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航空機搭載潜水艦伊400最後の出撃  作者: 飛龍 信濃
オーストラリア通商破壊作戦
32/112

第31敵艦追跡

ついに接触します

「敵なんか来ませんよ。」

そう軽口を叩いたのは、輸送船マンハッタン号の見張り員である。

「よせもし敵がいたらどうすんだよ。まあ居ないだろうがなHaHa! 」

「ああもうドイツは降伏したしジャップだってもう終わりだ!もう敵なんているわけねえな。」

「そうだ!そうだ!それに制海権はUSNAVY が握ってるんだ。ジャップなんて腰を抜かしてるだろうよ!」

「そうだな。あんな卑怯な奴らが来れるはずがねえ!」

「ここはもう我らの海だ!」

「そうだジャップなんていやしねえ!」

「艦長彼らのテンションは危険ですよ。」

「それは分かっているが、雰囲気を壊すのもよくないからな。」

「しかし!こういったときにやられるんです!」

「そうは言ってもな、こんな所で注意してみろ士気に関わるぞ。」

確かに後半日程度でプリスベーンに入港できる、位置についてはいたが、そのあと少しというところでやられた船を、副長は何度も見ていた。

だからこその警告である。

「そうは言っても、日本海軍は本土周辺から出てこれる状況ではないだろう。」

「しかし、海上封鎖の隙をつく事は、潜水艦なら十分可能です。もしかしたら、今追尾されてるかもしれませんよ?」

「悪い冗談は、よしてくれ。今追尾されてるかもだ?それはないと思うが?」

「何故でありますか?」

「簡単に言えば、味方以外の電信を探知していないからだ。潜水艦と言っても、定時連絡位はするだろう?」

これは事実であった。潜水艦は定時連絡以外に安否を、確認する方法がないのだ。そのため、定時連絡を絶った艦は撃沈されたか、行方不明として処理されるのだ。

「それはそうですが、作戦後にのみ送信するという可能性もあります。」

「しかしな、そんな事をする程日本には余裕が無いだろう?」

「そうかも知れませんが、用心するに越したことないと思います。」

「みな長い航海で、気が立っているんだ。プリスベーンで休ませてからでよかろう。」

「しかし!」

「副長話は終わりだ。」

そう言って、艦長はこの後この艦に襲いかかる災難に気づくはずもなく、部屋に仮眠を取りに行った。

「なあ敵が来るか来ないか賭けようぜ!」

「なんでだよ!みんな来ないに賭けるに決まってるだろうが意味ないだろ!」

「そう言うなって。」

「本当にやられたら、どうすんだよ!」

「みんなで来ないにかければ、絶対に来ませんよ。」

「それはそうともいうな!」

「だろ!」

「それを言ったのはおれだよ!」

「誰でもいいじゃないか。」

もう誰がしゃべっているのか、分からない状況になっている。

そんな彼らを、追跡している一匹の狼がいるとは、副長以外誰も思っていなかった。いや、副長もまさかと思っていたのだから、だれも思っていなかったと言えるだろう。

この船は戦前に建造された大型輸送船であるが、今まで機関の故障やら出港してすぐ座礁してまた修理するなど、いわゆる不運艦であった。

しかし16500トンもの貨物を乗せることができるこの船は、リバティー船しか作られてないであろうこの現状では、大きな物があり簡単に解体することができなかったのである。そのため、1944年春から根本的な大改装が行われることになった。すなわち機関の取替えである。

その改装は結果からすれば、大成功に終わるのだが戦時でなければとてもやっていけないであろう金がかかったので有る。すなわち、改装コストが非常にかかったということである。

そして、パナマ運河攻撃直前の4月25日にパナマ運河を超えて太平洋にやってきたのである。

この時点では、ついている艦と乗員は思った。これまでが運が悪かっただけだと。しかし、その後積荷を載せにサンディエゴの港に入港する際に、岸壁に喫水線下の舷側が接触し浸水を引き起こしてしまったのである。しかしサンディエゴ海軍工廠にて、5月10日まで修理を行い航行に問題は無くなっていた。

そして今日6月6日の夜プリスベーンに入港する予定になっているのだ。


「敵艦への距離約15000!」

副長渡辺大尉の声が、発令所に響く。

今は、艦長に変わり、彼が潜望鏡を握っていた。

「方位は?」

「本艦10時の方向!」

「取り舵一杯!敵の内側に回り込む。」

「取り舵一杯よーそろー」

航海長真鍋中尉の復唱が響く。

「総員第1種戦闘配備、そして音を立てるな。相手は輸送船だが、アメリカの事だから聴音機や探信儀を装備してる可能性がある。」

マンハッタン号にソナーをつけるという案はサンディエゴ海軍工廠での修理の際に検討されたが、数が足りない為に見送られていた。この事がマンハッタン号の死期を早めたと言ってもいいだろう。

「了解!」

「発射管室どうだ?」

伝声管越しに、水雷長の横川大尉に聞いた。

「バッチリですよ、いつでも撃てます。」

「そうか期待してるぞ。今回は、輸送船一隻だけだから、直標準で撃つ。だから、日本で十分なはずだ。」

「分かりました。」

魚雷というのは、基本的に目標がどこに逃げたとしても、逃げられないように扇状に撃つのが一般的なやり方である。

しかし相手が鈍足の輸送船であり、単独航行している場合は、魚雷が勿体無いためギリギリまで近ずいた後に、直標準で撃つのである。

今回はこの輸送船であり更に単独航行しているため、艦長は直標準で撃つ事にしたのである。

「敵艦への距離12000!」

再び副長が敵艦との距離を報告してくる。

まだ彼ら両方の戦いは始まったばかりである。

第31話完

というわけで

マンハッタン号の油断の話です

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