幕間 騎士道とは
戦場はすでに混乱の渦にあった。
レグノル王城の前。
魔導獣の群れが騎士団へ襲いかかる。
牙。
爪。
赤く光る目。
狼の姿をした異形の兵器。
◆
「構え!」
ヴォルコフが叫ぶ。
白髪の騎士団長は剣を構えた。
その背後には第三騎士団。
歴戦の騎士たち。
◆
「崩れるな!」
「隊列を保て!」
◆
魔導獣が突っ込んでくる。
衝突。
金属が軋む。
剣が閃く。
魔導獣の金属で弾かれる。
◆
それでも。
一体。
二体。
騎士が斬り伏せていく。
だが、被害も少しずつで始めていた。
◆
「数が多い!」
若い騎士が叫ぶ。
次の瞬間。
魔導獣の牙が、やすやすと鎧を噛みちぎる。
騎士が倒れる。
◆
ヴォルコフが振り向く。
「立て!」
「まだ終わっていない!」
◆
ヴォルコフは魔導獣へ踏み込む。
力強い剣閃が閃く。
魔導獣一体の首が飛ぶ。
◆
だが――
背後からもう一体。
◆
牙が鎧に食い込む。
血が吹き出る。
ヴォルコフは
噛みついていた魔導獣の頭を
握り潰した。
◆
「団長!」
その姿を見た騎士が叫ぶ。
◆
ヴォルコフは魔導獣を蹴り飛ばした。
剣を振るう。
だがその動きはもう重かった。
◆
周囲を見る。
騎士団はまだ戦っている。
◆
遠く。
城門の向こう。
セリナ達の姿が小さく見えた。
◆
ヴォルコフは静かに笑った。
◆
「よし」
◆
剣を地面に突き立てる。
◆
「騎士団!」
◆
声が戦場に響いた。
◆
「ここを死守する!」
◆
騎士達が叫ぶ。
「はっ!」
◆
魔導獣が再び襲いかかる。
◆
ヴォルコフが前へ出る。
血が鎧を濡らしていた。
◆
それでも。
剣を構える。
◆
「騎士道とは――」
◆
魔導獣が跳びかかる。
◆
「最後に残る希望を」
◆
剣が振るわれる。
◆
「守る者だ」
◆
その瞬間。
魔導獣の爪が振り下ろされた。
◆
騎士達が再度叫ぶ。
「団長!大丈夫ですか?」
◆
血が飛ぶ。
◆
ヴォルコフは崩れ落ちた。
◆
だが。
その口元には笑みがあった。
◆
「……王よ」
「貴方についていく事は、できませんでしたが。」
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霞む視界の先には
遠く進む王女の背中。
◆
「王女を、レグノル城に向かわせる事はできました。」
◆
声がかすれる。
「遅ればせながら、某もお側に」
意識は、途切れた。
◆
「守れ」
若い騎士達が咆哮する。
ヴォルコフを囲みながら、セリナ達に向かわせまいと
死兵となって戦い続ける。
◆
第三騎士団は――
まだ戦っていた。




