第51話 幕間 第四撃(アオト視点)
空を覆う光が、集束する。
空間が軋み、歪んでいた。
旗艦《アーク=テンレア》の艦体中央。
収束していた光が、臨界へ達する。
《高出力位相兵装:発射準備完了》
無慈悲に、魔導砲から光が溢れ出す。
(……防げない)
心の奥で、舌打ちが鳴る。
都市の深層が軋む。
共鳴率は低下。
外縁は既に限界。
次は中心部。
塔。
仲間。
セリナ。
一人ずつ、脳裏に浮かぶ。
《統合を推奨》
甘い声のように、都市が再提示する。
統合すれば出力は最大化される。
防壁は間に合うかもしれない。
だが。
(戻れなくなる)
第一部で拒絶したはずの選択。
それでも――
守るために、選ぶしかないのか。
迷いが、刹那だけ生まれる。
その瞬間。
光が放たれた。
世界が白に塗り潰される。
――終わった。
そう思った。
だが。
爆発は、起きなかった。
閃光は大きく弾道を逸らし、
都市外縁のさらに外へと落ちる。
遅れて、轟音。
僕は理解するのに、わずかな時間を要した。
(……逸れた?)
都市の計算ではない。
僕が何かをしたわけでもない。
意図的な干渉。
だが、誰が。
旗艦を睨む。
追撃は来ない。
砲門は、沈黙している。
セリナが隣に立つ。
「……止まった?」
止まっていない。
止められたのかもしれない。
だが次があれば、奇跡は起きない。
「現状確認を――」
言い終える前に、視界が揺らいだ。
《神経負荷:臨界》
膝が抜ける。
地面が遠い。
最後に見えたのは、
蒼い空と、セリナの顔だった。
――アオト!
その声だけが、遠くで呼び続けていた。




