【スキル】と『アーツ』と【天賦拝命】
《前置き》
数ある小説の中から本作品をタップ、クリックしていただきありがとうございます。この作品は常に【辻褄合わせ】を行う作品となっています。矛盾点や不足分、誤字脱字に関する『指摘』をいただければ幸いです
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【スキル】───世界における才能の一種。後述する『後天的』な力と違い【生まれた時】から共にあるモノ。過去の偉人の知識や技能の再現や人智では再現が困難で神秘的なモノであり、それは神からの授かり物といわれている
『アーツ』───人類が存命の内に積み重ねる努力の形。勉学、実施し身につけることでそれは目に見えた形として顕現する。それは高貴なモノであり、高潔でいて、極めて科学的なモノであり、神に近づかんとする人の欲望、渇望と言われている
【スキル】と『アーツ』は似て非なるモノ。その生まれ、その成長、その成り立ちこそ違っていようとも所持者のこれからを支え、後世に語り継ぐ手助けをすることだろう
そんな【スキル】と『アーツ』には協力関係───『シナジー』と呼ばれる存在がある。【戦鎚使い】と『筋力増加』は戦鎚という打撃武器を扱う【スキル】だがこれを扱う上で欠かせないものが膂力だ
斬撃や刺突などの技術を磨く必要のある武器種と比べて素人でさえ当たれば攻撃として成立する───それが打撃だ。力によって成立する破壊力を『筋力増加』により底上げする。なんて素晴らしいことか
先天的な【スキル】を『補う』のが『アーツ』と言える。勿論のところ『アーツ』それ自体も強力であるがある程度の【アドバンテージ】をより『強固』にできるなら皆がそうすることは何もおかしな事ではない
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「ジパルハザードの厄毒か」
俺こと、アーツ・マスカルオーネは漸くひとつの学術書を探し当てることに成功した。それは学術書と呼ぶには余りに薄く、数頁しか存在しない物だったがこれからパーティ───『目的を同じくする仲間達』にとって素晴らしい頁だった
「ひと呼吸で痺れと倦怠感、発熱と…」
先人の叡智に触れる───『アーツ』の基礎だ。取っ掛かりに指を入れて頂上を目指す。それが『技術』を手に入れるまでに何度も繰り返される
進んでいると思えば道を間違えていたり、登り切った様に見えてまだ1号目だったり、ひと息に『アーツ』と言ってもそれが形になるまでの過程に妥協があってはならない。それは『不完全』であってはならない
「そうか、いや、なるほど」
今手に入れようとしている『ジパルハザードの厄毒の耐性』はパーティの生命線になる。ジパルハザードは世界に現れた魔物の発生源───迷宮の主の名前である。その姿を見た者は万を超える人の内両手程しか帰ってきていないのだとか
学術書の薄さも納得である。そんな中でもひとつひとつ、楔を打ち、今その喉元に剣が届きそうになっている。生唾を飲み込む───書かれた文字のひとつひとつから先人の死闘が伝わってくる
「お前は一体何が目的なんだ」
最後の一頁に描かれていたのは世界の全体像を締め上げ、今にも飲み込まんと大口を開ける羽根の生えた大蛇の一枚絵だった
「…」
絵から伝わってくる───絶対的な絶望感。仮に実物大だとしたなら途方もない。この一言に尽きる。分かりにくいかもしれないが椀の中の米粒を箸でひとつひとつ取り出して食し尽くせるか
理論上は可能だが果てしなく、そして途方もない。勝てるのか───いや、勝たなくてはならない。それが目的で、人類の悲願だ
「…はぁ」
薄くも重い、新しくも血生臭いそれを読み終え、細く、息を吐いた。呼吸すら憚られる緊張に身震いが止まらなかった。その時
『ジパルハザードの厄毒耐性』を獲得しました
「… … …やった」
細い糸を手繰り寄せた先に【天賦拝命】が反応した。それは成功した確たる証拠だった───俺のスキルの効果は『アーツ』の取得率の明確化だ
本来取得できているのか分からない、取得方法が正しいのか分からない。そんな不明瞭な『アーツ』を【確実】に手に入れることのできる【スキル】───それが俺のスキルだ
「先人、達の死は、無駄じゃ、なかったんだ」
頬を伝い、鼻が鳴る。学術書の最後に記されていた「これが無駄にならないことを祈る」───吐血の跡が思い出される。それは死の間際の吐露、彼らの、遺言だ
「…準備が終わった」
俺の役割のひとつが終わった。久しぶりに立ち上がり、本の山を掻き分け、部屋の外へ向かう。次に必要なのは『共有』だ
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「マスカルオーネ
今回は随分と時間がかかってやがるな」
「武器は使わねば鈍る
スキルもまた然り」
「…そう言うのは本人がいない場所で
愚痴ってくれないか?」
「マスカルオーネ〜
いつまでグズグズしてんだよ」
「早く共有せよ」
「その前に食事か風呂を貰っても?」
「っち、しゃぁねぇな」
アルトラとゴードンが部屋の外で駄弁っていた。『共有』もそれ程便利な『アーツ』ではないって再三言っているが聞く耳を持たない。俺の説明が悪いのだろうかと何度も思ったが他の2人にも『共有』できている上に戦闘を問題なく行えている辺り伝わっている筈なのだ
「できる限り早く纏めるから」
「はいはい、またそうやって
先延ばしにするんだろ」
アルトラが笑いながら手で「早く行け」と言っている。ゴードンは無言で両腕を組んでいるが飲み込んでいる様だった
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頭を洗い、身体を洗い、湯船に浸かる。頭の中で『アーツ』の『共有』に必要な内容を考えていく、詳細を詰め込めば『共有』の質が上がるがパーティメンバーの2人が退屈をしてしまう
かと言って簡易的に伝えれば『共有』で獲得できる『アーツ』の質が下がる。こればっかりは俺の説明力次第だ
「問題は免疫ではなく、耐性だな」
説明の算段が整った辺りで、ひとつの懸念点が生まれた。『アーツ』の『グレード』だ
『状態異常への耐性』には幾つかの獲得方法がある。主に2つ『代謝による副次獲得』と『知識による準備獲得』だ
『代謝による副次獲得』───例として毒物であれば、少量・希釈した毒物、弱体化させた毒物、酷似した毒物を克服することで『抵抗力』を手に入れる手法。現物や次世代・前世代の毒物を意図的に体内に取り入れることができれば身体がそれを異物として対処する方法を身につける。危険が伴うが確実な方法。専ら戦闘においてはこちらで獲得することが多い
『知識による準備獲得』───俺がしている『アーツ』習得方法。例として、毒物であればどの様な素性であるのか、どの生物が扱うのかなど、知識により身体を慣らし『抵抗力』を身につける方法。危険が少なく、書物や話を聞くだけでも獲得が可能
しかし、『準備獲得』においての欠点は『知識は知識でしかないと言う点』。『代謝獲得』と比べ『不確実』なのである。本当にあっているのか。獲得できているのか。不安はついて止まない
『代謝獲得』は危険だが確実
『準備獲得』は安全だが不確実
こそ【天賦拝命】だ。不確実性を払拭できる
「でもなぁ」
が、ここで新たな問題が発生する。それが『成長限界』『共有難度』だ
『成長限界』───代謝獲得と違い、知識はそれ以上の意味を持たない。1を聞いて1を知ることしかできない。2を仮定、思案することはできるもののそれだけでは『抵抗力』は殆ど上がらない。『代謝獲得』には『免疫』が存在するが『準備獲得』では『現物の知識』が必要となる
『共有難度』───代謝獲得と違い、共有が可能なのだが、1を共有するには『1になるまでの過程』を再現しなければならない。ある程度の要約は可能であるが共有相手が理解していなければ失敗する。
アルトラとゴードンはその点が非常に難しい、何分【天才剣士】と【その身一つが鋼鉄が如く】な硬派そのもの、実践しなければ精神は伊達ではない
湯船のお湯を両手で掬い、顔に叩きつけ、深呼吸をする。急いでも仕方ないが4人をこれ以上待たせる訳には行かない
「でもなぁ」
難しい問題に頭を抱える俺だった
◆◇◆◇◆
「…」
漸く形になってきた。後はこれを『複写』して、皆んなに渡せば『耐性』が手に入る。そうすれば『実践』で『免疫』まで使い込んで貰えば
「どうしたんですかぁ?アルトラ様」
「マスカルオーネのせいだよ
一刻でも早く厄毒を討伐したいってのに」
「仕方ないアルトラ
最難関の迷宮主
文献自体が少ない」
「エリアはあいつの肩を持つのか?」
「違う、慎重になるのは
何も悪いことじゃないってだけ」
「けっ、市民の皆様には
苦しいけど耐えてくださいってか?
ふざけんな」
壁を隔てて3人が言い争っている。俺のせいだ。アルトラの言う通り『共有』をしてからでも良かったかもしれない。だが『共有』の問題点は目に見えないことだ
【天賦拝命】により、俺は獲得したことを証明できるが味方への『共有』となれば別、一歩でも間違えれば死が近づいてくる。そうなれば俺が殺したも同然だ
「ゴードンは?」
「外で武器を振ってますよぉ」
「これから向かうのに
疲れを蓄積する意味不明」
「これから向かうのか!?」
「アーツ」
「アーツさん」
「マスカルオーネ!やっとか」
「悪い事は言わない、本格探索は
回数を重ねて」
「分かってる、早く共有をしろ」
「…」
俺の立場ではこれが限界だ。戦闘の前線に出ている者に後方で支えるだけの俺が口を出せるのは助言だけだ。俺は参謀ではない
作った資料を【魔術師】【祈祷聖女】
【皇帝剣術剣聖級】に手渡し、説明を始めた




