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何か、投げ遣りに書いた記憶が……

  ◆


 校舎の片隅。そこに、使われていない物を仕舞っておく倉庫がある。倉庫と言っても、余っている部屋を物置として使っているだけだが。

 そんな、いかにも忘れられていそうな場所に、生徒がいた。着ている制服から察するに、男子生徒のようだ。

 男子生徒は、この部屋で寝ていた。倉庫という言葉から想像できるように、この部屋はとても埃っぽい。そんな所で、何故寝ているのだろうか。

「……うぅ」

 男子生徒が呻き声を上げる。目が覚めたのだろうか。

「……あれ? 俺、何でこんな所に……」

 おや、どうやら好きで寝ていた訳ではないようだ。

「ゴホッ、ゴホッ。……ったく、何なんだよ?」

 男子生徒は、周囲を見回す。だが、ここがどこなのかは分からないようだ。

《何か、探してるの?》

「!」

 突如聞こえてきた声に、戸惑う男子生徒。

《ふふっ、安心して。私はあなたの味方よ》

「み、味方?」

 謎の声に、問いかける男子生徒。

《そう。味方よ。だから、何も怖がらなくていいわ》

 男子生徒はふと、不思議な感覚に支配された。これはそう、まるで何もかもを委ねたくなるような安心感。包容力満ち溢れた言葉に、すっかり安心しきってしまったのかもしれない。

「そうか、味方か」

《ええ。ついでに言うと、私はあなたの願いを叶えることができるわ》

「願い?」

 声の主が頷いた、ような気がした。いまだ実体が見えないので、具体的な動作は分からないのだ。

《そうよ。あなたにだって、願いの一つや二つ、あるんでしょ? 私はそれを叶えられるの》

「どんな、願いでもか?」

《当然。ただし、願いを叶える以上はそれ相応の対価が必要よ》

「何だよ、その対価って?」

 声の主が微笑んだ、ような気がした。

《大したことじゃないわ。ただその体を、私に貸してくれればいいの》

「なんだ、そんなことか」

 男子生徒は、声の主が出した条件を、呑むことにした。


 この時、彼は知らなかった。

 声の主が言った、体を貸すということの意味を。

 願いを、叶えるということを。

 そしてその、対価というものを。

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