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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第三部 第89話 崩壊する秩序 後編

テスラ城塞都市の外。

巨大なダンジョンの入口が、黒い口を開けていた。

岩肌を削って作られた古い遺跡のような入口。

長い年月で風化し、石壁の隙間には苔が生えている。

その前に立つ五人の冒険者。

Sランクパーティー――

七聖と比肩するとも噂される。

白狼の牙。

レオン・ヴァルグが入口を見上げた。

「この入口から入るのは久しぶりだな」

横で槍を担いだイリーナが笑う。

「調査なんて退屈な仕事じゃなきゃいいけどな」

セドリックが眼鏡の奥の目を細める。

「既に魔力の流れが妙だ」

「嫌な感じがする」

周囲を警戒しながら、カイルが肩をすくめた。

「おいおい、まだ入口だぞ」

「怖い話は中に入ってからにしろって」

最後にリリアが静かに言う。

「みなさん、気をつけてください」

「……いつものダンジョンじゃありません」

レオンは小さく頷いた。

「行くぞ」

そして五人はダンジョンへ足を踏み入れた。

第一層。

薄暗い通路。

古い石壁。

通常なら、低級魔物が徘徊している程度の場所だ。

カイルがダガーを構えながら前を探り進んでいく。

「……静かすぎるな」

イリーナが言う。

「それはそれでいいだろ」

その時。

奥の通路から魔物が飛び出した。

ゴブリン。

だが――

「なんだ、数が多い!」

カイルが叫ぶ。

十体。

いや、二十体。

狭い通路を埋める数だ。

レオンが剣を抜いた。

「前衛出る!」

イリーナが槍を振り回す。

「任せろ!」

重槍が唸り、ゴブリンを吹き飛ばす。

セドリックの魔法が炸裂する。

「ファイアバースト」

炎が通路を走った。

魔物の群れが一気に焼き払われる。

数分後。

戦闘は終わっていた。

イリーナが槍を地面に突き立てる。

「……確かに多いな」

セドリックが静かに言う。

「第一層でこの数は異常だ」

レオンは短く言った。

「進む」

第二層。

第三層。

魔物の数は確実に増えていた。

オーク。

コボルト。

ゴブリン。

通常なら分散しているはずの魔物が、群れになって現れる。

セドリックが言う。

「魔力が濃い」

「何かが起きている」

カイルが前方を確認する。

「五層への階段だ」

レオンは一瞬だけ考えた。

そして言った。

「ここまで来たなら確認する」

「五層まで行く」

五人は階段を降りた。

第五層。

その瞬間。

全員が足を止めた。

イリーナが呟く。

「……おい」

カイルの声が低くなる。

「なんだよ……これ」

広い空間。

その床一面に――

魔物がいた。

ゴブリン。

オーク。

魔獣。

無数。

ダンジョンを埋め尽くすほどの数だった。

だが。

それだけではない。

魔物たちは――

奥を見ていた。

セドリックが呟く。

「ありえない……」

レオンの目が鋭くなる。

そして即座に言った。

「撤退だ」

イリーナが驚く。

「おい、まだ――」

レオンが遮った。

「これは戦闘じゃない」

「災害だ」

その瞬間。

魔物の群れがこちらを見た。

一斉に動き出す。

「走れ!」

五人は一斉に階段へ向かって駆け出した。

その時だった。

ゴォォォォン――

低い振動。

地面が揺れる。

カイルが叫ぶ。

「地震!?」

ダンジョン全体が唸りを上げる。

レオンが振り返る。

魔物の群れが動き出していた。

それはまるで――

押し寄せる波のようだった。

レオンの顔が険しくなる。

「……まずい」

その瞬間。

ダンジョンの奥から、さらに大きな振動が響いた。

そして――

地面が、裂けた。

裂け目の奥。

暗闇の中で、何かが動いた。

魔物たちが、一斉に道を開ける。

まるで――王を迎えるように。

暗闇の奥から、人影が歩いてくる。

それは――

魔物ではなかった。

だが。

その姿を見た瞬間、

レオンの背筋に冷たいものが走った。

人の形をしている。

だが。

その存在から溢れる魔力は、

災害そのものだった。

それはゆっくりと顔を上げた。

そして――

白狼の牙を見た。

(続く)

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