だい19わ
「ゴメンなさいでございましたりいたします、マスター」
今までの押しの強さから一転して、気弱そうに俯くジュエリーヌ。
「ジュエリーヌは、マスターを困らせたり致しましたです」
またしても背を向けたジュエリーヌは、ケビンの前から消えようかと言うジェスチャーを見せた。
「やっぱり、マスターには似つかわしくない女でございましたりするのです」
一日に二度もこれをやるとは、ジュエリーヌも相当気合が入っていると見た。ケビンとの関係をここで一気に決定付けようと言う並々ならぬ覚悟が伺える。
「ま……」
ケビンの方はと言えば今々やったことをそのまま繰り返そうというのにまたしても同じ過ちを犯そうとしていた。
「待ってくれ、ジュエリーヌ!」
男とは、かくも哀れなものである。
「行かないでくれ、ジュエリーヌ。君無しでは、俺は生きていけないんだ!」
言っちゃった。
ジュエリーヌは無言で振り返った。
「……マスター……」
目に涙を浮かべて、身を震わせながらケビンを見つめるジュエリーヌ。
「マスター!」
ジュエリーヌはケビンの胸に飛び込んだ。
「マスター、マスター――」
「ジュエリーヌ――」
ジュエリーヌを抱きしめながら、ケビンは至福の思いに満たされていた。
既に手遅れ、もう取り返しのつかない所まで行ってしまった。
御愁傷様です。