第10話:破られた約束 / A Broken Promise
それは、初冬の寒さが漂う晴れた午後だった。裏庭の小さな花壇で、リリーは色あせた白いワンピースを着て、私のそばにしゃがみ込み、枯れかけの小さな野花に丁寧に水をやっていた。木々の隙間から差し込む日差しが、彼女のなめらかな茶色の髪に温かな光の輪を投げかけていた。
「ねえ、アグネス……ずっと聞きたいことがあったんだけど、いいかな?」
彼女の声は小さく、春の風のように柔らかかった。
私は彼女の方を向いて微笑んだ。「大丈夫だよ、リリー。」
リリーは何度も迷った後、小さな手で服の裾を握りしめ、勇気を出して顔を上げた。その大きな瞳には純粋な心配と同情が満ちていた。
「……どうしてアグネスのお父さんは、君を捨てて去っちゃったの? すごく可哀想……昔、何かあったの?」
空気が一瞬で凍りついたように感じた。彼女を見つめながら、胸に複雑な痛みが広がる。結局、私は静かに口を開き、長く封じていた記憶を少しずつ語り始めた。
「……お母さんは難産で亡くなったと聞いた。それから間もなく、お父さんの商売は立ち行かなくなり、借金取りのような人たちがよく家に押しかけては騒ぎ立てていたようだ。……その後、お父さんは毎日酒に溺れるようになり、私のことには……ほとんど構わなくなった。」
リリーの目が大きく見開かれ、小さな口がぽかんと開いた。彼女は私の袖口から覗いた古い傷痕に気づき、声が震えた。
「……それじゃあ、その傷は……?!」
私は慌てて袖を下ろし、できるだけ淡々と答えた。
「……リリー、いいんだよ。知らなくていいこともあるよ。」
すると彼女は突然飛びついてきて、小さな体で私をぎゅっと抱きしめた。まるで私が消えてしまいそうで怖いかのように。目には涙が浮かんでいたが、必死に耐えていた。
「……大丈夫!!! アグネスにはもう家族がいるよ! 私がずっとそばにいるから!! だから、アグネス、諦めないで……ね?」
そう言って、彼女は私の手をぎゅっと握った。その小さな手のひらは温かく柔らかく、冬の雪を溶かす一筋の陽光のようだった。
「リリー……」
ついに涙が目尻から溢れ出した。私は彼女の名前を小さく呟き、視界がぼやけていった。
「リリー..」
「リリー?」
彼女の姿が光の中に徐々に薄れ、風に散るタンポポの綿毛のように遠ざかっていく。
「リリー!」
「リリー!!!」
私は手を伸ばして彼女を掴もうとしたが、指先が掴んだのは冷たい空気だけだった——
「!!!!」
私は息を切らして目を覚ました。胸は激しく上下し、まるで誰かに強烈な一撃を食らったかのようだった。後頭部には鈍くも鋭い痛みが走り、心臓が鼓動するたびに、新たな引き裂かれるような痛みが襲ってきた。目尻にはまだ涙の跡が残っており、冷や汗と混じり合って頬を伝っていた。
リリー……もういない。
かつて私の手を握り、ずっと一緒にいると約束してくれた少女は、三年前のあの白い光の中で永遠に去ってしまった。そして私は……まだ生きている。この冷たく残酷な現実に、宿命に翻弄されながら。
私が身動きをしようと試みたその瞬間、両手首が重い鉄の手枷でしっかりと縛られていることに気づいた。冷たい金属が皮膚に深く食い込み、表面に刻まれた淡い光を放つルーンから、針で刺されるような激しい痛みが走った。狭い空間の中で、鎖が鈍い音を立てていた。
痛い……!
ここは……刑務所なのか?
私は必死に体を起こし、ざらざらとした冷たい石の壁にもたれかかった。壁から漂う湿った冷気が、薄着の服を突き抜け、骨の髄まで染み込んでいく。部屋の中は薄暗く、隅にある消えかけの油ランプだけが、微かな炎を揺らめかせ、長く歪んだ影を落としていた。空気は冷たく湿り気を帯びており、古びた石のカビ臭、ほのかな血の匂い、そして歪んだ神聖な気配が混ざり合っていた――これは教会特有の匂いではあるが、今この瞬間、それは極めて陰鬱で不気味なものに感じられた。
部屋は極めて狭く、三歩も歩けば端から端まで。窓はなく、上部に細い通気口があるだけだった。床は硬い石板で、隅には薄い埃と乾いた暗赤色の染みが残っている。分厚い鉄張りの木の扉には複雑な封印のルーンが刻まれ、抑圧的な魔力の波動を放っていた。
教会が……こんな場所を隠し持っているなんて? あの慈悲深そうな修道女や神父たちの裏側に、どれほどの闇が潜んでいるというのか? ここは一体どこだ? 私はどんな罠に落ちたのか?
頭痛がますます激しくなる。私は歯を食いしばり、呼吸を整えようとした。銀白色の長い髪が肩に落ち、薄暗い灯りの下で冷たく寂しい光を反射していた。胸の中では、リリーへの想い、過去の痛み、今の困惑、そして決して屈しないという深い意志が渦巻いていた。
突然——
足音が聞こえてきた。
最初は遠くから響く、くぐもった音だった。まるで遠い太鼓のように。それが徐々に近づき、はっきりとしてくる。一歩一歩が重く、確実で、揺るぎないリズムを刻んでいた。石板を踏むブーツの音が規則正しく響き、間隔がほとんど一定だった。まるで訓練された兵士か、獲物にゆっくり近づく狩人のようだった。
心臓が激しくドクドクと高鳴った。背中に冷や汗が滲んだ。鎖が知らず知らずのうちに、かすかなチリンという音を立てていた。私は息を殺して耳を澄まし、頭の中であらゆる可能性を巡らせていた。一歩踏み出すたびに、まるで心臓を叩くかのようなその音が、つる草のように胸に絡みつき、不安をますます締め付けていった。
足音はますます近づき、はっきりとしてきた。服の擦れる微かな音や、魔力の微かな揺らぎさえ感じ取れた。油ランプの炎が激しく揺れ、壁の影が歪んで踊るように見えた。
私は、その重厚な鉄の扉をじっと見つめ、全身の筋肉をこわばらせていた。
ドアの外で足音が止まった。
(第十話 終)




