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【第一章完結】抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した! ※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい……  作者: 日之影ソラ
第二章 出会いと妄想の新生活

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王都でもお変わりなく④

「タクロウは普段何してるの?」

「冒険したり?」

「冒険者なの?」

「まぁな」

「……強そうに見えないのにね」

「余計なお世話だ」


 なぜだろう?

 リオンとは初対面なのに、普通に話せている。

 耐性がついたからってこともあるけど、妙に心地いい。

 まるで昔から一緒にいるような……幼馴染との距離感のような……ま、俺に幼馴染なんていないんだけどね。


「到着だ」

「あ、もう着いたんだ。結構近かったんだね」

「みたいだな。もう大丈夫か?」

「うん、ありがとう。お礼にこれ、あげるよ」


 彼女は腰にかけていたカバンから何かを取り出し、俺に手渡す。

 四角い布製品で、紐がついている。

 神社とかで買うあれに似ていた。


「なんだこれ? お守り……?」

「そうだよ。手作りの幸運のお守り。ちゃんと効果があるから持っておいて」

「手作りか。ありがとう、大切にするよ」


 リオンはニコリと微笑む。

 正直この手のお守りは信じていないけど、彼女の笑顔が可愛かったからそれで十分だと思った。


「じゃあね! またどこかで!」

「ああ」


 リオンは俺に手を振り、人ごみのほうへと消えていく。

 

「不思議な子だったな」

「タクロウ!」

「――! 今の声……」


 振り返ると、そこにはカナタが手を振っていた。

 ジーナたちも一緒だ。


「やっぱりカナタか」

「やっと見つけた!」

「あまりに遅いから心配したぞ」

「迷子にでもなってたの?」

「そんなことより私のカードは持ってきてくれましたか?」


 俺は受け取ったお守りに視線を向ける。

 幸運のお守り……か。

 さっそくご利益があったな。


  ◇◇◇


 ジーナたちと合流した俺は、ようやく教会にたどり着く。

 忘れ物や迷子も会って予定より少し時間がかかってしまった。

 逆にそれがよかったのかもしれない。

 

「今日は空いているようだ」


 と、ジーナは教えてくれた。

 ピーク時間は偶然避けられたようだ。

 人混みは苦手だからホッとする。

 ラランも同じタイミングで胸をなでおろしていた。


「ようこそいらっしゃいました。お祈りですか? 加護のレベルアップですか」


 中に入ると、さっそく女性のシスターが話しかけてきた。

 修道服っぽい衣装が印象的で、まさに神様に仕える人、という見た目をしている。

 何度も来ているジーナに、シスターとのやり取りは任せた。


「加護のほうです」

「わかりました。ではこちらへどうぞ」


 案内されたのは、小さな祭壇のある部屋だった。

 魔法陣のようなものが地面に描かれている。

 ここで加護のレベルアップをするのだろうか。


「レベルアップを希望されるのはどなたですか?」

「全員です」

「五名ですね? では、皆様こちらへ立ってください」

「一度に全員いけるんだな」


 こういうのは一人ずつやるものだと思っていたけど。


「はい。祭壇の中に納まる人数なら可能ですよ」

「あ、そうなんですね」


 独り言にも反応されて、ちょっと恥ずかしい。

 俺たちは言われた通り祭壇の魔法陣に立つ。


「では始めます。眩しいので目を閉じていてください」


 指示に従い、瞳を閉じる。

 数秒待つと、シスターの声が聞こえる。


「主よ、私の声にお応えください」


 彼女がそう言うと、閉じた瞼が明るさを感じる。

 スポットライトを直接浴びているような眩しさだ。

 目を開けていたら、あまりの眩しさに驚いていただろう。

 そして感じる。

 身体の中に、女神の加護が入り込んでくる感覚を。

 思い出した。

 この感じ……サラスの元で加護を得た時と同じだ。

 

 光が和らぐ。


「目を開けても大丈夫ですよ」


 俺たちはゆっくり目を開ける。

 全員が加護を感じたのだろう。

 少し放心状態のまま経過し、徐に冒険者カードを見る。


「お! 加護のレベルが上がってる」

「あたしもだ!」

「私も上がっているぞ。ついにレベルが……」

「うわ……私も上がってるし。別に私の加護ってレベル上がっても変わらないんだけどね」

「見てくださいタクロウ! 私も上がっていますよ!」


 サラスが意気揚々とカードを見せつけてくる。

 レベルが2に上昇していた。

 俺も同じで、カナタやジーナも同じだ。

 ラランは元々レベル3だったから、今回の儀式でレベル4に上がっている。


「聞いていた通り、結婚効果があったみたいだな。ん? サラスはなんでだ?」

「私はタクロウと運命を共有しているので、タクロウが上がると私も上がるんですよ!」

「そういうものか。なるほど……なんか釈然としない」

「なんで! いいじゃないですか! これでタクロウのレベルも上がって、結婚できる人数が二十人に増えたんですよ!」

「ちょっ、おま! こんなところで!」


 すぐ隣にシスターがいるんだぞ!

 と、心の中で叫んだが手遅れだった。


「二十人……結婚?」

「あ、いや……」

「よかったな! タクロウ! これで百人と結婚する夢に近づいたぞ!」

「ひゃ、百人!?」


 カナタの無邪気な刃が俺にとどめを刺した。

 悪気がない。

 よかれと思っての発言だとわかっている。

 わかっているけど……今じゃないだろ。

 ジーナとラランは察して、やってしまったな感が表情に漏れる。

 今の発言を聞いたこの世界の人間、特に神に仕えるシスターの耳に入れば、どう思われると思う?


「へ、変態……」

「……はぁ」


 またこのパターンか!

 頼むからこれ以上、変な噂が広まらないでくれよ……。

 王都でも変態扱いされたら、世界中どこにも安置がなくなる。

 

「勘弁してくれ」


 王都で新しいスタートを切った俺たちだが、いきなり幸先が不安になる。

 こうなったら運に頼ろう。

 頼むぞ幸運のお守りいいいいいい!

 俺は人生で初めて、心の底から神頼みをした。

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