第二部 第86話 覚醒する力
レグノル城、玉座の間。
アルディアスに促され、私は落ちた剣を拾った。
再び構える。
そして――斬りかかる。
剣が交差する。
火花が散る。
セリナとアルディアス。
二人の刃が何度もぶつかり合っていた。
しかしアルディアスは余裕を崩さない。
だが、その瞳はわずかに鋭くなっていた。
「……悪くない」
低く呟く。
私は息を乱しながらも踏み込む。
煌めく光の刃。
だが――
アルディアスの剣がそれを受け流す。
そして反撃。
轟音。
剣撃が床を砕く。
カイが歯を食いしばる。
「この化け物……!」
バルドが斧を構えた。
「俺も行くぞ!」
その瞬間だった。
玉座の間全体が震えた。
ゴォォォォン――
低い振動。
城が揺れる。
アルディアスが空を見上げた。
「……?」
次の瞬間。
空が裂けた。
白い閃光。
天から光の柱が落ちる。
轟音。
王城の天井が吹き飛ぶ。
明確な殺意が――降下してきた。
光が玉座の間を貫いた。
閃光。
そして衝撃波。
セリナ達が吹き飛ばされる。
石床が崩壊する。
「セリナ様!」
エリーナの叫び。
床が崩れる。
玉座の間が崩落した。
全員が地下へ落ちる。
轟音。
崩落。
そして――静寂。
◆
遥か宇宙。
マザーブレイン軌道プラットフォーム。
ファランシア保存区画。
アオトが立っていた。
まだ完全には覚醒していない。
だが、その瞳には怒りが宿っていた。
「セリナを……やらせない」
拳が震える。
ファランシアの同期率が跳ね上がる。
接続先は――マザーブレイン。
リムが叫ぶ。
「駄目です!」
「今のリンクレベルでは!」
「マザーブレインの処理能力を、あなたが維持できません!」
だが――
アオトは止まらない。
救うと決めた。
守ると誓った。
その妄執が、彼を突き動かしていた。
義手が今までにないほど光る。
マザーブレイン管理端末が起動する。
そして、マザーブレインが応答する。
――管理者認証
――同期率危険域
――強制実行 承認
モニターを見据えながら、
アオトの指が高速で操作パネルを叩く。
リムが歯を食いしばる。
「……仕方ない」
操作端末の決定キーを叩き込む。
「完全起動は無理!」
「座標攻撃だけです!」
画面が展開される。
アオトを守るため、リムは制御層へ割り込みをかけ
処理を強引に安定させる。
軌道ユニットがコードを受信する。
宇宙空間。
巨大な戦艦型兵器。
砲門がゆっくりと座標を固定する。
アオトが呟いた。
「撃て」
◆
宇宙。
静寂の闇。
巨大兵器が動く。
光が集束する。
そして――
閃光。
量子砲撃。
光が大気圏を裂いた。
レグノル城へ落ちる。
地面が崩壊する。
巨大な穴が開く。
城の地下遺構が露出する。
煙が立ち上る。
◆
アルディアスが立ち上がる。
初めて――
全力で抗う。
遥か彼方から降り注ぐ白い光。
炎の剣を構える。
そして全力で振り抜く。
凄まじい衝撃波。
光と炎が空間を引き裂く。
二つの力がせめぎ合う。
やがて光が拡散した。
アルディアスは息を吐く。
久しぶりに、わずかな疲労が表情に浮かんでいた。
その瞳が空を睨む。
「……なるほど」
低く呟く。
「鍵の力か」
振り向く。
「ジュリア」
「追え」
「この力の正体を突き止めろ」
ジュリアは扇で口元を隠した。
「ええ」
「とても面白い盤面になりました」
◆
だが――
地下の奥。
暗闇の中。
黒い染みが
ゆっくりと動き始めていた。
魔力を吸い込みながら。
ゆっくりと。
確実に。
光の溢れる地上へ向けて。
何かが
目覚めようとしていた。




