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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
戦いの終わり 本土への帰還
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第93話伊58の戦果

久しぶりに伊400視点です

「敵の戦艦を撃沈したらしいですよ。」

その知らせを持ってきたのは、セレター港港湾部部長の佐伯中佐だった。

「そうですか。」

佐伯中佐の口調が、興奮したものではなく、冷静なものだった為、伊400艦長日下中佐も冷静に返していた。

「本当ですか!」

ようやく、興奮した口ぶりで言ったのは副長の渡辺大尉である。

やはり、最初に言った者が冷静な口調だとどんなに凄いことでも、冷静に返してしまうものなのだろうか。

伊400は今、シンガポールのセレター港で修理を実施している。

それも、あと5日程度で終わるところまで来ていた。工事の進捗状況は予定通りの物であり、順調に進んでいる。

「そうですか、所で何が撃沈したんですか?」

艦長が興奮してるような口ぶりで言った。

「これと同じだ。」

そう言いながら、佐伯中佐は伊400を指差した。

「潜水艦ですか!」

副長の渡辺大尉が、興奮していると分かりやすい感じで言った。

「その通りです。敵戦艦を撃沈したのは、伊58潜水艦です。報告では、アイダホ型戦艦を撃沈したとなっています。」

「アイダホ型ですか・・・」

副長が、幾分残念そうに言った。

それも仕方なかった。アイダホ型戦艦は、1915年に建造が開始された旧式艦であったのだ。

日本でいうと、扶桑型や伊勢型が同世代の艦である。

ただ、同時期の日本戦艦と比べると如何しても、低性能艦と言われてしまう。

確かに装甲では勝っているが、最大速力が21ノットと低く、25ノットは出せた伊勢や扶桑と比較すると、明らかな劣速であり微妙な存在であったのだ。

彼は、新鋭のサウスダコタ型かノースカロライナ型戦艦あたりを撃沈したのではと、内心で一瞬思ったのだから、落胆も大きかった。

まあ、それでも大物食いである事に変わりは無いのだが、その程度の艦なら何隻も持ってるアメリカのことである、大した影響も無いであろうことも分かりきった事であった。

「と言うことは、金剛の仇を取ったということですな。」

艦長がまたまた、判断しかねる声音で言った。

「そうですね。しかも、アメリカの戦艦を初めて洋上で沈めた艦が、潜水艦になるとは思いませんでしたよ。」

戦艦金剛は、レイテ沖海戦後本土へと帰還途中に、台湾海峡でアメリカ潜水艦シーライオンの手によって、沈められていたのである。

だから、金剛とも同世代艦と言える戦艦を沈めた事で、敵討ちを出来たと言ったのである。

また、アメリカの戦艦はこれまで真珠湾攻撃で湾内で沈んだもの以外、一隻も沈没していないという、ある種の不沈艦とも言われていたのである。

それを艦砲戦ではなく、潜水艦の雷撃で沈めた事は十分に驚くべきことであったのだ。

しかし、実際に沈めたのは戦艦では無く、重巡インディアナポリスだった事が、戦後発覚し彼らを落胆させることになる。

「しかし、なぜ雷撃できたんでしょうか?」

副長が、今までのアメリカの対潜網を考えると、何故ですかね?というのも言外に含んで言った。

「どうやら、敵艦は単艦航行だったみたいだな。あと、その後いきなり通信量が上昇しているみたいだから、何か特殊な任務にでも付いていたのでは無いかな。」

佐伯中佐が一気に言い切った。

彼は、通信量が上昇した事でどうやら敵は、この艦に何か極秘任務を与えたのではないかと思ったのである。

確かに、その推測は当たっていた。

しかし、その任務はすでに完遂されていたのである。

テニアン島への原爆の輸送。それが、インディアナポリスの任務だった。

もし仮に、行きに撃沈出来ていたならその後日本を襲う惨劇を防げたかもしれないのだ。

だが、すでに運び終わっているのだから、そんな事は意味が無いのだが。

「どちらにしても、今の我々に確かめる手段は無いんだ。確かに、久しぶりの吉報だが、だからと言って戦局が変わるわけではあるまい。」

だから、あまり浮かれるんじゃない。そうも言った。

ただ、もういくら気を抜かなかったとしても、戦局を挽回することは不可能なのである。

それはつまり、連合艦隊がその力を失ったということである。

「確かに、浮かれてる場合ではないですね。現に今本土は空襲を受けているのですからね。」

「そうだ、この程度の戦果で浮かれてる時ではないんだ。」

そう艦長は、強く断言するように言った。

もはや、戦艦1隻沈めたところで何の意味もない。これは口惜しいが、事実であった。

また、連合艦隊も残存戦力が乏しく、また燃料も本土決戦に備えて節約に努めている為、動くこともできなかった。

それに対し、アメリカ側は条約明け後にすでに10隻の戦艦を建造しており、1隻やられたと言っても痛くもかゆくも無いのだった。

「それに、奴らは護衛空母を一週間に1隻の割合で竣工させているみたいですからね。国力が違いすぎますよ。」

佐伯中佐が投げやりに言った。

彼が投げやりになるのも仕方なかった。それほどの力の差が日本とアメリカにあったのである。

そう、基礎工業力が日本とアメリカでは、宇宙と地と言ってもいいほどの差があるのである。

第93話完

なんか、100話越えるの確実になりました

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