第22話 美濃の毒姫と吉法師の野望!集いし最強の英傑たち
美濃国、稲葉山城。
その最深部に位置する重厚な執務室で、戦国屈指の奸雄として恐れられる斎藤利政――後の斎藤道三が、一人書状に目を通していた。
そこへ、静かな足音とともに一人の少女が入ってくる。
「父上、只今戻りました」
「おう、濃か。無事の帰還、何よりだ。して、尾張の首尾はどうであった?」
「ふふっ、尾張織田信秀の嫡男……吉法師と会ってまいりましたわ」
「ほう、あの『大うつけ』と名高い小倅か。どんな男であった?」
濃姫――帰蝶は、吉法師と出会い、共にフォレストウルフの群れを散らし、富田勢源の元へと向かった一連の出来事を、楽しそうに父親へ語り聞かせた。
「くくく……ははははっ! 天下人となって天下布武だと? 尾張の一地方領主の小倅が、随分と片腹痛い壮大な夢を見やがる。身の程知らずも甚だしいわ!」
「アタイは、あの男なら本当に成し遂げられると思いますよぉ」
「ほう……毒姫と恐れられるお前がそこまで買うんか。だがな濃、まだ元服もしておらぬ子供の戯言に過ぎんかもしれんぞ。それに尾張の織田家とて決して一枚岩ではない。この先、身内の権力争いでどう転ぶかも分からん。元服するまでは様子見だな」
「ふふっ、吉法師が元服した時は、ぜひ一度会ってみてくださいね。アタイは……あんな素敵な男の元へお嫁に行きたいなぁ」
「くくく……濃よ、お前には我が謀略のため、美濃守護・土岐頼純の嫁となってもらい、頼純を暗殺させ、敵陣営を内部から散々攪乱してもらったからな」
「そうですよぉ。だから今度は、アタイが本当に好きな人のところへお嫁に出してくれる約束でしょ? アタイは将来の天下人の正室がいいなぁ」
「くくく……美濃の毒姫に見込まれた男が、果たして真の天下人となるのか、それとも周りの野心に押し潰されるのか……じっくりと見極めてやるとしよう」
「毒姫なんて酷いですわぁ。ですが、吉法師の件、よろしく頼みましたよぉ。アタイはまた、尾張へ遊びに行ってきますからね!」
帰蝶は可憐に微笑むと、楽しげに部屋を後にして行った。
◇◇
一方、俺たちは無事に拠点の那古野城へと帰還していた。
美濃朝倉氏への挨拶を終えた富田勢源、鐘捲自斎、佐々木小次郎の三名も無事に到着し、正式に俺の陣営へ加わったのだ。
現在、この那古野城には、十歳の俺・織田吉法師の小姓および直臣として、信じられないほど豪華な配下たちが勢揃いしている。
【家老陣】
林秀貞(三十一歳)
平手政秀(五十二歳)
青山信昌(年齢不詳)
内藤勝介(年齢不詳)
【小姓陣】
池田恒興(八歳)
滝川慶次(十一歳)
諸岡一羽(十一歳)
林崎甚助(十歳)
鐘捲自斎(八歳)
佐々木小次郎(年齢不詳)
平手汎秀(十一歳)※平手政秀の次男
【直臣陣】
果心居士(年齢不詳)
沢彦宗恩(年齢不詳)
滝川一益(十九歳)
新免無二(年齢不詳)
富田勢源(二十五歳)
平手久秀(十九歳)※平手政秀の嫡男
【忍び衆】
饗談(年齢不詳)
猿飛佐助(年齢不詳)
石川五右衛門(年齢不詳)
霧隠才蔵(年齢不詳)
伊賀崎道順(年齢不詳)
飛び加藤(四十一歳)
ふふふ……どうだこのドリームチーム! 我ながら恐ろしいほどの戦力が集まってきたぞ!
しかも、果心居士の魔眼によって奇跡的に眼病が完治した『剣聖』富田勢源が指南役として城に居座っていると評判になり、織田家の家臣たちの子供たちがこぞって剣術の稽古に押しかけるようになったのだ。
現在、稽古に通ってきているのは、前田利家(五歳)、丹羽長秀(九歳)、佐々成政(八歳)の三人! ふふふ、幼少期から英才教育を施し、将来の絶対的な手駒……ゲホン、頼もしい小姓や直臣になってもらう算段だ。
さらに嬉しいことに、優秀な忍び衆の活躍によって、新たに六名もの超大物が仕官してくれたのだ!
一人目は、快川紹喜(四十二歳)。沢彦宗恩の旧友という縁で紹介され、召し抱えることとなった。史実では武田家の外交僧を務め、『心頭滅却すれば火も自ら涼し』というあまりにも有名な辞世を残した高僧だ。
二人目は、杉谷善住坊(年齢不詳)。根来衆から滝川一益が優秀な狙撃手としてスカウトしてきた。史実では、あの織田信長を二連発の火縄銃で狙撃し、間一髪まで追い詰めたという伝説のスナイパーである。
三人目は、山本勘助(五十一歳)。史実では武田信玄の軍師としてその名を轟かせる天才だ。饗談に動向を調査させていたところ、駿河の今川家で仕官を断られ失意の底にいることが発覚。武田に仕える前に、俺が即座に駿河へ忍びを飛ばして強烈に勧誘し、召し抱えることに成功した。
勘助は色黒で容貌が異様であり、隻眼で全身傷だらけ、足も不自由で手の指も欠けている。
「吉法師様、こんな見るからに怪しいお人物が、本当に役に立つのですか……?」
と、調査を担当した饗談は不安そうに首をひねっていたが、何を言っているんだ! 彼は史実で武田家を支えた伝説の名軍師なんだぞ!
四人目は、高坂昌信(十六歳)。同じく饗談に調査を依頼していた人材だ。甲斐国の貧しい農民の子だったところを、武田信玄に見出される前に電撃スカウト! 史実では『武田四天王』の一角を担う戦術の天才である。
五人目は、内藤昌豊(二十二歳)。これも饗談の調査によって発見された。武田家に反乱を起こして敗北し、伊豆国へ潜伏していたところを間一髪で手中に収めた。史実では高坂昌信と並び『武田四天王』と称された不敗の猛将だ。
六人目は、愛洲小七郎(二十五歳)。父・愛洲久忠は、あの剣豪・上泉信綱の師匠である。六年前に父が亡くなった後、見事に陰流の正統を継承した男だ。饗談の調査により九州日向国で発見し、熱烈なスカウトで尾張へ連れてきた。
(くぅぅぅっ! 武田四天王に伝説の軍師、さらには剣豪にスナイパーまで揃うなんて……テンションが上がらないわけがないだろ!)
愛洲小七郎も加わったことだし、そろそろ『新陰流』の開祖である上泉信綱の元へ勧誘に行こうかと計画していたのだが――。
「がはははっ! 吉法師様! そろそろダンジョンってやつに連れて行ってくれよ! うずうずして腕が腐りそうだぜ!」
戦闘狂の新免無二が、目をギラギラさせながらダンジョン行きを猛烈にアピールしてきているのだ。
(うーむ……確かに、新戦力たちのレベル上げと連携強化を兼ねて、ダンジョン攻略や領地内のモンスター狩りを行うのも悪くないな。それに、根来衆や雑賀衆から最新の火縄銃を大量買い付けするためには、山のような金が必要だ。モンスターを狩りまくって素材を売りさばき、巨万の富を築いてやるか!)
俺は迫り来る冒険と圧倒的な天下布武への第一歩に、胸を躍らせるのだった。
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【作者からお詫び】
林崎甚助だけ史実と年齢が異なっています。織田信長は1534年生まれで、林崎甚助は1542年生まれなので、信長が10歳なら甚助は2歳なのですが、仲間に加えたかったので年齢詐称しました。そこはファンタジーと言う事でご容赦をお願い致します。




