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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第63話 崩れる制御塔

異変は、振動から始まった。


低く、腹の底に残るような揺れ。

ロスヴァル中央塔の基部。


「……なんだ?」


夜番の兵が足を止める。


魔導灯が明滅する。

一度。

二度。


規則的ではない。


灯が、揺らぐ。

まるで呼吸が乱れたように。



砦内部、魔導制御室。


技術兵が端末を叩く。


「魔力供給が不安定です!」


「外部干渉か?」


「違います、内部循環が――」


言葉が止まる。


魔力流が逆流している。


理論上、起こり得ない。

循環は閉じているはずだ。


だが今、流れは“どこかへ”向かっている。


塔の上。

エリーナが空を見ていた。


風は正常。

雲の流れも乱れていない。


だが足元が震える。


「……下から?」


大地ではない。

塔そのものが、軋んでいる。


制御室。

魔導核が軋む。


淡い光が、濁る。


黒ではない。

だが、純度が落ちていく。


魔力の位相が、ずれる。

設計図にない振幅。


誰も触れていないのに。


「魔導遮断機構、起動!」


緊急遮断術式が展開される。


だが――


制御層が受理を拒んだ。


爆発ではない。

反発だ。


まるで、核そのものが別の位相へ合わせようとしているかのように。



中央塔外壁。


黒い痕跡が壁面を走る。


細い線。

それが枝分かれし、網目を描く。


「塔が崩れる!」


兵の悲鳴。


石が軋む。


塔は内側から歪んでいる。


セリナが駆け込む。


「状況は!」


「魔導核暴走寸前です!」


カイが即断する。


「全員退避!」


「待って!」


エリーナが風を展開する。


崩落方向を制御。

瓦礫が外側へ逸れる。


塔の芯だけが、震えながら残る。



塔内部。

魔導核。


黒ではない。

だが、光が歪んでいる。


中心部がわずかに“脈打つ”。


設計上、存在しない揺らぎ。


リムの通信が入る。


《都市同期層、微弱反応確認。因果不明》


「都市と共鳴してる?」


セリナの声が低くなる。



ファランシア旧医療区画。


保存槽の中。


アオトの指が、わずかに動く。


脳波が跳ねる。


《同期率:上昇》


夢の中。


光の線が乱れる。


制御塔の位置が、浮かぶ。


その中心。


黒い“空白”。


だが掴めない。


鍵は、まだ回らない。



ロスヴァル。


魔導核が限界を迎える。


光が弾ける。


だが爆発は起きない。


代わりに――

全魔導灯が一斉に消えた。


闇。


完全な闇。


数瞬の静寂。


そして。


灯が戻る。



制御塔は、辛うじて立っている。


崩壊は免れた。


だが。


魔導核の中心に、黒い亀裂が走っていた。


亀裂は静かに、内側へと伸びている。


セリナは塔を見上げる。


「……これは七聖の攻撃ではない」


カイも頷く。


「違う。理屈が合わない」


エリーナが震える声で言う。


「魔力が……別の法則で動いていました」



旗艦《アーク=テンレア》。


「ロスヴァル、魔導出力異常」


報告。


ジュリアが目を細める。


「……干渉していないわ」


アルディアスは沈黙。


盤上の一点。

ロスヴァル。


「記録せよ」


一言。


だが、その声はわずかに低い。



ロスヴァルの夜。


塔は立っている。


だが、内部は壊れている。


戦争ではない。

だが。


秩序の輪郭が、削られた。


黒い痕跡は、消えていない。


それは静かに、脈打っている。

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