔術をかけておく。
その時。 遠隔操作だろうか、それは耳を刺す爆音と共に、爆発した。
風の繭に守られながら滞空し、溢れ出した猛毒の魔素を圧縮しようと試みる。
パキ、パキ、と乾いた音。
指先から、体が端から凍りついていく。 もう、限界なのだと思う。
魔力が底を突こうとしていた。
残された時間は、もういくらもない。
ここで魔術を解けば、私は助かるのかもしれない。 けれどその代わり、下にいる人々に、取り返しのつかない犠牲が出る。
最初に凍りついた指先は、もう、空気に溶け出している。
最期に、あのおまじないを口にする。 王様は隠したがっていたけれど、私には分かっていた。 それが、一番の魔法だと。
「この国が、この先も豊かでありますように」
「わたしの友人たちが、幸せでありますように」
こうして凍って、空気に溶け出していく自分を見ていると。 私はやっぱり__人間とは、違っていたのだと思う。
終わりゆく自身とは裏腹に、心はひどく穏やかだった。
今までのことを、ゆっくりと思い返す。 そう。 さながら、走馬灯のように。




