はーい、残酷描写はこれで終わりよ
◆
二人が口論していた頃、魔似耶は廊下を疾走していた。
(……急ぐのにゃ)
魔似耶は、とても焦っていた。それもそのはず、「犠牲者」が更に、しかも急に出たのだから。
(それにしても、どうなってるのにゃ?)
魔似耶の気掛かりは、専らその「犠牲者」にあった。何故、このタイミングで「犠牲者」が出たのか? 何故、この学校なのか? そもそも、……何故、こんなにも「犠牲者」が出るのか?
(うにゃ。あれこれ考えるよりも、早く行かないとなのにゃ)
魔似耶は、先を急いだ。
◇
数十秒後、魔似耶は倉庫の前に辿り着いた。
焦る気持ちを抑え、乱れた呼吸を整える。
見るからに建てつけの悪そうな扉に手を掛け、ゆっくりと開いていく。
「あら、お客さん?」
その途中、妙な声が聞こえてきた。口調は女性のものだが、声は男性のものなのだ。
「にゃ……、誰なのにゃ?」
魔似耶は扉を開ききると、中にいた男子生徒に声を掛けた。
「私? 私はねえ」
男子生徒は不気味に笑う。
「この体を乗っ取った、ただの女の子」
「ただの女の子は、体を乗っ取ったりできないのにゃ」
魔似耶は、鋭い視線を男子生徒に向ける。
「そんな怖い顔しないでよ。折角の可愛い顔が台無しよ」
「構わないのにゃ」
「釣れないわね」
ふふっ、と微笑む男子生徒。気色悪い。
「最近、生徒や教師が亡者と化してるのも、あなたの仕業なのにゃ?」
「亡者? 知らないわね」
男子生徒は肩に掛かる髪を払うような動作をして、
「まあでも、ここ最近はこの辺の人間に寄生して、魂を食い尽くしてるけど」
「やっぱり、なのにゃ」
魔似耶はずっと気になっていた。
確かに、この学校の気は乱れている。それに加えて、学校という特殊な環境だ。精神的に疲弊した生徒や教師が、乱れた気に当てられてしまうのはよくあることだ。それが原因で、人間の核とも言える魂が狂うのも、極稀にだがある。
以上の点を踏まえても、魔似耶はどこか引っかかっていた。
幾ら、気が乱れていても。
幾ら、学校という場所が特殊でも。
幾ら、昨今の日本社会はストレスなどの精神問題を抱える人が多いからと。
十人。今日のも含めると十二人は、幾ら何でも多すぎるのではないかと。
その疑問も、たった今解明された。
「あなたが、生徒や教師に取り憑いて。そして魂を喰らって」
魔似耶は左手の本を開き。
「みんなを、亡者にしていたのにゃ」
「だったら何? まさか、ここでやり合う気?」
男子生徒、いや、男子生徒の皮を被った女を、しっかり見据え。
「魔術解放」
右手を前に突き出して。
「射抜け、閃光!」
そこから、光を放った。
光は男子生徒を目掛けて、射抜くように飛んでいく。
「!」
そして光は、男子生徒の左胸を貫いた。
血飛沫を上げながら、男子生徒は倒れた。
「……呆気ないのにゃ」
魔似耶は、顔に付いた返り血を拭う。言うまでもなく、男子生徒の血だ。
魔似耶は本を閉じると、倉庫から去った。




