うん、コメントするのも野暮ってもんだね
◇
……仁奈達はと言うと。
「……あれ?」
仁奈と七海を囲っていた壁が、突然消えた。
「どうなってるの?」
「分からないわ」
戸惑う二人。もう彼女達を閉じ込めるものはないのだが、それでも動けずにいた。
「とりあえず、魔似耶が戻るまで待ったほうがいいわね」
「そんなぁ……」
途方に暮れる仁奈。時刻は既に十時を回っているのだ。いい加減帰りたいのだろう。
「貴女ねえ、今の状況を分かってるの?」
「状況……、って何?」
「ああもう! 何でそんなに緊張感がないのよ?」
「キレないでよ!」
「あんたのせいでしょ!」
「人のせいにしないでよ!」
「二人とも、喧嘩はやめるのにゃ」
「「口出ししないで!」」
「にゃっ……!」
仁奈と七海が振り向いた先には、驚いて縮こまる魔似耶がいた。
「魔似耶! 貴女一体どこ行ってたのよ!?」
魔似耶に掴みかかる七海。だが、身長差のせいで縋りついているように見える。
「く、苦しいのにゃ……」
一方、魔似耶は呻き声を上げている。襟首を掴まれ、呼吸が困難になっているのだ。
「だったらさっさと白状しなさい! まさかとは思うけど、また誰かを殺してきたんじゃないでしょうね?」
「せ、正解なの、にゃあぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げる魔似耶。もっとも、最後のほうは悲鳴にすらなっていなかったが。
「馬鹿! 何でそんなことするのよ?」
怒鳴り声をあげる七海。その顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。
「そんな、取り返しのつかないことを……。馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!」
七海は駄々っ子のように泣き叫ぶ。
「馬鹿……、ばかぁ」
そして、泣き崩れた。
そんな七海を、魔似耶はただ、儚げに見つめていた。だがしかし、いつまでもそうしている訳にもいかず、かといってどうすることもできず。
「……ごめん、なのにゃ」
とりあえず、謝った。
七海が顔を上げる。眼球は充血し、瞼は少し腫れぼったくなっている。そんな目からは、今もまだ大粒の涙が流れている。
「ごめん、じゃないわよ」
七海は泣きじゃくりながら涙を拭う。
「七海ちゃん、それと仁奈ちゃんも。今日はもう帰るのにゃ」
「……うん」
仁奈はそんな雰囲気を察したのか、早足でこの場を去る。
「ほら、七海ちゃんもなのにゃ」
「……分かった」
七海は立ち上がると、魔似耶に背を向ける。
「今度やったら、承知しないんだから」
彼女はそう言い残すと、駆け足で去っていった。
「……心配、掛けちゃったのにゃ」
魔似耶は、そんな二人を見送った。
夜は、これから更けていく。




