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非科学的潜在力女子  作者: ゆずさくら
非科学的潜在力女子
4/42

(4)

「知らない方がいいよ」

「こいつはまだ信用できない」

「アキナ!」

 亜夢は両方の手を小さく振った。

「そういう意味じゃないから、そんなこと知ってもメリットないし」

「……違う」

 奈々がうつむきながら、小さい声で言う。

「たぶん、アキナの言うことが正しいんだよ。信用出来ないんだ」

「奈々、違うよ」

「そうじゃないの。さっきの先生の話と同じ。私も無自覚なの。なんの超能力があるかわからない。だから誰も私を信用出来ないんだよ。私って超能力らしいことは何も出来ないのに、都会では眠れなくなって、測定器には値がでちゃう……」

 支離滅裂なことを話始めている、といった雰囲気だった。

 アキナも本村も亜夢の方を見つめる。

「ある日突然、私は眠れなくなった。医者に通う内、超能力計測器を持ち出して私をテストし始めたわ。けどそれが何のことか分からなかった。ネットで調べると、都心には超能力者を混乱させる為電波が出ているらしい。超能力を持った人間が要所に入り込まないようにする為みたいね。私も最初は何も記録されてなかったのに、何度か計測しているうちに段々値が大きくなってきたの……」

 奈々は机に向かって話続ける。

「ここに来ることが決まる前、医者から私の超能力の計測値を見せられた親は泣いた。一緒に暮らせなくなることを知っていたのね。それから何日もしないうち、私はここに入れられたのよ!」

 亜夢は奈々の席に近づいて、そっと抱きしめる。

「私達は孤独じゃないわ」

 奈々の髪の上に涙が落ちた。

「だから大丈夫」

 奈々は亜夢にしがみつくようにして、泣き始めた。


 その次の時間は、亜夢も奈々も目を真っ赤にしながら授業を受けた。

 先生も気づいたようだが、何もきかなかった。

 昼休みになって、亜夢と奈々とアキナ、本村の四人で学生食堂で食事をした。

 各々がトレイを持って窓際の席へ座った。

 奈々は外が見える側、亜夢は奈々の正面に座っている。

「亜夢、あなたはどうやってここに来たの?」

「私も奈々と同じ。不眠症になって…… けど、その時には簡単がことが出来るようになってた」

 アキナも本村を興味をもったように食事の手を止めた。

「何、簡単なことって?」

「他人がどうやって超能力に気付いたか興味あるな」

 急に亜夢は笑い始めた。

「どうしたの?」

 亜夢の笑いは止まらなくなってきた。

「……ごめんごめん。ちょっと私のはここじゃ話せない」

「亜夢、ずるいよ」

「食べ終わったら話す。ふふっ…… だからアキナ話して」

「私も不眠症になって、超能力の測定をしてって。流れは同じさ。列車にも、飛行機にも乗れない。こんな田舎街に車で来たんだよ。二十四時間、車の中だよ」

「ああ、私も車だった車だった。なんでだろうね?」

「それは知ってる。発火する可能性があるバッテリーとかって航空便でやらないでしょ? そんな理由らしいよ。超能力で列車や飛行機が落ちたら困るってことみたい」

 亜夢は威張ったようにそう言った。

「で、私がどんなことで超能力に気付いたかっていうと」

「アキナのことだから、喧嘩とか?」

「そんなイメージしかないのか」

「いや…… そういうわけじゃ」

「風呂上がりに、髪をふきながら、とか、おやつ食べならがら、とかのタイミングでマンガのページをめくれたんだよね」

「親が私のやってることにビックリして、逆にこっちがびっくりした」

 亜夢も本村も笑ってうなずいた。

「あるある」

「それは、どういうものを動かしてページをめくってたんですか?」

「多分、風。どうやってページとページの隙間に風を入れれたのかは分からないけど」

 亜夢は食事が終わったようで『ごちそうさま』と小さい声で言った。

「奈々、超能力は小さくて軽いものを動かす方が簡単なのよ」

 亜夢はトレイを片付けに行った。

「物理的な力と一緒、ってことですか?」

 アキナと本村がうなずく。

「そうか、ページを押さえていたのは風じゃないんだよな。あれはなんだろう? えっとね、ページとページのザラザラを合わせて絡ませてやる感じ」

 アキナはそう言う。

 本村は少し考えてから答える。

「それって圧着しちゃってるんじゃない」

「あっちゃく? ってなに? 確かに、手でめくろうとした時にページが離れなくて焦ったことがある」

 四人は順番に食事を終えると、ウォーターサーバーから水をくんで戻ってくる。

「亜夢。皆食べ終わったし、そろそろいいんじゃない?」

「……アキナ、そんなハードル上げないでよ」

「ハードル上げてるわけじゃないから、早く話してよ」

 亜夢は顔を突き出して、集まるように仕草した。

「大きい声じゃ恥ずかしい」

 余計にハードルが上がる。

「今は違うんだけど。昔はね、男の子みたいだったのよ」

「今もそれなりに喧嘩っ早くて男らしいが」

「で、で、それでね。男の子みたいにオナラをプープー平気でしてたの」

 奈々は納得した顔をした。

「なんか一つ、華麗にスルーされたな」

「だから食べてる時に言わなかったのね」

 うなずきながら奈々がそう言った。

「女だってオナラぐらいする」

「そうなんだけど、小学校の高学年になってすごく恥ずかしく感じたのね」

「これ超能力、の話しだよね? まさかオナラを我慢する能力??」

 奈々が笑いだした。

「本村さんの今の、オナラを我慢する能力、イコール腸の能力って意味で掛けてるの?」

「あっ、そういうことなのか、亜夢」

「違う違う……」

「けど、今のままじゃ、オナラと超能力の目覚めって何もつながらないし」

 亜夢は困った表情になった。

「でね。恥ずかしかったから、なんとか臭わない方法はないかって考えたの」

「えっ……」

「じゃあ、それこそ『腸能力』ってことじゃん」

 亜夢は手を振って否定した。

「お腹の中をコントロールするんじゃなくて、出た後の空気をコントロールすることにしたの」

「マジ?」

 亜夢は鼻をつまんで手を振ってみせた。

「オナラって、結局空気中に分散するから臭うわけでしょう。分散させないまま、どこかに持っていってしまえば、自分でしたことにはならないじゃん」

 アキナが亜夢の顔を指さした。

「えっ、じゃ、自分でしたオナラの空気を他人の方へ押しやった…… ってこと?」

 亜夢は首を振りかけたが、最終的にはうなずいた。

「酷くね、それ酷くね?」

「亜夢ちゃんのオナラが凄く臭かったら傷ついただろうね」

「臭い、臭くないは関係なくね? してないひとの周辺に自分の屁の空気を流したんだよ。濡れ衣きせたんだよ」

 奈々がクスクスと笑った。

「オナラだからいいんじゃない?」

「私なら名誉毀損で訴えるよ」

「かなり家で練習したのよ」

 そこで本村が笑い始めた。

「そんなにしょっちゅうオナラでたの?」

「ちがうよ。さすがにそんな出ないもん。芳香剤とか、匂いの出るもの使ったの」

「超能力を使うキッカケがオナラ送風だったなんて」

「それに、今はちゃんとトイレ行ってするから。今はしてないから。信用して」

 奈々が急に立ち上がった。

「そうか! 今日の霧!」

 亜夢はうなずく。

「あれの原点なのね」

「そうなるわね。分子を擦りわせて静電気を発生させるのも、何度も練習したわ」

「けど、どうやって雷をコントロールするの?」

「切り裂きやすいように空気を動かして雷の道もつくるの」

「え〜 なんか凄いね」

 本村が頬杖をついてぼやくように言う。

「亜夢って、いきなり気体を動かしたのね。なんかレベルの違いを感じるわ」

「練習すれば出来るよ」

「そうそう。亜夢。今日も午後、練習しようぜ」

 亜夢は人差し指でバツ印を作った。

「知っているでしょ? 今日から数日はダメなんだよ…… 」

「えっ、今日からなの?」

 本村もアキナも驚いた声をだした。

 すると、構内放送が始まるチャイムが鳴る。

『全校生徒、教員のみなさん。至急校舎内へお戻りください。繰り返します。全校生徒、教員のみなさんは至急校舎内へお戻りください』

「なに? なにがあるの?」

「ヘリが来たのよ」

『乱橋亜夢さん、乱橋亜夢さん、至急職員室へ起こしください。繰り返します。乱橋亜夢さん、至急職員へ起こしください』

「ヘリって…… 超能力者は航空機に乗せられないんじゃ?」

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