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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第65話 王の揺らぎ

ロスヴァルの制御塔は、立っている。


だが。


そこに走る黒い亀裂は、消えていない。


朝の光を受けても、消えない。


ただ、そこにある。



砦中央塔、軍議室。


円卓の上に地図が広げられている。


三拠点。


《リーデル》

《グラナス》

《アルヴァ》


「予定通り、リーデルからだ」


カイが言う。


だが。


セリナの視線は地図に落ちていない。


「……ファランシアは?」


一瞬、空気が止まる。


カイは視線を上げる。


「都市同期は安定しています」


「安定……しているのね」


確認ではない。

自らに言い聞かせる声。



セリナは窓の外を見る。


兵は動いている。

再建も進んでいる。


だが。


あの夜の揺らぎは、ロスヴァルだけのものだろうか。


黒い亀裂。

都市と共鳴。

そして――


アオト。


「……私が戻るべきかしら」


その言葉は、王としての声ではなかった。


カイが即座に返す。


「王は盤上から退くべきではありません」


迷いがない。


「後背が揺らいでいる可能性がある」


「だからこそです」


一歩近づく。


「今、兵は揺れています。

王まで揺れれば、盤は崩れる」


静かな断言。



セリナは目を閉じる。


アオトは眠っている。

それは分かっている。


だが。


“何か”が動いている。


あの揺らぎが、彼に触れていない保証はない。


「……無事でいて」


誰にも聞こえない声。


目を開く。


王の瞳に戻る。


「エリーナ」


決断は速い。


「急ぎファランシアへ。

リムと直接話を。

都市基幹層の状態を確認して」


感情は隠す。


「私はここに残る」



エリーナが頷く。


「必ず、戻ります」


風が彼女の周囲に集まる。


軽やかに、だが鋭く。


彼女は空へと舞い上がる。



セリナはその背を見送る。


自分が行きたい衝動はある。


だが。


ここで、立ち続けなければならない。


盤はまだ壊れていない。

崩させない。



城壁の足元。


黒い亀裂。


光が当たる。

影が伸びる。


だが、広がらない。


まだ。



セリナは王都の方向を見る。


「三拠点」


小さく呟く。


前に進む。


だが。


後ろも、見ている。


王は、どちらも捨てられない。

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