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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
23/64

第十八話 ベニス⑥

 僕は今、ベニス中心部を流れる大運河カナルグランデ近くの、小物雑貨屋さんに来ています。

 以前も訪れたお店です。



『天然のマグロ女』



 面識はありませんが、明らかに店長だと思う人がいます。

 満面の笑みで、こっちにきます。

 エリーゼが僕を守ろうと前に出ます。


「エリーゼ、大丈夫だから」


「あらっ、かわいい。ひょっとして噂のヤングボーイ、トキン・ヴェネート様かしらん」


「こんにちは、僕はトキンです」


「やっぱりん。私はマグロン、よろしくねん」


 と言って、バチ〜ンとウインクします。


「うん、よろしく。マグロンちゃんは、シェーナ街のバニーちゃんと姉妹ですか」


「やっぱり知ってるわよね。妹は目立つからん」

 

 いや、貴方も同じ見た目、同じインパクトです。

 という言葉は飲み込みます。


「『野生のバニーガール』でも、お世話になってたんです。しばらくベニスに滞在する予定です。マグロンちゃん、よろしくね」


「いつでも大歓迎よ。ゆっくり見てってねん」


 マグロンちゃんが離れます。

 エリーゼが警戒を解きます。


 店内をゆっくり見て周ります。

 かわいいアイテムを見つけます。

「不良品・処分価格」と赤札が付いています。

 鑑定してみます。


鑑定結果

「陶器の置き物」

 不良品(欠け)

【癒し蛙の陶置物】

 清浄+0 (0/20%)

 疲労回復+0 (0/20%)

 8,000ゴルド


 これはお買い得品です。

 効果も凄いですが、とにかく可愛いのです。

 カエルが右前脚のヒジを曲げて、それを枕に横になっているのです。

 ぷっくりしたお腹のフォルムに癒されます。

 カエルスキーには、たまらないアイテムです。

 左後脚の先が五ミリほど欠けてます。

 欠けた脚先も、横に置いてあります。


 僕は、欠片も持って会計に向かいます。

 エリーゼが8,000ゴルド(銅貨八枚)を支払います。

 エリーゼには、100万ゴルド(金貨10枚)ほど、常に持たせてます。


 ゴンドラに戻り、アイテムが入った、麻袋に手を入れリペアします。


鑑定結果

「陶器の置き物」

 良品

【癒し蛙の陶置物】

 清浄+20%

 疲労回復+20%

 400,000ゴルド


 欠片は消えて無くなりました。

 やはり【古代の逸品】は一つしかリペアできないようです。


 このカエルの置き物は、お店に置くことにします。

 訪れた冒険者さんが、少しでも元気になったらと思います。

 

 

 次の小物雑貨屋さんに向かいます。

 賑やかな大運河をしばらく進みます。

 進路を北に変えます。

 路地裏の細い水路を北上します。

 日陰に入り、冷やっとします。

 エリーゼがゴンドラを留めます。



ベネチアングラス専門店


『ピッコリーノ・グラス』



 運河側から店に入ります。

 この店は、石畳の通りにも面しているらしく、出入り口が二箇所あります。

 運河が通るベニスでは、よく見る造りになっています。


 ガラス製品の専門店だけあって、店内がきらきら輝いて見えます。

 品揃えは、圧倒的に食器類が多いです。

 次いで、装飾置き物、花瓶、照明・ランプあたりです。

 

 シェーナ街の刺繍屋さん白猫店長なら、アイテム別ではなく、色別に陳列したでしょう。

 

 そう言えば、あの【縫針】の件は、どうなったのか聞いてないです。

 今度、レオナルド様に確認します。

 

「いらっしゃい。私、看板エルフ娘のピコよ。こう見えて五歳なの。今は店番中だから、ピコが店長よ。よろしくね」


 背後から、不意に声をかけられます。

 情報過多ではありますが、振り向いて、こちらも名乗ります。


「こんにちは、ピコ店長。トキンです、僕も五歳です」


 目の前には、チューリップ柄のエプロンをした、エルフの女の子がいます。

「こう見えて」と言ってましたが、どう見ても五歳前後にしか見えません。

 この子からは、危険な匂いがします。


「トキンね、よろしく。この看板エルフ娘、ピコ直々のディープなマンツーマン接客は必要かしら」


「ディープなマンツーマン接客?」


「もう、トキンったら子供ね。見たらわかるでしょう。ピコのピチピチ豊満わがままボディを密着させて、手取り足取り接客しながら、店内を一周するスペシャルコースが、たったの10万ゴルドってことよ。言わせないでぇ」


「僕、用事を思い出したから、またねピコ店長」


 さっさと店を出ます。

 エリーゼも急いで離岸します。


「トキン様、申し訳ございません。店長がいる正確な日時を、リサーチしてから再訪しましょう。確かこの時間はいたはずなのですが」


「うん、そうだね。面白い子だけどね」


 エリーゼがゴンドラの速度を落として言います。


「真偽の程はわかりませんが、

 建国物語【王様と時の扉】に出てくる七傑の一人、女エルフのエルフィーナ様が、混乱の毒にかかって以来、

 現在に至るまで王国内のエルフには、若干の混乱状態がみられるとされています」


「霊峰ヴェットーレからの下山途中、余りの空腹に耐えかね、猛毒の「混乱ゼンマイ」を食べたのではないか。って言う話だよね。本当かな〜本当の気もするな〜」


 大運河カナルグランデに戻ります。


「トキン様、少し早いですが、お店の開店準備にしますか」


「う〜ん、まだ早いよね。そうだ、この近くにパンナコッタが美味しいお店あったでしょ。そこでお茶してからにしよう」


「カフェ『浮気の境界線』ですね。いきましょう♪」


 エリーゼが嬉しそうです。


 パンナコッタとブドウジュースを二人分、注文します。


「ここのパンナコッタは、サーラが作るパンナコッタと、同じ味がして大好きなんだ」


 エリーゼがニコリと笑います。


「トキン様、この店はサーラの実家です。今はサーラのお姉さんが、お店を切り盛りしています。この通り大繁盛してますが、レシピは血族だけしか知らないそうです」


「そうだったの。それなら美味しいのも納得だよ」


 エリーゼとパンナコッタを堪能して、僕のお店に向かいます。

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