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異世界戦国記~戦国の世に大うつけ者で戦闘スキルが無いと追い出されたけど天下布武やっちゃうよ~  作者: ボルトコボルト


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第52話 魔蟲部隊の覚醒と古代結界の突破

 俺たちは密林の中を奥へ奥へと突き進みながら、立ちはだかる魔木トレントの群れを次々と撃破していた。


「ん?……なぁ、俺がテイムしたあのトレント、なんだか最初より明らかにデカく頑丈になって強くなっていないか?」


 俺がふと足を止めて呟くと、横で刀の血をぬぐっていた恒興が視線を向けた。


「実戦で戦ってるうちに、レベルアップしたんじゃないすか?」


「ふむ……やっぱりそうか。ツネもたまには鋭いことを言うな。そういえばダンジョン管理を任せているアラクネの直子も、いつの間にか上位種の『アラクネクイーン』に進化していたしな。ダンジョンマスターに任じた影響だと思っていたが、日々の戦闘でレベルが上がっていたのかもしれない。直子は口数が少なくて自分からは何も言わないからな」


 俺が感心して頷いていると、俺の腕に頬を寄せていた帰蝶がくすくすとおかしそうに笑った。


「ふふっ、直子ちゃんなら、この前『レベル上がったの……嬉しい』って、照れながらアタイにだけこっそり教えてくれましたわよ?」


「なんだ、やっぱりそうだったのか! 帰蝶、教えてくれて助かるよ」


 最初こそ、帰蝶を急襲するトレントを俺がテイムしたトレントに抑えさせ、俺が止めを刺していたのだが、気づけばテイムしたトレントが太い枝の一撃で野生のトレントを粉砕するようになっていた。まさにレベルアップと成長の賜物だ。


「よし……それなら、コイツらもこの機会に一気にレベルアップさせておくとしよう!」


 俺は思考を切り替えると、かつて巨大ダンジョン『蟲の洞窟』で大量にテイムして影の中に収納していた魔蟲モンスターたちを、一気にこの場へ召喚した。


 ブワッと黒い魔力の粒子が周囲に広がり、無数の異形たちが地面や空間から一斉に姿を現す。


「うおっ!? びっくりしたぜ! いきなり何事だ!」


 巨躯の杉谷善住坊が一瞬驚いて目を見開く。


「うへぇ……っ! 相変わらず異様な光景っす……! 俺、やっぱり脚の多い蟲だけは昔から苦手なんすよね……」


 恒興が引きつった顔で後退りする。


「あ~ん! アタイ、ゴキブリだけは生理的に絶対に無理ですわぁーっ!」


 帰蝶が悲鳴(?)を上げながら俺の右手にしがみつき、あざとく両太ももで俺の手をキュッと挟み込んできた。


(そ、それは男として非常に理性が危険な行為なのでは……!?)


 太ももの柔らかい感触と体温がダイレクトに手に伝わり、俺の顔が瞬時に真っ赤になる。それを見た帰蝶は、不敵な小悪魔の微笑みを浮かべてフフッと鼻を鳴らした。完全に俺の反応を楽しんでいる確信犯である。


 だが、いま召喚された面々は壮観の一言だった。


 かつて『蟲の洞窟』で契約した精鋭たち――ムカデ、ハサミムシ、カマキリ、イモムシ、チョウ、ミツバチ、ケムシ、ガ、アリ、アリジゴク、ウスバカゲロウ、タガメ、カ、ハンミョウ、ゴキブリ、バッタ、カミキリムシ、カブトムシ、クワガタムシ、アブ、サソリ、スズメバチ、トンボ、ジョロウグモ、トタテグモ、タランチュラといった多種多様な魔蟲たちが、各種一匹ずつ整然と並び立ったのだ。


 なお、完全な水生昆虫であるヤゴだけは水がないため召喚を控えた。タガメも水生ではあるが、飛行能力があり陸上でも行動可能な種族だ。地面を力強く這い回るタガメの様子を確認し、問題ないと判断する。


 召喚された魔蟲たちは主君である俺との再会を喜ぶように、愛嬌を振りまきながら俺の周囲をブーンと羽音を立てて飛翔した。


 足元でうじゃうじゃと蠢いた後、イモムシとケムシはテイムトレントの太い幹へと手際よくよじ登り、空を飛ぶ蟲たちもトレントの枝葉の上に留まって羽を休め始めた。


「よし、魔蟲部隊も伴ってさらに奥へ進むぞ!」


 俺たちは破竹の勢いで森の深部へと足を進めた。


 帰蝶の護衛は進化を続けるトレントと魔蟲たちの鉄壁の複合陣形が完全に担うようになり、俺が直接刀を抜く幕すらなくなったため、進軍スピードは一気に跳ね上がった。


 森の至る所から襲いかかってくる野生のトレント群は、魔蟲たちの毒や物理攻撃、トレントの打撃によって次々と撃破され、果心居士の影収納の中に最高級木材として山のように蓄積されていく。


 この連戦によって、最初にテイムしたトレントは神木にも等しい上位種『エルダートレント』へと種族進化を果たし、付き従う魔蟲たちも次々とレベル上限を突破して凄まじい威圧感を放つ上位種へと覚醒を遂げたのだった。


 しばらく進むと、突如として目の前の空間に濃密な白い霧が立ち込めた。


 その霧がゆらりと人の形に凝縮し、すっと消え去ると、密偵の霧隠才蔵が滑らかに着地して姿を現した。


「吉法師様、これより先は強力な呪術による『結界』が張り巡らされております」


「ほっほっほ、どれ……ふむ、なるほど。これは極めて強力な『迷いの結界』ですな。普通に足を踏み入れれば、空間が歪んで知らず知らずのうちに元の森の入り口へ戻されてしまうタイプの術式ですぞ」


 果心居士が白長持つ杖の先を結界の境界線に向け、魔力の波長を調べながら破顔した。


「果心のおっさん、それって俺たちでも通れるんすか?」


 恒興が身を乗り出して尋ねる。


「ほっほっほ! 何、この程度の結界、儂の法力をもってすれば一発で外部から全壊させることができますぞ?」


 果心居士はいつもの悠々自適な笑みを浮かべて言い放つ。


「おいおい、俺たちは坂氏と交渉と協力のために来たんだ。いきなり秘伝の結界を破壊したら敵対確定だろうが。壊さずに中へ入る方法はないのか?」


「ほっほっほ、お戯れを。壊さず抜けるなどお易い御用。……どれ、少し本気を出しますかな」


 果心居士は左手に握った宝珠のついた古木杖を、静かに前方の空へと掲げた。


 彼が戦闘や術式で明確に「杖」を構える姿を見るのは、これが初めてだった。いつもの手振りだけで発動する術とは格が違う、圧倒的な魔力が周囲の空気を震わせる。


(あの果心居士が杖を正しく構えるなんて……それほどまでにこの坂氏の結界が古代の高度な術で作られているということか!)


 帰蝶もただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、俺の背中にそっと身を寄せ、息を呑んで見守っている。


 次の瞬間、果心居士の杖の先端から、眩いばかりの漆黒の魔力光が一直線に放たれた。それは細く鋭いレーザービームのように結界の壁を穿ち、空間そのものをこじ開けていく。


 黒い魔力の光軸はみるみるうちに太さを増し、やがて巨大な円筒状の「魔力トンネル」を形成した。2メートル50センチを超えるサイクロプスの杉谷善住坊すら余裕でかがまずに通れるほどの巨大な洞門だ。


「ほっほっほ、結界の位相を一時的に書き換えましたぞ。このトンネルの中を通って中へ進むが良い」


「よし、行くぞ!」


 俺たちは果心居士が維持する魔力のトンネルの中を足早に進む。最後尾から果心居士が杖を前に構えたままゆっくりとついてくると、俺たちが通り過ぎた後ろの空間から、瞬く間に元の強固な結界へと修復されていった。


 進化を果たした魔蟲部隊やエルダートレントも共にトンネルを抜け――光が弾けた瞬間、俺たちの視界に素朴な木造の家々が立ち並ぶ隠れ里の風景が広がった。


 ついに目的の地『坂氏の隠れ里』へと足を踏み入れたのだ。


 だがその直後――先頭を歩いていた俺が里の境界線を一歩踏み越えたまさにその瞬間!


 ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!


 死角となる樹上や屋根の上から、殺意の込められた無数のアロー(弓矢)が凄まじい風切り音とともに俺の喉元や胸元を目掛けて飛来した。


「甘いッ!」


 俺は即座に腰の刀を抜き放ち、目にも留まらぬ速さの居合いで飛来する矢をことごとく叩き斬り、一瞬で払い落とした。


 静まり返る里の中に、切断された矢がカラカラと空しく転がる音だけが響き渡った。

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