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迷宮都市の小さな鑑定屋さん。出張中です。  作者: ジン ロック
ベニス編
20/64

第十六話 ベニス④

 ドゥカーレ宮殿に戻った僕は、部屋からマジックバッグを持ち出します。

 エリーゼが操るフォルトゥーナ号に揺られ外出です。


 今日、何度目かの僕のお店の裏手にまわります。


 フォルトゥーナを留め、裏から店に入ります。

 

 作業場に荷物を置いて、九種類の生地見本を一センチ角に切り出します。

 エリーゼも手伝ってくれます。


 準備が整ったので、全て棚の上に移して修復リペアします。


「エリーゼ、これが僕のユニークスキル。みててね」


 エリーゼが首を縦にふります。


「『修復リペア』」


 僕の手から淡い光が溢れて、細切れの生地を包み込ます。

 それぞれが一反いったん巻きのフランネル織物に姿を変えます。


「トキン様、とても綺麗で、素晴らしいスキルです」


「ありがとう。公爵邸で知ってるのはレオナルド様だけ。別邸でも知ってるのは、母さま、ジーヤ、エリザとアンナだけなんだ」


 エリーゼが真剣な表情で頷きます。


「この力があれば、擬似的にですが、お金も武器防具も、思いのままとなります。トキン様付きのメイドとして、御身を守ると誓います」


「まあ、そう固くならずによろしくね。後でポーロ商会に品物を準備できたと伝えておいてね」


「わかりました」


 エリーゼの返事に僕はにっこり頷きます。

 マジックポーションを飲んで九種類全て百反用意します。


「次はサリンベーニ商会用の一般品にしようかな。エリーゼ、シェーナ行きの荷馬車と御者はもう準備できてるのかな」


「はい。選定は終わり、トキン様の声掛けを待っている状態です」


「そっか。じゃ馬車の中でリペアした方が楽だね。【古代の逸品】のリペアにしようかな。エリーゼ、マジックポーションを三ダースほど買って来てほしいんだ。あと荷馬車を店の裏手に用意だけするように伝えて、御者と馬は返しておいて」


 エリーゼが頷き店を出ます。

 

 僕は木箱から、十点の逸品素材を取り出し、棚の上に並べます。

 リペアして、もう十点の逸品素材を並べます。

 この作業を繰り返します。

 六十ちょっとリペアします。

 気になるアイテムがあります。

 鑑定してみます。

 

鑑定結果

「ガラスのランプ」

 良品

【葡萄の装飾ランプ】

 安眠+5%

 500,000ゴルド

 ベネチアングラス。


 とてもお洒落なランプです。

 蔦に三房さんふさの葡萄がなっています。

 日中は全体が黄緑色の青葡萄。

 ランプを灯すと三房の葡萄だけ、赤葡萄になります。

 

 ベネチアングラスは、ベネチアンレースと並んで、ここベニスの大事な輸出品です。


「一般品」も【逸品】もリペアした物は、レオナルド様に渡す予定です。

 戦略物資扱いです。

 

 ちなみにグラス=ガラス製品です。

 照明のシャンデリアなども、ベネチアングラスと呼びます。


【葡萄の装飾ランプ】は気に入ったので僕の部屋で使います。


 もう一つ、気になります。


鑑定結果

「ガラスの小壺」

 良品

【湧水の小壺】

 湧水+50%

 5,000,000ゴルド

 ベネチアングラス。

 常に壺の五割の湧水。


 透き通る青色の小さな壺です。

 これぞベネチアングラスといった色味です。

 

 これは凄く助かるアイテムです。

 ベニスは、ラグーンと呼ばれる干潟と湿地の上に形成された都市です。

 百以上の島の総称です。

 島の定めと言うべきか、やはり水は慢性的に不足がちです。

 上手い使い方を考えたいと思います。


 エリーゼが帰ってきます。

 

「トキン様、マジックポーションを三ダース買ってきました。じきに荷馬車も到着予定です」


「エリーゼ、ありがとう」


「マジックポーションは効果が、ブロンズ、シルバー、ゴールドとありましたので、ゴールドにしました」


 ガラス瓶に『MPゴールド』のラベルが貼ってあります。

 下に小さく、「目、肩、腰にも効く」と書いてます。


 どこの都市でもポーション屋さんは、胡散臭い気がします。


 受け取ってマジックバッグに入れます。


 エリーゼに手伝ってもらい、鑑定書を作成していきます。


 全部で六十五点あります。

 その内、三十点がベネチアングラスです。

 モンタルチーノに送れるのは、三十五点だけです。

 少し足りない気がします。


「ヒヒィ〜ン」とフォルトゥーナの鳴き声が聞こえます。

 荷馬車が着いたのかもしれません。

 エリーゼが様子を見にいきます。


「トキン様、荷馬車が二台つきました。馬と御者は帰らせてあります」


「ありがとう、エリーゼ」


 エリーゼと二人で「一般品」素材を荷台に運び込みます。

 一気にリペアします。

 馬車一台半が「一般品」アイテムで埋まります。

 残りのスペースに、モンタルチーノ行きの【逸品】を積み込みます。


「今日はこんなもんかな。帰ろうエリーゼ」


「はい、トキン様」


 フォルトゥーナ号に乗って、エリーゼとドゥカーレ宮殿に帰ります。

 

 御者に積み込みが終わったので、取りに行くよう伝えます。


 部屋で手紙を書きます。

 御者あての指示書を作成します。


 夕食を終え、エリーゼとお風呂に入ります。


 久しぶりのリペア祭りのせいか、眠気に襲われます。


 明日もお店の開店準備になりそうです。

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