赤の再来
しばらく歩くと魚屋の前の道路に赤髪の男の子が仁王立ちで立っている。
この商店街は一本道。
小さな裏路地はあるが土地勘のない自分らでは追いつかれるどころか、迷子になり助けてもらわないと
いけなくなる。
「駆け抜けますよ。」
だから選択肢は一つ。
追いつかれないぐらい早く走って帰り鍵を閉める。
左足に力を込め通路の貝殻の僅かな隙間を蹴り、風となる。
魚屋の横を通り抜け宿のある砂浜に続く下り坂を思いっきり飛び越えショートカット。
急いで宿のドア、窓、非常出口、全ての戸締りを確認し座り込む。
ところでお忘れではないだろうか、連れの存在を。
しばらくすると普通に赤髪の少年を肩に乗せたミレイユと食材の袋を3つ持ったアルヒトが鍵を
開けて入ってくる。
「失念しておりました。それにしてもアルヒト、あなた袋増えてませんか?」
魚と酒がそれぞれ入った袋には見覚えがあるが…………魚と野菜が入った袋が増えている。
「ああ!魚屋のにいちゃんが迷惑料だって。そんでなーシルニス、私たちだけじゃ……食べれないよな」
(酒屋の主人とコソコソしていると思ったんです。入れ知恵ですか…………。)
「夕飯……食べて行ってください。」
9.理想
俺の敗北宣言を聞くと3人は急いで台所に向かっていく。
仕方がない…………。
任せっきりはまずいので何か手伝おうと声をかける。
「俺もなにか、」
「「座ってて!」」
いつも通りに2人からのお断りと少年の得意げな顔。
まあ台所に向かう幼馴染の二人の背中は出会った頃より大きくなっていて、この景色を見るための犠牲だと
おもうようにしよう。
「つけてある方は辛いし、お酒の残りは甘酸っぱいからね。」
少年の味の説明を聞きながら我慢できなかったアルヒトが食べ比べを始め、急いで水をとりに駆けていく。
あのころに比べたら健康的にいい顔になっている。
こんな日常の会話を聞くことも、昔は考えたれなかっったな。
…………料理にはなぜ入れてくれないのかな。謎だ。
「ウマ!酒が進む!さけっさっけさっけ!」
仮眠をとっていると美味しそうな料理が出来上がっていた。
これがまた食べなれていないはずなのに食べる手と酒が止まらない。
アルヒトは酒の入った入れ物を抱きしめて離そうとせず、奪おうとする俺たちの手に拳を振り下ろ
してくる。
「今が一番楽しいですね。」
酒の入ったグラスに映るだらしのない自身の顔に向かって呟いてしまう。
少年は慣れた手つきで魚を捌いた後夕飯を食べたあと、才能についての質問が止まらなかった。
後日時間を取ることを約束して酒が回り始める前に保護者に迎えに来てもらい帰宅していった。
数時間後、夜が更け、もう寝ようかと立ち上がると泥酔して寝ていたはずのアルヒトが静かに
泣いていることに気が付いた。




