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嫌がらせではないと思う
……そして、数日が経過した。
「よう、楠川」
朝の教室、いつものように挨拶を交わす生徒達。魔緒も彼らと同じように、仁奈に声を掛ける。それもいつも通りだ。ただ違うのは、
「……おはよう」
仁奈の表情が、いつもより暗いことだ。
「どうした? 元気と明るさの特売日みたいな陽気さがお前の取り柄だろ?」
さすがに、魔緒が気づかない筈もなく。何気に失礼な物言いだが、仁奈は無反応だ。
「おーい、聞こえてるか?」
魔緒は仁奈の眼前で手を振ってみるが、やはり無反応。
「おい、いい加減にしろ」
魔緒は少し口調を荒らげてみるが、それでも無反応。
「ったく、新手の嫌がらせか?」
それでさすがに諦めたのか、魔緒は自分の席に着いた。




