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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
19/64

番外編 ベニス案内前夜の大聖堂

「マルティーナ、聞きましたよ。トキン様とのデートを取り付けたと」


 大聖堂の一室で、この場に似つかわしくない、高い声が響きます。


「そんな、おかあさま。デートだなんて、街の甘味処をいくつか案内するだけです」


「それをデートと言うのです。こんなチャンスは最初で最後です」


「まあ、そうなのですか。どうしましょう」


 今年、七歳になる小さな女の子は困惑します。


「いいですか、マルティーナ。よく聞きなさい。女である貴方に、大司教となる目はありません」


「はい」


「それならば、次善の策として、良い嫁ぎ先を探す事になるのは理解してますね」


「はい」


「カイン王国内において、一番条件が良い嫁ぎ先は、お隣の公爵家です」


「そうなのですか、王家ではないのですか」


「私が言うのもなんですが、今の王家は教会関係者と役人どもに骨抜きにされ、何の力も持たないお飾りです」


「そんな」


「泥舟に乗る王家の事など、どうでもいいのです。それよりもマルティーナの嫁ぎ先のことです」


「はい」


 小さな女の子は困惑します。

 甘味を紹介する楽しいはずの約束が、どうしてこんな話になっているのかと心の中で嘆きます。


「トキン様には、伯爵家ご令嬢という婚約者がいます。回復魔法の使い手で【トツカーナの聖女】と呼ばれています」


「そうなのですか」


 自らも【ベニスの聖女】と呼ばれる小さな女の子は、少しの親近感をおぼえます。


「当家は身分は高くとも爵位はありません。正妻の道は無いと言えます。そこで第二、第三夫人を狙います。理解できますね」


「はい」


「しかしヴェネート公爵様は、下心を持ってトキン様に近づく者を絶対に許しません。ですから今回のデートで、態度や言葉で好意を示してはいけません」


「難しいものですね」


「その点、マルティーナは心配ありません。誰に似たのか、お淑やかで素直な性格です。そのままの貴方で接すればいいでしょう」


「それは、よかったです」


 小さな女の子は、心からホッとします。


「マルティーナ、貴方がトキン様を案内しようと考えている店はどこですか」


 小さな女の子は、頭に描く五軒のお店を伝えます。


「その五軒なら、遠回しに「店名」で想いを伝える比喩となり得ますね。順路はこの順番になさい、いいですね」


「はい、おかあさま」


 小さな女の子は、ふぅ〜とため息をつきます。


「大変じゃのう、まあマルティーナをおもってのことじゃ。あまり気にせず明日は楽しみなさい」


「おじいさま、ありがとう。おやすみなさい」


 小さな女の子は、やっぱり明日が楽しみです。

訂正


甘味所→甘味処

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