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クーカイ×クーカイ  作者: 青山 高峰
第七章(第二部)

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20 憑き物

「ねえ若菜(わかな)ちゃん、もしかしてあの(いし)ってまだ()っているの?」


「あの(いし)……ああ」

 若菜(わかな)ちゃんがキッと(にら)んだ。


「お(まも)りのことを言っている? ()てるわけないでしょ」


「どうして? あの(いし)()ててって言ったのに」


最低(さいてい)、あの日のことを(おも)()さすなんて本当最低(ほんとうさいてい)。せっかく(わす)れかけてたのに。胸糞悪(むなくそわる)っ。さようなら」


()って、若菜(わかな)ちゃん」


 ()いかけようとすると、(りん)ちゃんがぼくの法衣(ほうい)(つか)んだ。


海人(かいと)くん、()って、わたし……」


「ごめん、(りん)ちゃん。ぼく若菜(わかな)ちゃんを()わなきゃ。ここまで(おく)ってくれてありがとう。じゃあね」


 口早(くちばや)に言うと、(りん)ちゃんが(かな)しそうに()(はな)した。


☆☆☆☆☆


若菜(わかな)ちゃん、若菜(わかな)ちゃん、()って」

 ヒールで(ある)いていた若菜(わかな)ちゃんにはすぐ()いついた。


かつて若菜(わかな)ちゃんを(つつ)んでいた(あざ)やかな(あか)(ひかり)は、今はどす(ぐろ)()のような(いろ)になっている。その(いろ)(にお)いに眩暈(めまい)()こしそうになりながら、必死(ひっし)(となり)(ある)いた。


「ついてこないでよ」


若菜(わかな)ちゃん、よく()いて。若菜(わかな)ちゃんはつかれている」


「そうだね。(たし)かに(つか)れている。毎日(まいにち)、お(みせ)()わるの()(がた)だし」


「その(つか)れじゃなくて。()りつかれているんだ」


「はあ?」

 若菜(わかな)ちゃんが()()まって(にら)んだ。その()(おも)わず身体(からだ)硬直(こうちょく)する。


(ひさ)しぶりに()った幼馴染(おさななじみ)によくもそんなこと言えるね。冗談(じょうだん)だとしても(わら)えない」


冗談(じょうだん)じゃないよ。若菜(わかな)ちゃんは()りつかれてるんだ。(あたま)(いた)かったり、(ねむ)れなかったりしていない?」


「はいはい、そうですね。でも、だから何? それが(れい)仕業(しわざ)だって? それが分かったところで、どうしようもなんないでしょ」


「そんなことない」

 若菜(わかな)ちゃんの(うで)(つか)んだ。


「何よ、この手。何もできないくせに。ほっておいて」

 若菜(わかな)ちゃんが(うで)()(はら)って(ある)きだした。


全身(ぜんしん)黒煙(こくえん)()()いているように見える。


なんとかしないと、このままいけば若菜(わかな)ちゃんは()んでしまうかもしれない。

でも天徳院(てんとくいん)(かえ)って、これから(ちん)ちゃん()にあった呪物(じゅぶつ)をきちんと(はら)わなければいけない。(とく)(ほん)は! (いま)(ふだ)(した)(ねむ)っている悪霊(あくりょう)には油断(ゆだん)はできない。


(いま)すぐに天徳院(てんとくいん)に、連城(れんじょう)先生の(もと)(もど)らなくちゃダメだ。そう(うった)えかける理性(りせい)全部無視(ぜんぶむし)して(くち)(ひら)いた。


若菜(わかな)ちゃん、()って! ぼくが」


 若菜(わかな)ちゃんは面倒(めんどう)くさそうに()(かえ)った。


「何?」


「ぼくが何とかするから」


「はあ?」


「ぼくが除霊(じょれい)する」


「へえ、面白(おもしろ)そうじゃん」


 心地(ここち)()(ひく)(こえ)若菜(わかな)ちゃんがはっとした。()(かえ)ると、20代くらいのスーツを()()(たか)(わか)(おとこ)が立っている。


「イズル様!」


 若菜(わかな)ちゃんが(あま)(こえ)を出した。イズルは微笑(ほほえ)むと、若菜(わかな)ちゃんの(ほう)悠然(ゆうぜん)(ある)いていく。イズルがちらっとこっちを()た。


「このお(ぼう)さん、若菜(わかな)(とも)だち?」


小学校(しょうがっこう)(ころ)同級生(どうきゅうせい)です」


(はじ)めまして、川奈(かわな)イズルっていいます」

 イズルが丁寧(ていねい)(あたま)を下げた。


楠木(くすのき)、いえ連城海人(れんじょうかいと)です」


連城海人(れんじょうかいと)()名前(なまえ)だね」

 イズルの()がキラっと(ひか)った。


(うん)()さそうだ。今度(こんど)(あそ)びにきなよ。(いの)ってあげるから」


「イズル様、ダメですよ。海人(かいと)はもう自分(じぶん)宗教(しゅうきょう)があるから」


「へえ、ずいぶんと(なか)いいんだね」


 イズルが若菜(わかな)ちゃんの(こし)をぐいっと()()せ、

()けるな」

 若菜(わかな)ちゃんの(くちびる)をむさぼるようにキスをした。


 心臓(しんぞう)がどきんと()った。ツインテールで、元気(げんき)(あか)るい小学生(しょうがくせい)(ころ)若菜(わかな)ちゃんの(かお)(かさ)なる。(むね)(おく)悲鳴(ひめい)を上げた。()えがたい熱気(ねっき)(のど)にこみあげてきて、いたたまれなくなって(かお)(そむ)けた。


「さてと、海人君(かいとくん)だっけ?」

 イズルの(こえ)がする。でも(かお)()けることが出来(でき)ない。


(おれ)教祖(きょうそ)って立場上(たちばじょう)、よく若菜(わかな)除霊(じょれい)をするんだけど。(きみ)除霊(じょれい)できるの? 本当(ほんとう)なら今回(こんかい)はお(ねが)いしたいな」


 びっくりして(かお)を上げた。イズルは魅惑的(みわくてき)()微笑(ほほえ)んでいる。


若菜(わかな)も、いいだろ」


 若菜(わかな)ちゃんは(ほほ)紅潮(こうちょう)させ、(いき)()()えって(かん)じで、(うなず)いた。


「イズル様が、そう言うなら」


「なら()まり!」

 イズルがにっこりとした。


☆☆☆☆☆


 若菜(わかな)ちゃんは(まった)()()じゃないようだったけど、(ちか)くの公園(こうえん)まで一緒(いっしょ)についてきてくれた。そこでちょうどいい東屋(あずまや)を見つけた。(ちか)くに(きよ)らかな小川(おがわ)(なが)れており、その上、あたりには(だれ)もいない。東屋(あずまや)に入ると、イズルに()かって(あたま)を下げた。


若菜(わかな)ちゃんについている(れい)があなたに()りつくといけないんで。どこか(べつ)場所(ばしょ)にいてください」


「えー問題(もんだい)ないって、自分(じぶん)(はら)えるし」


 と、しぶられた。()わりにスマホで動画(どうが)()らせてくれというのを(ことわ)るのはさらに大変(たいへん)だった。そもそも何が()()してくるか()からないのに、動画(どうが)()っておくのはよくない。(とく)電化製品(でんかせいひん)(まわ)しておきたくはない。


「1時間くらいしたら(むか)えにくるよ」


「1時間で()わるか()かりませんが……」

 そう言うと、イズルはあからさまに不満(ふまん)そうな(かお)をして、


「じゃあ若菜(わかな)()わったら連絡(れんらく)して。(むか)えに()るから」

 イズルの言葉(ことば)若菜(わかな)ちゃんがとろけるような笑顔(えがお)(うなず)いた。


☆☆☆☆☆


 東屋(あずまや)の中のベンチに若菜(わかな)ちゃんを(すわ)らせた。(こう)()き、右手(みぎて)金剛杵(こんごうしょう)左手(ひだりて)(ふだ)(にぎ)りしめる。室内(しつない)(ちが)い、(きよ)らかな(かお)りが充満(じゅうまん)してくれない。こんなんで上手(うまく)(きよ)められるだろうか。やはり天徳院(てんとくいん)()れて行って除霊(じょれい)すべきだったんじゃないだろうか。()かんできた(まよ)いを()()すように(きょう)(とな)える。すると若菜(わかな)ちゃんがイライラと貧乏(びんぼう)ゆすりを(はじ)めた。


「ねえ海人(かいと)海人(かいと)(こえ)耳障(みみざわ)りなんだけど。()めてくれない……ねえ()めて」


 悲痛(ひつう)(さけ)(ごえ)無視(むし)し、(きょう)(とな)(つづ)けた。


()めて……()めろ」


 若菜(わかな)ちゃんが絶叫(ぜっきょう)した。


若菜(わかな)ちゃんに()りついている悪霊(あくりょう)よ。若菜(わかな)ちゃんの身体(からだ)から()ていけ――


(ねん)じながら必死(ひっし)(とな)(つづ)ける。すると若菜(わかな)ちゃんが(きゅう)(わら)()した。その(こえ)(すで)若菜(わかな)ちゃんの(こえ)ではない。(ひく)(おとこ)(こえ)()(もの)(あらわ)れた!


「ひどく頭痛(ずつう)がする、念仏(ねんぶつ)()めてくれ」


 若菜(わかな)ちゃんがこめかみを()さえた。このまま調伏(ちょうぶく)させてやる! (きょう)(とな)える(こえ)()り上げた。すると若菜(わかな)ちゃんが突然(とつぜん)キャミソールの肩紐(かたひも)()をかけた。


()めてくれるなら、この(むすめ)()かせてやる」


 (あたま)()(のぼ)った。(ふく)()()ろうとした()(つか)んだ。この悪霊(あくりょう)若菜(わかな)ちゃんを何だと思っているんだ。金剛杵(こんごうしょう)若菜(わかな)ちゃんの(ひたい)(ちか)づけた。


「おい、それ以上(いじょう)(ちか)づけたら、この(むすめ)(たましい)()ぬぜ」


(うそ)だ」


(うそ)じゃない。この(むすめ)(たましい)ともう6年も一緒(いっしょ)にいるんだ。(すで)(おれ)(たましい)同化(どうか)(はじ)めている。だから(おれ)()ねば、この(むすめ)(たましい)()ぬ」


(うそ)だ、そんなの(うそ)だ」


「そう思うなら、(ため)しにやってみればいい」


 若菜(わかな)ちゃんがぼくの(うで)(つか)んだ。ゾッとするくらい(つめ)たい。


「どうした? ()(ふる)えているぜ」

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