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2かいめのいちば(改)

追記

2019年4月11日に加筆修正しています

2人はまた街へと食材を売りに来た。

売るといっても、なるべく安く売って、街の人を飢えから救いたい、というのとお金に頓着しないマルガレーテ(と自分たち)のもしもの時のためのお金を貯めるのが2人の目的だ。


街に着くと、街の入り口の衛兵から連絡がいったのか、市場に向かう道の途中で教会の司祭が揉み手をせんばかりの勢いでやってきた。

「やあやあ、お2人さん、うちにきてまたお茶でも飲みましょう。お菓子もいかがかな?」

そういって、2人の台車を横取りしていこうとするので、グレテルは絶対に渡さないぞ、と力限りに対抗する。

「今日は遠慮しておきます。市場に知り合いがいるので、そこで売ってもらうようにお願いをしているので」

ヘンデアルはそう言って市場に向かおうとすると

「なるほどなるほど、知り合いがいるのかね。じゃあ何か困ったことがあったら是非教会を頼りなさい」

あっさりと司祭は引き下がった。

「なんか…」

「うん、あっさり引き下がり過ぎて気味が悪いな。市場にいけばわかるだろう」

兄弟は市場にいくと、司祭があっさり引き下がった理由は簡単にわかった。



【市場で物を売る場合は教会の許可を得ること】



市が出る場所に大きな看板があり、そう書かれてある。

「ヘンデアル!グレテル!」

おばさんが2人の姿を見て駆け寄ってくる。

「おばさん!」

おばさんは憔悴しきった顔で二人のもとにやってくる。

「どうしたの?おばさん」

そう聞くと

「昨日の夕方、二人が帰った後にね…」

おばさんはこの看板の一連の騒動を話してくれた。


昨日、軽くなった台車とともに二人が帰った後、市場に教会の司祭と衛兵たちがぞろぞろとやってきて、いきなり柵をたてはじめたという。

衛兵たちが言うには、最近治安が悪いため、教会の敷地である広場で何かが起こってからでは遅いから、という理由らしい。


市場があるこの場所は、たしかに教会の敷地として中央の噴水(みんなの生活用水でもある)とともに教会が管理をしていた。

けれども、だれでも使える場所、ということでみんながいろいろな物を持ち寄り自然と市場ができ、街ができてから今までずっと栄えてきた場所だったのだ。


それが

【市場で物を売る場合は教会の許可を得ること】

という看板のもと、教会にお布施を渡さないとお店を開くことが出来なくなってしまったという。


「市場で売っているといっても、売上なんてみんなたかが知れているし、今はどこもかしくもみんないっぱいいっぱいだっていうのに…」

意気消沈しているおばさんに何も言えずぎゅっと拳を握ると、おばさんの家まで台車を引いていき、一ヶ月は過ごせる食料を渡し、治安が悪いことで気になっていたドアを修理する。

それだけじゃなくて、内側からかけれる頑丈な閂をしつらえて、窓からも人が入らないよう格子をつける。


家で怪我で寝ていたおじさんを見舞い、なるべく閂をかけて過ごすよういって家を後にした。


事は知っているおばさん一人を助けただけではどうしようもないことをヘンデアルは分かっていた。

「にいちゃん」

「今日帰ったらマルガレーテに相談しよう」

「でも、この野菜たちどうする・・・?」

台車の食材をグレテルが困ったように見ると、ヘンデアルはちょっと考えた後、近くの孤児たちにパンをあげながら、街をぐるっと知らせてまわるように、とお願いする。


「それじゃあ市場にいって準備をしよう」


1時間もすると、市場に人だかりができてきた。

ヘンデアルは孤児たちにお願いをして同じ人が二回並んだりしないよう見張るのと、列に横入りしないよう、見てもらうお願いをする。

そして並んだ人、一人に2つずつ、野菜もしくは小麦の袋かパンを配っていく。


そこに衛兵がやってきて二人に怒号を浴びせる。

「教会の許可なくなにをやってるんだ!!!!!!」

グレテルの首根っこをつかみ、殴りかかろうとするのを、グレテルは子供とは思えない力で止め、振り払う。

振り払われたあまりの力にそのまま地面に転がった衛兵はバカの一つ覚えのように

「教会の許可なく何やってるんだ!!!」

ともう一度叫んだ。

「教会の許可がどうして必要なんですか?」

その衛兵に向かってヘンデアルは見下ろしながら言う。

「市場で商売をするのであれば、許可が必要だろう」

「商売をするのには教会の許可が必要なんですね」

「そうだ!!!!!だからだな・・・!」

「じゃあ商売じゃなかったら許可必要ないんでしょ?別に売ってなければ許可はいらないってことでしょう?」

そういって、衛兵に屋台をさし示す。



沢山あった野菜の山がどんどん無くなっていく。

だが確かに、金銭のやり取りをしているわけではなく、来た人に野菜とパンを配っているだけなのだ。


頭から湯気を出しそうな、という例えがぴったりの顔を真っ赤にして怒る衛兵に

「だから、販売してないです。配ってるだけで。だから許可いらないですよね?」

そう言って、野菜を2つはい、と衛兵に渡すと、手伝ってくれた孤児たちに残りを渡し、また明日来るから次も手伝ってくれるようお願いし、2人は意気揚々と市を後にし、森へと帰宅したのだった。

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