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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第64話 揺らぐ士気

昨晩の異変をよそに、また朝は来た。


だが、ロスヴァルは昨日と同じ様子ではなかった。


中央塔は立っている。

しかし、その外壁には黒い亀裂が走っている。


応急封鎖は済んでいる。

だが――


兵士たちは、それを見ている。



「昨日の、あれは……」


若い兵が、声を潜める。


「七聖の攻撃じゃないらしい」

「じゃあ何だ?」

「……七聖だ。あいつら以外にありえねぇ」


否定する声は出ない。

出せる者がいない。


剣で戦える敵なら、まだいい。

だが――


“塔が勝手に壊れた”。


人は、剣の刃に理由を求める。

だが。


理由のない揺らぎほど、心を削るものはない。


訓練場。


カイが木剣を構える。


「止まるな!」


兵が遅れる。

動きが鈍い。


集中が散っている。

昨日の闇が、脳裏に残っている。


「昨日の異常は、偶発だ」


カイは言い切る。


「七聖の攻撃ではない」


だが、その言葉に確信は乗らない。

兵も、それを感じ取っている。



塔の上。


エリーナが風を読む。


「魔力は安定しています」


だが。


彼女は知っている。

“安定しているように見えるだけ”。


空気は重い。

見えない何かが、下にある。


中央塔内部。

封鎖された魔導核。


黒い亀裂。


脈打ちは止まっている。

だが、亀裂は消えていない。


技術兵が呟く。


「修復……できるのか?」


誰も答えない。



セリナは城壁から兵を見る。


士気は落ちてはいない。

だが。


揺れている。


「怖いのね」


小さく呟く。


隣にカイ。


「当然です」


「それでも進む」


「……はい」


カイは短く答える。



砦地下。

仮設補給倉庫。


兵の一人が、黒い痕跡に触れようとする。


「触るな」


バルドが止める。


「わからねぇものに近づくな」


珍しく、声が低い。



夜。


兵の一部が眠れない。


中央塔を見る。

昨日、灯が消えた瞬間を思い出す。


光が消える。

世界が消える。


それは戦場の恐怖とは違う。


“意味がわからない恐怖”。



旗艦《アーク=テンレア》。


「ロスヴァル、兵の動揺確認」


報告。


ジュリアは扇を閉じる。


「崩れないわね」


微笑はない。


「異常が、こちらのせいでないのが惜しい」


アルディアスは言う。


「揺らぎは利用できる」



ロスヴァル。


夜。


中央塔の亀裂が、ほんの一瞬だけ。

わずかに、広がった。


誰も気づかない。


だが。


兵の一人が、悪夢から目を覚ました。


理由はわからない。


ただ。


“何かが近づいている”。


そんな予感だけが残る。

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