第85話潜水艦隊の意地⑨
朝投稿したと思ったら、してませんでした
「敵は来ないな?」
「はい、敵がくるような兆候はありません。」
マクベイ大佐が聞き、副長がこれに追随する。
そう、副長は艦長のイエスマンのような存在だった。そして艦長は、そんな副長に信頼を置いていた。
こういう者は、自分に都合の良い事を言う人間は重宝するが、そうで無い者は切り捨てるか、無視するのだ。
だが、マクベイ大佐の場合はまだ有能な人材ならば都合の悪い部分は無視するが、必要なところを聞くことができた。
今回の場合は、敵は来ないと決めつけていたため、来るという意見は完全に黙殺していた。
まあ、他の者でも本土にあれだけの被害が出ているのならば、敵は来ないだろうと考えたことだろう。
しかし、インディアナポリスの敵は潜水艦であったのだ。
それは、水面下を航行することによって敵に見つからずに接近する、隠密攻撃を基本としていた。
だから、よっぽど間抜けなことをしない限り、攻撃前に見つかることは、少なかった。
そして、マクベイ大佐を含めインディアナポリスの首脳部は、敵はこないと高を括っていたのだ。これで見つけられるわけがない。
日付は、7月30日に変わっていた。
「8000」
この距離ならば、十分に射程距離であるがまだ、必中を期すならばもっと近ずくのが、定石である。
最低でも、2000まで近ずく必要がある。
そう、この時代の魚雷は誘導装置なる物が付いているものは、ほとんどんどなく無誘導のものが大半であった。
酸素魚雷の利点は、威力が大きく航跡が見えないことである。
命中率では、現代の誘導魚雷に遠く及ばない。
しかし、潜水艦から発射される場合はそこまで低くもなかった。何故ならば、限界まで接近してから放つためである。
また、航空機ようの酸素魚雷が開発されようとしていたが、着水時の衝撃で暴発する危険や整備性の悪さ、そして航空魚雷の場合敵に目視された状況で突っ込んで行く為、航跡が見えないという利点がある必要性が無かったのだ。
そう、酸素魚雷はあくまで、発射する場面を見られない場面に於いて威力を発揮できるものであるのだ。
「これならうまく行くだろうな。」
「部品の精度もいいですしね。」
「ああ、まあ酸素魚雷は下手したら誘爆しちまうからな、さすがに熟練工が作ってるんだろうな。」
「そうじゃ無いと怖くて、使えませんよ。」
「そりゃ当たり前だ。特に潜水艦は事故があっても逃げられないからな。安全管理はしっかりやらんといけん。。」
「分かってますよ水雷長。自分だって死ぬ気はありませんよ。それに敵に一泡吹かせられるっていうときに、不良品の魚雷なんて撃ちたくないですよ。」
「それは、どんな時でもそうだ。気を抜いたら終わりなんだ。特に戦場ではな。」
「それにしても、アメさんの物量は凄いですよね。伊400がパナマ運河を破壊して、戦局が変わると思ったんですけどね。」
「タイミングが悪かったんだろうな。それにドイツが降伏しちまったからな、全精力を対日戦に傾けてるんだろうよ。」
「確かに、ドイツの降伏は大きかったですね。ですがその前に我が軍には、反撃できるだけの戦力がなかったと思いますよ。」
「確かに、空母機動部隊が壊滅してたからな。どっちにしろ変わってなかったかもな。」
「7000」
あと5000で魚雷を放つ。そう考えながら橋本中佐は、潜望鏡を覗いている。
「行けそうですか?艦長。」
「ああ、確実に行けるぞ。こう上手くいくことはそうそうないぞ。」
「運が良かったんですかね?」
「其れもあるだろうが、敵としてはもう我が軍にここまで到達出来る有効な戦力が無いと思ってるんだろう。」
「要は、油断してるということですね。」
「簡単に言えばそういう事だ。まあ、痛い目に合わせてやろうじゃないか。」
「そうですね。敵に我が軍がまだ健在であることを思い知らせてやりましょう。」
「気のせいか・・」
「どうした聴音?」
マクベイ大佐が、聞いた。
「何か機械的な音が聞こえた気がしたのですが、気のせいだったようです。」
「そうか。まあ、気のせいだろうな。」
インディアナポリスの聴音手は、オーケストラ主催で絶対音感を持っており、わずかな音も聞き逃さない自信があったが、余りに小さかった為確信が持てなかったのである。
まあ、敵潜がこんな所まで来るはずもないしな、そう考えて自分を納得させ、再び聴音戻った。
「レイテ島に着いたら、取り敢えず乗員を上陸させるか。」
「そうですね。まあ、敵はこないでしょうし、大丈夫でしょう。」
「副長なら、そう言うと思ってたよ。」
そうして彼らは、自ら群狼の海に飛び込んでいることに気づかずにいた。
「5000」
そう言いながら、橋本中佐はニヤリとしていた。なんせ最低でも、巡洋艦クラスの敵がのこのことやってきているのだ。ほうが緩まないはずが無かった。
「よし、奴をやれるぞ。」
発令所に、艦長の声が静かに響く。この状況でやれないわけが無い。その確信がこもった声だった。
こうして、インディアナポリスは群狼の目の前に飛び込んで行ったのである。
第85話完
そろそろですね
長いです
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