表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/155

第40話 共鳴(レゾナンス)(アオト視点)

 最初に違和感を感じたのは、周囲で聞こえる音だった。

 風の流れが、変わった。

 自然の風じゃない。

 もっと規則的で、もっと意思を感じる動き。

 都市が――その構造を状況に対応して変えている。

(来る)

 空を見上げる。

 灰色の空、その雲の向こう。

 見えないはずのそこに、“質量”を感じた。

 圧力。

 干渉。

 存在。

 義手が微かに震える。

《外部構造体接近》

《識別:未登録》

《脅威評価:高》

 遅れて、視界でも姿かが見え始める。

 突如、雲が裂けた。

 まるで空そのものが切り開かれたかのように。

 その雲の隙間から、現れた。

 黒い艦影。

 巨大な観測艦。

 七聖の艦。

 観測艦オラクル

 さらに、その背後。

 雲海を押し退けるように現れる、より巨大な影。

 旗艦――《アーク=テンレア》。

 空を覆う存在。

 都市ひとつを消し去ることさえ可能な、質量。

 それが、静かに停止した。

 攻撃はない。

 砲撃もない。

 ただ、“見ている”。

(観測……)

 義手が反応する。

 都市が応答する。

 足元の石畳。

 塔の構造。

 地下の導線。

 すべてが――僕の意識に情報の渦が流れ込んでくる。

 僕の意思とは無関係に。

 都市が――僕に応えるように、“最適化”を開始する。

 壁の角度が変わる。

 塔の表面が再構成される。

 街路が、微かにずれる。

 すべてが――目の前の脅威の対処のために。

「アオト!」

 声を聞きすぐに後ろを振り返る。

 セリナがいた。

 カイがいた。

 エリーナがいた。

 バルドがいた。

 全員が、空を七聖の艦を見上げている。

「……七聖」

 セリナが呟く。

 恐怖はある。

 だが、逃げてはいない。

 誰も。

(守る)

 強い意思、その瞬間。

 都市が、深く反応した。

 鼓動。

 音ではない。

 だが確かに感じる。

 都市の“中心”。

 管理層。

 深層構造。

 そこから――問いが来る。

 言葉ではない。

 構造として。

 選択として。

 提示として。

 受け入れるか。

 拒絶するか。

 境界を維持するか。

 統合するか。

(……僕は)

 迷う。

 統合すれば――

 都市は完全に動く。

 七聖に対抗できる。

 守れる。

 すべてを。

 だが。

 僕は、僕ではなくなる。

 境界が、消える。

「アオト」

 声。

 セリナ。

 彼女の声。

 振り返る。

 彼女は、まっすぐに僕を見ていた。

 恐怖も。

 不安も。

 すべてを抱えたまま。

 それでも。

 僕を信じている目だった。

「――戻ってきて」

 その言葉。

 それだけで。

 僕は、自分が誰かを思い出した。

 都市の一部じゃない。

 管理者じゃない。

 鍵でもない。

 僕は――

 アオトだ。

(……守るみんなを、セリナを。)

 都市に、答える。

 統合ではない。

 支配でもない。

 共鳴。

 協力。

 その瞬間。

 義手が、光を放つ。

 都市の内部構造が変化する。

 再構成。

 再接続。

《認証拡張》

《管理権限:限定解放》

 都市が、アオトに応答した。

 塔が動く。

 街路が変形する。

 防壁が展開する。

 空間そのものが、歪む。

 都市が――目覚める。

 完全な統合ではない。

 だが。

 明確な、協力。

 共鳴。

 七聖は、空の上。

 観測艦オラクル

 その投影室で。

 仮面の観測者が呟く。

「……共鳴、確認」

 そして。

 さらに後方。

 旗艦《アーク=テンレア》。

 その内部で。

 アルディアスが、静かに目を細めた。

「……そうか」

 低く呟く。

「選んだか」

 都市ではない。

 少年が。

 選択した。

 地上。

 都市ファランシアの中心で。

 僕は、空を再度見上げた。

 七聖。

 今は、支配者。

 昔は、勇者。

 だが今は、世界を縛る存在。

 だが、今は。

 もう、違う。

 僕は一人じゃない。

 都市がある。

 仲間がいる。

 守るべきものがある。

 義手の光が、静かに収まる。

 都市の鼓動が、安定する。

 共鳴は完了した。

 だが、それは終わりではない。

――戦いは、今ここから始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ