第 1話:希望 vs. 絶望
日本近海、深度一万六千キロ。
太陽の光すら届かぬ海底で、巨大要塞デフィトパレスは脈動していた。
黒い城壁。ねじれた塔。血管のように走る赤い発光路。そこは建造物というより、生きた悪意そのものだった。
中央作戦室。
玉座に座る総統デストラーの前で、幹部たちが火花を散らしていた。
「たった五人だぞ、五人!」
巨体の幹部ハンマンリキが机を叩く。
「怪人を十体、戦闘員を百体ぶつけりゃ終わりだ!」
「脳まで筋肉ね」
女幹部ミスーネが長い脚を組み、鼻で笑った。
「現在の出力では、怪人一体、デデマン十数体、絶望界の展開。それで限界よ。無駄撃ちは美しくないわ」
「なんだとォ!?」
「静かに」
冷たい声が割って入る。
将軍デフィロス。その眼鏡の奥の瞳は氷のようだった。
「感情論は不要だ。軍師オメガメア、結論を」
影の奥から、細身の男が進み出る。
軍師オメガメア。仮面に隠された顔、数字だけを信じる知略の怪物。
「我々は、まだ敵を知らない」
杖の先が五つの光点を映す。
「なぜ戦うのか。何者か。力の源は何か。まずは解析が先決です」
「回りくどい!」
「短絡的ね、ハンマンリキ」
「てめぇ!」
「やめろ」
デストラーが立ち上がるだけで、空気が凍った。
「両方採る」
その一言に全員が沈黙する。
「ハンマンリキ、お前は正面から叩け」
「へへっ!」
「オメガメア、お前は情報を奪え」
「御意」
「ミスーネは怪人製造を継続」
「はいはい」
デストラーは五つの光点を睨んだ。
「希望を名乗る者ほど、壊れた時の音は美しい」
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白く巨大な地下施設。秘密基地と最先端ラボが結婚したような空間。
オペレーター席で勝にけが叫ぶ。
「反応あり! かつとし山五合目付近!」
天美利奈がモニターを叩く。
「ディフィーペアです!」
立花ジャンヌ博士は白衣を翻し、振り向いた。
「みんな!」
五人の少女が一直線に並ぶ。
紅かおる。岬かれん。黄島あすは。白田ちさと。森山はるこ。
「勝利戦隊、出動よ!」
「はい!!」
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霧の山道。古い石像が並ぶ広場。
その中央にあったのは、女神像。
柔らかな微笑みをたたえた石像の胸には、ひびが走っている。
「これが封印装置か」
デフィロスが解析機を向ける。
「壊せば、デフィトパレス本来の出力が戻るわ」
ミスーネが爪で石を撫でる。
「だったら壊せばいい!」
ハンマンリキが拳を振り上げた、その瞬間。
「待ちなさい!」
赤いバイクが崖を飛んだ。 マッハビクトリー。
そこから飛び降りたレッドが着地する。
「その像には触れさせない!」
続けて四台のバイクが滑り込み、五色の戦士が揃う。
「ビクトリーレッド!」
「ビクトリーブルー!」
「ビクトリーイエロー!」
「ビクトリーホワイト!」
「ビクトリーピンク!」
「勝利戦隊!」
「ビクトリーレンジャー!!」
山が揺れた。
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デデマンの群れが雪崩れ込む。
レッドの剣閃が三体を断つ。
イエローの蹴りが巨木ごと敵を吹き飛ばす。
ホワイトが影のように走り、急所だけを打ち抜く。
ピンクのリボンが稲妻となり、敵陣を焼いた。
ブルーは一歩引いた位置で全体を見る。
「右から増援! レッド、三秒後に伏せて!」
「了解!」
直後、ブルーの水撃波が敵をまとめて押し流した。
「連携精度、高いな」
デフィロスが眉を動かす。
「でも、ここまでよ」
ミスーネが黒いカプセルを投げた。
地面が裂け、ぬめる巨大怪人が這い出る。
無数の吸盤。裂けた口。腹部は袋のように膨らんでいる。
「暗至獣ヒルデスペ!」
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ピンクが跳ぶ。
「リボンサンダー!!」
雷光が怪人へ走る。
だがヒルデスペは口を開き、雷そのものを飲み込んだ。
「なっ……!?」
ピンクが膝をつく。エネルギーを逆流させられたのだ。
レッドが斬りかかる。 だが剣の輝きが消える。
「力が……抜ける!?」
ヒルデスペの腹部が脈動する。
「吸収」
五人の武器光が吸い込まれていく。
「みんな、下がって!」
ブルーの声も間に合わない。
黒い渦が広がり、五人を飲み込んだ。 次の瞬間。
彼女たちのスーツは色を失い、真っ白になった。
「変身解除……!?」
地面に倒れた五人へ、幹部たちの笑い声が降る。
「希望とは脆いわね」
「これで終わりか!」
その時、女神像が砕けた。
中から光の翼を持つ存在が現れる。 守護女神ビクテネ。
だが、その姿は弱々しかった。
「追え! 奴を消せ!」
デストラーの号令。
五人は立ち上がるが、ブレスレットは沈黙したままだった。
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希望研究所。 治療室のベッドに並ぶ五人。
誰も口を開かなかった。 初めての敗北。
初めての無力感。
レッドことかおるが拳を握る。
「私が、もっと強ければ」
「違う」
ブルーことかれんが静かに言う。
「あれは能力負けじゃない。仕組み負けよ」
博士が頷く。
「ヒルデスペは、ビクトリーエネルギーを吸収する特化型」
「じゃあどうすれば……」
ピンクが震える声で問う。 博士は笑った。
「回復方法は簡単よ」
五人が身を乗り出す。
「いいことを想像するの」
「……はい?」
「希望を思い描くの。あなたたちの力は、そこから生まれる」
沈黙。 イエローが頭を抱える。
「もっとこう、科学っぽい説明は!?」
「あるわよ。心象波動が精神粒子を励起して」
「先にそれ言って!?」
利奈が吹き出し、にけが肩をすくめた。
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五人は円になった。 手と手が重なる。
少し照れくさい。少し温かい。
「何を想像する?」 ホワイトが訊く。
レッドが答えた。 「ディフィーペアを倒した後」
「平和な海」 ブルー。
「毎日うまい飯!」 イエロー。
「誰も泣かない街」 ホワイト。
「みんなで遊園地!」 ピンク。
笑いが起きた、その瞬間。
白いブレスが五色に輝いた。
「戻った……!」
「ビクトリーエネルギー!」
だがブルーだけは、目を閉じたまま考えていた。
「……勝てる」
「え?」
「ヒルデスペの腹部、容量限界がある」
全員が彼女を見る。
「吸わせすぎれば、自壊する」
「誰が囮になるのよ」
レッドの問いに、ブルーは迷わず答えた。
「私」
「駄目だ!」
即答だった。
「かれん、それは命を張りすぎる!」
「だから私がやるの」
ブルーの声は澄んでいた。
「分析したのは私。責任も私が取る」
沈黙。
その空気を切ったのは博士だった。
「やりなさい」
「博士!?」
「信じるの。仲間も、自分も」
ブルーが小さく笑った。
「了解」
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再び、かつとし山。 ヒルデスペと幹部たちが待ち受けていた。
「また来たの?」
「学習しない子たち」
五人は前へ出る。
「変身!」
今度こそ、一瞬の迷いもない。
五色の光が炸裂した。
「ビクトリーレンジャー!!」
戦いが始まる。
レッドたちはデデマンを引き受ける。
ブルーは一直線にヒルデスペへ向かった。
「来たわね、餌」
「そう。たっぷり食べなさい」
彼女は自ら武器を突き出す。
「ウォーターウェーブ!!」
巨大な青い奔流。
ヒルデスペは歓喜し、丸ごと吸い込んだ。
「もっと!」
青い光がブルーの胸から抜かれていく。
変身と素顔が明滅する。
膝が震える。
息が苦しい。
それでも彼女は笑った。
「まだよ」
「かれん!!」
レッドの叫び。
「今!」
腹部に亀裂が走った。
「イエロー!」
「任せろ!」
拳が叩き込まれる。
「ホワイト!」
「了解」
影斬りが裂け目を広げる。
「ピンク!」
「まとめていくわ!」
雷のリボンが巻き付く。
最後にレッドが跳んだ。
「レッドブレード!!」
斬撃。
ヒルデスペの腹が完全に裂け、吸い込まれていた五色のエネルギーが奔流となって五人へ戻った。
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「ミスーネ!」
「はいはい、やるわよ」
黒い球体が空に開く。 絶望界。
光を飲み込む異空間。 ヒルデスペはそこへ逃げ込んだ。
「来い! ここでは私が十倍だ!」
五人も飛び込む。
そこは上下も距離も曖昧な闇の海だった。
戦艦勝利が突入し、援護砲撃を放つ。
だが敵の再生速度が速い。
「このままじゃ押し切れない!」
にけが叫ぶ。 博士はモニターを見つめる。
「みんな、合身よ!」
レッドが号令する。
「とぉ!」
五色の光が一つになる。 黄金の戦士。
ビクトリーホープ、降臨。
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しかし絶望界は重い。 膝が沈む。
ヒルデスペが笑う。
「ここでは希望など腐る!」
再び吸収攻撃。 ホープの胸から光が抜けていく。
中で五人の意識が揺らぐ。 その時、ブルーが言った。
「思い出して」
「何を!?」
「さっき手をつないだ時のこと」
レッドが目を閉じる。
イエローの笑顔。
ホワイトの不器用な優しさ。
ピンクの明るさ。
ブルーの強さ。
そして、自分の願い。
「みんなで、勝つ!!」
黄金光が爆発した。 吸収を逆流させ、ヒルデスペを焼く。
「なにぃぃ!?」
「ホープブレード!」
一閃。
「勝利剣! ビクトリーインパルス!!」
巨大な十字斬撃が闇を裂いた。
ヒルデスペは絶叫し、爆散した。
絶望界そのものが崩壊していく。
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地上へ戻った五人は変身を解いた。
息を切らし、泥だらけで、それでも笑っていた。
かおるがかれんへ手を差し出す。
「助かった」
「当然よ」
握手。 少しだけ長い握手。
その様子を見てイエローがにやにやする。
「へぇー」
「何よ」
「なんでも?」
ピンクが飛びつく。
「かれん先輩すごかったー!」
「ちょ、重い!」
ホワイトは小さく微笑んだ。
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ビクテネの光が静かに揺れる。
「立花博士」
「ええ」
「あの子たちは、本物の希望ね」
博士は五人を見た。
騒がしく、未熟で、眩しい少女たち。
「まだ始まったばかりよ」
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玉座の間。 デストラーは静かに拳を握る。
「面白い」
その背後、闇の巨大カプセルが脈動する。
中には、まだ眠る影。 大元帥ヘリンフェル。
「次は、絶望そのものを見せてやろう」
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【次回予告】
ミスーネが送り込む刃の怪人ハモノデスペ!
ビクトリースーツが切り裂かれる!?
さらに飛び出す禁断の一言!
「お前たち、敗北戦隊マケルンジャーだ」
怒れ五人! 燃えろ希望!
第2話 『わたしたちは敗北戦隊マケルンジャー?』
みんなで見よう!!




