表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/148

第二部 第62話 深層に走るノイズ

 夜に入っても、ロスヴァルは朝と変わらず静かだった。

 城壁の見張りが交代する。

 兵は疲労が癒えぬまま眠りにつく。

 戦は、まだ遠い。

 ――はずだった。

 ファランシア。

 簡易医療区画。

 リム=サクラは、記録端末を見つめていた。

 微細な波形。

 一定であるはずの魔力循環値に、

 わずかな乱れ。

「……?」

 誤差範囲。

 だが、消えない。

 増えているわけでもない。

 減っているわけでもない。

 “揺れている”。

 リムは端末を切り替える。

 都市同期層との接続。

《ファランシア基幹層:安定》

 表示は正常。

 だが。

 数値の底に、微弱なノイズ。

 まるで、

 深い水底で何かが動いたような。

「……外部干渉ではない」

 小さく呟く。

 侵入の痕跡はない。

 七聖の監視魔導波でもない。

 では――何だ。

 同時刻。

 ファランシア、旧医療区画。

 透明な保存槽。

 アオトは眠っている。

 穏やかな呼吸。

 だが。

 脳波が一瞬、跳ねた。

 夢を見ている。

 暗い世界。

 音がない。

 身体の感覚もない。

 あるのは、光の流れ。

 無数の光の線。

 都市神経網。

 それが、どこかで、歪んでいく。

 黒ではない。

 闇でもない。

 “ずれ”。

 設計図にない歪み。

 アオトの意識が、その歪みに触れかける。

 選ぶ。

 いや――まだ選べない。

《同期率:微増》

 表示が淡く点滅する。

 鍵は、回らない。

 ロスヴァル。

 砦の石壁。

 黒い痕跡が、わずかに脈打つ。

 侵食ではない。

 拡張でもない。

 “共鳴”。

 誰も気づかない。

 だが、魔力の流れがほんの少しだけ変わる。

 旗艦《アーク=テンレア》。

 情報層。

「……揺らぎ?」

 ジュリアが目を細める。

「該当記録なし」

 報告。

 アルディアスは沈黙。

「演算誤差」

 一言。

 だが、視線は僅かに動く。

 盤上の一点。

 ロスヴァル。

 リムは端末を閉じる。

 判断できない。

 だが、確信だけが残る。

「……何かが、動いている」

 それは七聖ではない。

 都市でもない。

 もっと深い。

 ロスヴァルの夜は静かだ。

 兵は眠る。

 王女も休む。

 だが。

 深層で、ノイズは続く。

 まだ小さい。

 まだ無害。

 だが確実に。

 世界は、わずかにずれている。

 それは、誰の意志でもなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ