表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/113

第二部 第54話 眠る少年と、立つ者たち

七聖撤退から、二日後。

 ファランシアは修復作業に追われていた。

 崩れた外壁は応急補修で塞がれ、旧文明の光導管がところどころ淡く脈打っている。都市は生きている。だが、完全ではない。

 呼吸は浅く、脈は弱い。

 旧医療区画の最奥。

 透明な保存槽の中で、アオトは眠っていた。

 穏やかな顔だった。

 まるで、戦場の記憶など存在しないかのように。

「生体機能は安定しています」

 リムが淡々と告げる。

「ですが、共鳴負荷は想定を超えました。あと一段深く接続していれば――戻れなかった可能性があります」

 室内の空気が、重く沈んだ。

 セリナは眠る少年を見つめたまま、何も言わない。

 あの瞬間。

 七聖の圧力を前に、彼は一人で都市と繋がった。

 私たちを守ろうとして。

 それが正しかったのか。

 ――わからない。

「俺たちが前に出きれなかった」

 低い声で言ったのは、バルドだった。

「守るだの何だの言っておきながら、最後はあいつ任せだ」

 拳が、机を叩く。

 鈍い音が響いた。

 カイは腕を組んだまま、目を閉じる。

「戦線の構築が甘かった。七聖の出方を読み違えた。あの状況で出来ることは限られていた……俺の責任だ」

「索敵も遅れました」

 エリーナの声は小さい。

「上空の魔力濃度変化に気づくのが、あと数秒早ければ……」

 誰も、他人を責めない。

 責められるのは、自分だけだ。

 沈黙が落ちる。

 都市の奥で、低い駆動音が響いた。

 セリナは、ゆっくりと振り返る。

「違うわ」

 静かな声だった。

「私が、急がせた」

 紫紺の瞳が、揺れずに仲間を見渡す。

「私が恐怖に押された。守ると言いながら、彼に無理をさせた」

 それは事実だった。

 七聖の存在は、重い。

 秩序の名のもとに下される一撃は、国を消す。

 あの時、恐れた。

 再び、すべてを失うことを。

 そして――

 アオトを失うことを。

「……だがな」

 バルドが顔を上げる。

「恐れない王なんていねぇ」

 カイも静かに頷いた。

「問題は、恐れた後だ」

 セリナは目を閉じる。

 呼吸を整える。

 そして、開いた。

「次は、彼だけに戦わせない」

 その一言で、空気が変わった。

「前線は、私たちが担う」

 カイの目が鋭くなる。

「力をつけなければならない」

 エリーナが地図を広げる。

「レグノル周辺の空域は、まだ完全管理されていません」

「兵は集まる」

 バルドが笑う。

「王女が立つならな」

 セリナは小さく息を吐いた。

 覚悟は、決まった。

「レグノルを――私たちの手で、取り戻す」

 それは叫びではなかった。

 誓いだった。

 医療区画。

 リムは一人、アオトの脳波を観測している。

 数値は安定している。

 だが。

 都市コアとの同期値が、わずかに揺れた。

《基幹同期……微弱再接続》

 保存槽の内部で、アオトの指が、ほんのわずかに動いた。

 夢の中で、何かを選ぶように。

 ファランシアの深層で、光が一瞬だけ強まる。

 都市は、応えた。

 まだ終わっていない。

 だが次に戦うのは――

 彼だけではない。

 ファランシアの外で、夜明けが近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ