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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
潜水艦隊の意地 重巡インディアナポリスとの戦い
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87/112

第86話潜水艦隊の意地10

遂に!

「発射管扉開きます。」

「水雷長分かってるとは思うが、極力静かにしろよ。」

「分かってます。ですが音を完全に立てないことも不可能です。」

「そんくらい分かってるさ、それより、もう発射地点についているんだ。早く開けてくれないか?」

「了解です。」

がこん

その音が静かな艦内に響く。

恐らく、敵の聴音手がよっぽどの間抜けではない限り、この静かな海では聞こえてしまっているだろう。


その音が聞こえたのは、唐突だった。いや、予兆はあったのかもしれない。

多分、艦長を始めとする上層部いや、艦橋中の雰囲気に流されてしまっていたのだろう。

しかし、彼らに死を告げるであろう音は、確かに聞こえた。

これは、はっきり言える。だから、即座に叫んでいた。

「敵潜発射管扉開放音探知!9時の方向距離2000!」

「それは確かか!」

艦長のマクベイ大佐が叫び声をあげながら聞いてきた。その表情からはまさか?嘘を言うんじゃ無いと思っているのがわかったが、ここで怒鳴り返しても、艦の窮地に間に合わなくなるだろうから、努めて冷静に言った。

「はい。間違いありません。明らかにイゴウの音でした。さすがに型まではわかりませんが、雷撃がまもなく来ることは間違いありません。」

「何故だ?何故ジャップの潜水艦がいやがるんだ!」

副長が半ば狂乱状態になりながら叫んだ。

「落ち着け!貴様が職場放棄してどうする!」

マクベイ大佐が、副長を宥めようとする。多分艦長は副長を見て、こうなってはいけないと思ったのだろう。この状況の中で、ひどく冷静でいるように見えた。

「どうするんですか?逃げないとやられてしまいますよ!」

「分かっている!だが、機関室最大出力出せるか!」

「無理です!巡航速力の15ノットで航行しており、敵はいないとの判断でしたので、圧力を必要最低限に落としてたので、速力を即座にあげることは不可能です!」

「いいか、1ノットでもいい、速度を上げるんだ。面舵に取れ!」

「 了解!」

艦長の命令で航海員が舵輪を回す。

そうしてしばらくしてから、艦が右舷方向に回頭し始める。


「注水開始!」

水雷長が静かだが、気迫のこもった声で言った。

それと同時に、ごぼごぼという注水音が聞こえてくる。


「発射管注水音探知しました!同じ敵です!」

インディアナポリスの聴音手が、その音を即座に聞き取り、艦橋中に聞こえるような大声で言った。

「何隻もいるわけないだろう!間に合うか?」

最後に艦長は自問するように言った。

「何がですか?」

思わず、舵輪を操っている航海員が聞いた。

「魚雷を避けられるかに決まってるだろう。」

今艦は、敵潜に向けて回頭している。

それは、魚雷と平行に艦をする事で魚雷への投射面積を減らすためである。

簡単に考えても、弦側を見せるよりも、細い艦首側を向けたほうがいいのは分かるだろう。

間違えてもここで、艦尾を見せてはいけない。

何故ならば、下手をしたら魚雷の命中によって、スクリューを吹き飛ばされ、浸水はないのに航行不能という情けない状況になってしまうだろう。

確かに、艦首に被雷しても浸水によって艦首が沈み込んでしまうから、下手に前進できなくなるが、それでも微速航行か、後進によって帰還することはできるだろう。

要は、浸水を最低限に止め推進系統が生きていれば、十分に生き残れるのである。


「目標、こちらに回頭始めました。」

聴音手の声が冷静に響く。

「発射待て。」

橋本艦長が、言った。

「何故です?」

水雷長がさも不服そうに言う。

「敵艦が、回頭し終わるのを待つ。」

「そんな事したら、魚雷との正体面積が減少して、当たらなくなりますよ!」

「いや、角度を工夫して撃てばいい。」

「どういう事ですか?」

「艦を右に後進させながら、回頭させる。そうすれば、敵の右舷側に当てられる。」

水雷長は、そんな簡単な手段があったのかと、一瞬放心しながら肯定することにした。

「了解しました。」

「発射のタイミングは、こちらが出すが、いいな。」

「はい、大丈夫です。と言うより、そうしないと撃てませんよ。」

「まあ、そうだな。」


「魚雷発射音聞こえません。敵艦ロスト。」

「何!何が何でも見つけ出せ!」

「静かに・・・敵機関音微弱ですがします。恐らく直進してると思われます。」

「それなら、このままでだいじょうぶだ。まさか、ジャップがジャーマニーの誘導魚雷ミソザイを持っているとは思えんからな。これで、機関の圧力が上がれば、逃げ切れるぞ。」

マクベイ艦長は、興奮しつつも安心したという表情を見せていた。

やはり、突発的な敵との遭遇で、気をかなり張っていたのだろう。

「敵潜なおも直進中。進路に変わりはないと思われる。」

ここで、彼の経験の浅さが出てしまった。

伊58は現在、前進ではなく艦長の命令によって、後進しつつ艦首を右に向けていたのだ。

彼は、敵の機関音は全て前進中であると思っていたのだ。

そう、インディアナポリスには敵潜を発見するという幸運と、敵潜の動きを掴めきれないという不運が襲っていた。

そう、幸運と不運両方が同時に起こっていたのだ。

第86話完

と見せかけて、撃ちません

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