後編
呻き声が鳴り響く店内
人工神の教会のメンバーは誰一人として立てないほどの重症を足に負っていた
そんな中、山田は佐藤に歩み寄る
「お、お前なんで」
「言ったろ?助けに来たって、なぁ、真壁さん?」
蹲ったままの真壁に声をかける山田、それを悔しそうに睨みつける真壁
「なんで!いつから気づいてたの⁉︎」
「そんなこと?最初っからだよ、違和感だらけだ」
真壁も佐藤も信じられないような顔で山田を見つめると、山田は変わらずに飄々とした態度で続ける
「答え合わせといこうか、まず最初の違和感は名乗った時」
「名乗った時?」
佐藤が聞き返すと山田は得意げに答える
「俺って有名人だからさ、もちろん悪い意味で、俺の名前聞いたら近づかないと思うんだよ普通ならな、ハンター殺し、だせえ異名だけど人よけにちょうどいいから気に入ってるんだぜ?」
佐藤は普段よりも異様にテンションの高い山田が気になったが口を挟まずに山田の話を聞く
「なあ、真壁さん?2年ハンターやってて、さらに少なくとも1年前にはこの東北支部にいたんだろ?いつも周りにいる噂好きで俺のこと嫌いなおっさんに聞いてねーわけねーんだよ、若い山田って名前のハンターには気をつけろってな?」
「そ、それだけじゃ!」
「そう、確信は持てないから違和感二つ目」
真壁の否定の声を遮り山田はさらに続ける
「君がとてもいい子ならもしかしたら噂を気にせず俺に話しかけるかもしれない、ただ俺は愛想良くしたつもりねーんだよね、漫画じゃねーんだそんな都合よく、愛想も良くねーやばい噂の男に好意を寄せる、可愛い女なんていねーんだよ、それこそ、ハンター殺しに用がない限りな?」
「卑屈すぎない?顔に惚れたって可能性もあるでしょ?」
ドヤ顔で言い放つ山田に佐藤は思わず言い返す
山田は佐藤に指を刺す
「シャラップ、ワトソン君、俺は一目惚れされるほどツラはよくねー、なに言わせてんだぶっ飛ばすぞ?」
「勝手に言ってるだけでしょ、誰がワトソン君だ」
山田は咳払いをして続ける
「違和感三つ目!佐藤の誘いに乗ったこと、今までが俺の勘違いでほんとに君が俺に惚れてたとすると、佐藤の誘いを受けるわけねー、受けたとしても、山田さんを紹介してくださいって感じで俺が引っ張り出されてなきゃおかしいんだよ、だから俺は考えた、元を辿れば警備の依頼自体がおかしいんじゃないかってな、いるんだろう?警備の依頼を引っ張ってきた、管理課の中にもやべーカルト野郎が、そいつが誰か教えてくれたら、君だけは助けてあげるけど?」
「…私は命令されただけで!東田って人が全部悪い」
「はいダウト」
真壁の必死な訴えを言い切る前に言葉を被せる
「東田さんね、あの人は態度が悪いけど管理課で1番信頼できるぜ?なんたって東北支部飛ばされて一ヶ月も経ってねーからな、しかも飛ばされた理由が前いた所でセクハラで訴えられそうになったからってな、スパイとして送り込むならそんなだせえ理由にするわけはねーよな、それに俺に報告書をかけとか言えるのは俺がハンター殺しって知らないやつだけ、それを利用しようとしているお前らとは無関係だ、金森だろ?」
「っ!」
金森の名前が出た瞬間に明らかに態度が変わる真壁
「もっと言うと、最初近づくターゲットは俺じゃなくて佐藤だろ?佐藤から落として俺に行くと、それが佐藤が酔って寝てるせいで俺が行く羽目になり予定が狂ったけど、元は俺を引き入れようとしてたんだむしろ手間が省けたぐらいだろ、ただ俺がハニートラップに引っ掛からなくて、しかも大怪我しちまったからどうしようかと思ってる時に、俺の方から佐藤に連絡しろと、渡りに船だったろ?元の作戦に戻るだけだからな、ただ俺は第一印象がいいやつは信用しないことにしてんだ」
決めポーズをとりながらのけぞる山田に佐藤がツッこむ
「酒でも飲んできた?」
「余裕でシラフ、まあそれだけで君のこと調べる価値はあるな、昔の知り合いに頼んで調べてみたら違和感が出てくる出てくるで、1年前ぐらいから君を囲んでたおじさん達が数人消息不明になってるんだよ、そいつらを調べたらここらへんで最後の目撃情報があってさ、虱潰しでここら辺の店を調べたら、この店だけなんかへんな結界が貼ってあるんだよ、案内された人しか存在に気がつけないって、だから苦労したぜ、この店を見つけるのに」
ここで佐藤は気がつく、最近山田が家に帰ってなかったのはこのことを調べていたからだと
「そこで仕掛けさせてもらったよ、椅子の下に爆弾をね、小さいけど足吹き飛ばすには十分な威力だな」
「なんで!うまくいかないの!」
山田の説明を聞き山田を睨みつける真壁、山田が合図するとスーツを着た幻想省の職員が大勢入ってきて足を吹き飛ばされた全員を連れて行き、真壁も腕を掴まれて運ばれる
その瞬間、山田がキメ顔で言い放つ
「顔と演技力は良いみたいだけど、頭と性格が悪かったな、後足もな」
「殺してやる!殺して!」
最大限の煽りに真壁の表情が怒りに染まり可愛いと称された面影がないほどに叫ぶ
真壁が連れて行かれると、ゆっくりと拍手しながら安倍が歩いてくる
「いやー、いい決まり文句やん、足が悪いのは君のせいやけどな」
「ああ、助かりましたよ安倍さん、あんたが居なかったら結界なんてわからなかったし、ここにも入れなかった」
「それはこっちこそやで、元々自分ら陰陽師が売ってる札の結界やしな、やばい組織の尻尾掴めたんは君のおかげやで、そんで消えてたわ金森くん」
山田は真壁の違和感が確信に変わった時、安倍にも嫌々ながら連絡をしていた。それは真壁のことだけではなく、安倍にも違和感を覚えていたからだった。
それは土地神と戦った山田しか気がつけない違和感、あの土地神は星6ハンターが呼び出されるほど強くなかった、星3の異能力を持っていない自分でも倒す寸前までいける、そのことに違和感を覚え、なにか別の思惑があり東北支部まで来たのではないかと予想した
「逃げられましたか、すいません、こっちの事情で派手に動きすぎましたね」
「そんなことないで、こっちは管理課の人間が怪しいってだけの情報がしかなかったんや、だから内緒で来たんやけど、よく自分が人工神の教会を潰すために来たことに気づいたな」
「まあ、真壁さんが怪しいって思ってから警備の依頼も疑って、結果的に依頼ふっかけてきたやつを調べたら辿り着いんたんすよ」
置いてきぼりにされた佐藤は二人の会話を聞きあることを思いつく
「ねえ、もしかしなくても、僕ダシに使われた?」
「正解、おかげで一網打尽」
「忘れとったわ、ありがとうな佐藤くん」
佐藤が不服そうな顔をしながら山田を引っ叩く
「いて、お礼はいいぜ?」
「いつから計画してたの?」
佐藤の質問にキメ顔で答える山田
「最初からだよ」
その発言をすぐに安倍が否定する
「嘘やでー、先週の日曜ぐらいに自分に連絡きたわ、計画の準備終わったんも今朝やし、山田くん徹夜したんちゃう?」
バツの悪そうな顔をする山田、実際は佐藤を助ける為に計画をかなり前倒ししていて、その皺寄せは全て山田が行っていた
よく見ると山田の目の下に隈がありやたらとテンションが高いのも寝てないからだった
喧嘩して、嫌なことを言った自分を助ける為に無理をした山田を見て佐藤は胸が熱くなる
「お前なりに違和感を持って忠告してくれてたのに、それを無碍にして嫌なこと言った僕をなんで助けてくれたの?」
「言っとくけど俺の為だから、俺はカルト教団なんかに入りたくねーし」
山田の返しが理解できずに首を傾げる佐藤と安倍
「は?どいうこと?なんでお前がカルト教団に?」
「だってお前が入っちまったら俺も入らなきゃいけなくなるから」
安倍はまだ首を傾げていたが佐藤は理解した。
山田は佐藤がどこに行っても付いてくることを当たり前だと思っているという事に、それを聞いて佐藤は笑い出す
「ぷっ、あははは!なんだよそれ!僕のこと大好きかよ!」
「舐めんな、地獄でもどこでもついていってやるよ」
ひとしきり笑い、息を整える
「あの時、嫌なこと言ってごめん」
「気にすんな、俺も最低なこと言った自覚はあるから、ごめんな」
二人は仲直りをして、照れ臭くなり二人同時にタバコに火をつけ始める
その様子を見ていた安倍は一つの疑問を投げかける
「黙ってきいとったけど、二人喧嘩してたん?そもそも自分佐藤くんも計画のこと知っとるもんだと思っとったけど?」
「いや、知らないですよ、というか初めまして」
「初めまして、安倍晴樹いいます、山田くんの友達やいうから身構えてたけど案外普通やん」
流れで話していたが安倍と佐藤は初対面で今更ながら挨拶をする、それを聞いてた山田は不服そうな顔をするが、愛想はよくした覚えないと一人納得する
そして佐藤がなにも聞いてない事で安倍は一つの疑問が生まれる
「それやったらどうやって佐藤くんタイミング合わせたん?こっちからなんも見えんくて山田くんが勝手に爆破したから打ち合わせ済みやと思ってたんやけど」
「は?」
安倍の発言を聞き佐藤が戦慄する、佐藤はてっきり山田達から自分が見えていて正座したのを確認してから爆破したと思っていた
佐藤は笑顔で山田を見る
「ねえ、山田くん?君はどうやって僕の足が吹き飛ばされないタイミングを見計らったのかな?」
「メールしたろ?」
なんでもないように言い放つ山田に佐藤はキレる
「そのメール見てなかったら僕の足吹き飛んでただろうが!あっぶな!まじで!今1番冷や汗流れたよ!」
「聞いてくれよ、俺はねお前のことを信じてたんだよ、きっとメールを見て正座してくれるって!」
「結果論でしょ!いや、もういいや、助かったのは事実だし、ありがとね!」
「おもろいわー二人とも」
ヤケクソ気味に感謝を言う佐藤とそれを見て笑う安倍そして、山田は何かを思い出して気まずそうな顔をする
「それでもう一つご報告がありましてね」
「嫌な予感がする」
山田がやけに腰の低い言葉遣いをするときは碌なことがないと経験から推測する佐藤
「爆弾あるじゃないですか、あれ安倍さんの作戦には本来ないもので、俺が用意したんですよ、それはちょっと経費に入らなくてですね」
「…いくらしたの?その爆弾」
自身の嫌の予感が的中したと先が聞くのが怖いが、仕方なく促す
「この店の席が24席で1席に2つ設置しまして、合計48個、この爆弾お一つ2万!
合計96万!俺らの今月の稼ぎ74万!22万の赤字です!」
「きゃァァァァ!」
山田は捲し立てるように爆弾の値段と二人の経済状況の説明をして、聞いていた佐藤は甲高い悲鳴を響かせる
そこに安倍が入ってくる
「一応自分のポケットマネーで出してもええっていうたんやけど、山田くん断ったやん?」
それを聞き佐藤が安倍の話に飛びつこうとするが、星6ハンターに借りを作るのが怖いのと深く関わりたくないという山田の考えを見抜き、口を紡ぐ、そもそも自分を助けるための作戦を山田が強行したというならもう口を挟むことはできなかった。
諦めムードに陥っていると安倍から提案が上がる
「3日後、自分が東北支部のほとんどのハンター連れて人工神の教会を潰しに行くんや、やから討伐依頼受けるハンター少なくなってしまうんやけど、今のうちに割のいい討伐依頼取っといたんや、50ぐらいやけど。どうや?」
「まじっすか!」
かなりおいしい話に二人ともテンションが上がる、金を借りるよりは少ない借りで済むし、前に倒したサンキューさんレベルなら余裕で倒せるし、今月が黒字に戻る、断る理由はなかった
「受けます、ぜひ!ありがとうございます!」
「ええんやで、ゆうて自分、依頼取ってきただけやしね、1週間以内には顕現しそうって話やその討伐する幻想生物の名前がしろしろさんっていうやつや」
「ああぁ、どっかで聞いたなそれ」
二人はしろしろさんという名前に聞き覚えがあり記憶を辿り佐藤が最初に思い出す
「あ!サイセ!あの時の!」
「ああ!後ろの会話盗み聞きした時のやつ!」
「言い方悪いな、でもそう!」
ちょうどサンキューさんを討伐した時の帰りに寄ったファミレスで耳に入った都市伝説だった
「お、知っとるんなら話早いな、多分この街に出ると思うで、詳しくは山田くんにメールするわ、そうや、佐藤くんも連絡先交換しようや」
「あ、はい」
佐藤と安倍が連絡先を交換して安倍はその場から去ろうと歩き出す
「ほな、まだ来週まではこっちいると思うからなんかあったらいつでも頼ってええんやで?」
「遠慮しときます」
「つれへんなぁー」
安倍は店から去り、処理班も到着して作業を始めたので二人もタバコの火を消しその場を後にする
「とりあえず今日は帰ろうぜ、疲れたわ」
「お疲れ、ありがとね」
「おーう」
山田の疲労が限界だったので二人はまっすぐに家に帰った、山田は家に着きすぐにソファで眠ってしまい、佐藤はせっかくならお礼にご馳走を用意しようとしたが金がないことを思い出し大人しく家にあるものでなんとかご飯を見繕った。
その日の夜中、山田は目覚めた
「あああああ、寝過ぎた…」
「おはよ」
夜中にも関わらず佐藤は起きてリビングにいて、一応山田が起きるまで待っていた
山田は時計を確認してから起き上がりタバコに火をつける
「夜中やん、寝過ぎたわ」
「爆睡だったね、腹は?」
質問を聞き腹をさすると忘れてたかのように腹の音が鳴った
「減ってるわ、めっちゃいい音なったな」
「それな、米は炊いた」
「ナイスすぎ、いや、むしろライス」
やたらといい声と表情で言い放った山田に軽く笑う
「やかましいわ」
二人は立ち上がりキッチンに向かい、山田は冷蔵庫を漁り、佐藤は米を分ける
「碌なもんねーな、これで俺ら金ないってまじ?」
冷蔵庫にはほとんどなにも入っておらず、絶望しながら、唯一あったふりかけを取り出す
「餓死するね、確実に、はい」
「あざ」
佐藤は山田に器に分けた米を渡し、山田はそれを受け取りリビングに戻る
山田はご飯を食べ始め、それを見ながら佐藤は話を始める
「早急にしろしろさんを討伐しないと、ただ準備費用もない」
「まあ、家にあるものかき集めるしかないよな、俺は多少秘蔵の武器があるから多分いける、だけど問題はお前だよな、弾ある?」
山田は近接戦闘がメインで消費するものが少なく、趣味の一環として武器を集めているので武器を買い足さなくてもあまり問題はなかった、しかし佐藤は銃火器をメインで使うため、弾丸等消費するものが多い、しかし佐藤に困った様子はない
「実は最近、旧鼠で消費したっきり使ってないから余裕がある」
「ならいけるか」
「最近お前に負担かけてばっかりな気がするから僕も本気出そうと思ってるよ、あれを使おうかなと」
含みのある笑いをした佐藤、佐藤のいうあれに山田も心当たりがあるようで軽く笑う
「ついにあれを使うのか、確かに強力爆弾も役に立ったし、いいと思うぜ」
「ちょっと持ってくるね」
肯定的な山田の発言に気をよくした佐藤はあれを持ってこようと部屋に戻る
しばらくして布がかかった大きめの物体を二つ持ってきた佐藤
山田はご飯を食べ終わり器を退けて、佐藤は空いたテーブル持ってきたものを置くと布を勢いよく取る
「ててててん!スナイパーライフルとアサルトライフル!」
「ふぅー!」
濁声で武器の名前を言った佐藤と異様に盛り上がる山田
この二つは以前、強力爆弾のように衝動的に買ったはいいものの、現代日本で持ち運びが不便すぎるということで使っていなかったものだった。
「でもさ、それどうやって運ぶんだ?」
「任せてくれよ、シャーロックくん」
「それワトソン側でやらんのよ」
山田のツッコミを無視して佐藤はまた部屋に戻りすぐに戻ってくると、大きめのギターケースを持ってきた
「サイズを測るとスナイパーの方は軽く分解しなきゃいけないけど、二つとも入るんですよ」
そういいながら佐藤は二つの武器をギターケースに入れると、ピッタリと入り切った
それを見て興奮気味に叫ぶ山田
「うおー!アツ!シンデレラファットじゃん!」
「シンデレラフィットね、それシンデレラ太ってるだけ」
「ああ、あぶねー、間違うとこだったわ」
「間違ってんのよ、すでに」
佐藤はギターケースを閉じて肩に背負い軽く歩く
「問題なさそうだな」
「うん、重さも許容範囲内、職質されたら終わるぐらいだね」
「お前はそれでいいとして、俺も装備整えとくか」
山田は立ち上がりキッチンで洗い物を始める
それを見た佐藤はギターケースを持ち声をかける
「じゃあ僕もう寝るから、予定は明日起きてから決めよう」
「おーう、おやすみ」
「おやすみぃ」
佐藤はあくびをしながら部屋に戻った
山田は洗い物を終えた後、眠れる気がしなかったので部屋で武器を引っ張り出して準備を整えた
3日後
夕方、街の路地裏で幻想生物が顕現した、それは真っ白で人型ではあったがうねうねと動いて、人間とは思えなかった。
そんな路地裏に一人の制服を着た少女が現れた
「なんだろう、なんか気になっちゃう」
少女は以前山田と佐藤が助けた女子高生柴田だった、記憶を消されたはずの柴田は道を歩いていてふと路地裏が気になり迷い込んでしまった。決して記憶があるわけではなく、ただなんとなく路地裏が気になるようになってしまった
柴田は少し周りを見渡してなにもないことを確認してから路地裏から出ようとした、その時、物音がして振り返ってしまう
「っ!なに?」
猫か何かだろうと近づくと異様に真っ黒な影がありスマホのライトを向けると真っ白な人型を発見した
「きゃ!」
少し悲鳴を出してしまうと人型は柴田を認識したのか白い腕を伸ばしてくる、柴田は慌ててスマホのライトを消し、走って路地裏を後にする。
その白い人型は柴田を追うことはせずにそのまま佇んでいた。
白い人型から逃げるためにしばらく走り、息が切れてきた時に後ろを振り返ると追ってきてる様子はなかったため立ち止まり息を整える。
「はぁ、はぁ、はぁ、あれって…」
スマホを確認すると、慌ててライトを切ったからか、カメラのアプリが起動していたことに気がつき、閉じようとすると身に覚えのない写真があることに気がついた。
走って逃げる際に間違って写真を撮ってしまっていたようだ。
ただなんとなくその写真を確認する
「えっ!」
その写真にはバッチリと謎の人型が写っていた、それを見て柴田はその白い人型に心当たりがあった。
「これって…しろしろさん?」
柴田は以前しろしろさんという都市伝説を友人から聞いたことがあった。しかしそんな生物が実在するなんて夢にも思っておらず、不安になり意見を聞きたいと思ってしまい、その写真をSNSにアップしてしまった。
同時刻
山田と佐藤はしろしろさん討伐のために幻想省本部がある街まで来ていた。
人通りの少ない喫煙所でタバコを吸いながら二人は今日の目的について話し合いを始める。
「とりあえず、噂の発信源からしてこの街の繁華街あたりに狙いを絞って捜索、見つけ次第討伐と」
「終電までに見つかるといいね」
安倍からもらった情報をもとに地道に捜索を始めることに、実際に依頼の討伐任務はほとんど捜索に時間を取られる、都市伝説が生まれた場所に顕現することが多い幻想生物、しかし明確な場所はほとんど不明なため、かなり骨が折れる。二人も今日中に見つかることはないと予想し、数日は捜索にあたるつもりでいた。
二人はタバコを捨てて喫煙所を出て話しながら街を歩く
「多分もう顕現してると思うんだけど、ギリだよな」
「お前のその感覚すごいよね、あんま外れたとこ見たことない」
二人が今日からしろしろさん捜索を始めたのは山田が都市伝説を調べて感覚で今日に顕現しそうだと判断したからで、山田のその感覚はあまり外れたことがないため佐藤も信用していた。
「これはね、経験としか言えないわ、今までの統計みたいなのが頭の中であんだよ」
「流石、8年の実績は伊達じゃないね」
幻想生物は人目を避ける習性がある、それは多くの人が実際には存在していないと認識しているからで、幻想生物の被害は幻想省が隠せる程度で済んでいる。
しかし、写真や映像、物的証拠が残り多くの人間が、本当に存在しているかもしれないと認識した瞬間、幻想生物は人目を避けることをやめる。
二人が話しながら人目がつかなそうな路地裏に向かっている時、柴田がSNSにアップした写真は多くの人間に見られていた。
SNSでは、憶測が飛び交い、CGや、何かの間違いなど否定的な意見が多かったが、タネも仕掛けもないため、信じてしまう人も多くいた。
更に別の意図で、その憶測を悪意を持って広げる者がいた。
フードを被りスマホをいじりながら街を歩く男がメガネを外しながらニヤリと笑った
「ちょうどいい、私が逃げる時間を稼いでくださいよ」
その男、金森は笑みを浮かべたままSNSの憶測を助長し続けた
そうして、路地裏で隠れていたしろしろさんは範囲的認識の力で強化され、多くの人間に存在を信じられたため、路地裏から人が行き交う通りに飛び出した。
しろしろさんを見た人々は驚き、遠巻きに眺める
「え?何あれ?」
「全身タイツの変態じゃん」
「関節おかしくね?ロボット?」
人が集まり始めて、ほとんどの人がスマホを向けている中、好奇心の強い若い男がしろしろさんに近づき話しかける
「あのー?これなんかのテレビっすか?」
しろしろさんという都市伝説はかなりあやふやな所が多く、いわく整形に失敗した人間の成れの果てや、山から降りて来た怪異や、エイリアンなんて話もある、しかしその中で唯一どの話にも共通することは、近づいて来た人間を締め殺すということだ。
近づいた男の喉元にしろしろさんの腕が巻きつき締め上げる
「ぐっ!がぁぁ…」
その様子を暫く静観していた者、違和感を抱きゆっくりと離れた者、近づき止めようとする者がいた、しかし、しろしろさんが意識を失った男を勢いよく投げ飛ばした時、全ての人々が逃げ惑った。
「キャァァァァ!」
「おい!やばいって!」
「化け物だぁ!」
一瞬でその場はパニックになった、そしてしろしろさんは腕を伸ばして建物の上に登り建物から建物へと移動し、夕方の街をかける
山田と佐藤は偶々そんなしろしろさんを発見した
「なあ、あれってさ」
「見つけたね…え⁉︎なんで?」
幻想生物が堂々と姿を見せている異常事態に佐藤が慌てる、この事態は悪い出来事が積み重なって起こってしまった。
普段なら幻想生物の写真がSNSに投稿されたらすぐに対処されるのだが、偶然にも3日前に一人の職員が幻想省を裏切り消え、管理課は他にも裏切り者がいるかもしれないという疑心暗鬼でまともに機能していなかった。
そして、偶然にも普段誰も近づかない路地裏に、幻想生物と関わり記憶を消された少女が違和感を抱いてしまい、偶然顕現したばかりの幻想生物の写真を撮ってしまった。
更に、人工神の教会を調査するために、安倍晴樹が東北支部のハンターの多くを連れ出しており、この事態に対処できるのは山田と佐藤の二人のみだった。
二人は顔を見合わせて、山田が呟く
「これさ、俺ら帰っちゃダメ?」
「流石にまずい、え?どうする?」
この最高にまずい状況を二人は理解出来ていなかったが、まず動いたのは山田だった
「とりあえず、俺がしろしろさんを追跡するから、お前は本部と連絡、多分電磁パルス案件って言っといて、それ終わったら俺に電話して、情報収集しながら合流で」
「了解、頼んだ」
山田の指示通りに佐藤は本部に電話をかけ、山田は建物に登りしろしろさんを追いかける
時同じく、幻想省本部は大慌てだった。
古株である金森が何の引き継ぎもなく消え、人工神の協会の任務、更に、街中を堂々と動いているしろしろさん、SNSの情報隠蔽もなぜかうまくいかずに、派遣できるハンターもわからない、そんな状況で東田は諦め半分で忙しく働いていた。
(何だってんだよ!金森の野郎!討伐依頼出してやる!)
裏切りいなくなった金森に恨み言を考えながら苛立っていると、電話が鳴り響き、東田は雑にそれを取る
「はい!幻想省!」
『あー、佐藤です、今駅付近で幻想生物を見かけて、山田が追跡中です、どうなってるんですか?』
「え?佐藤さん⁉︎しろしろさんですか⁉︎」
『多分、白いやつなんですけど、なんであんなに堂々と飛び回ってるんですかね?』
佐藤からの連絡は渡りに船で現状しろしろさんを討伐できる可能性のあるハンターは付近に居なかった。
東田は現在の状況を伝え、佐藤は山田の元へ走りながら聞いていた。
『つまり僕たちだけしかいないと』
「そう!とりあえずこっちで情報の統制をしてこれ以上しろしろさんが強くならないようにするんで」
『了解です、まあもう山田が倒してるかもしれないですけど』
山田の実力を聞いたばかりの東田は、もう大丈夫だろうと胸を撫で下ろす。
しかし、その瞬間最悪の事態が起きてしまう。
「東田さん!テレビ!」
そう聞こえて、少し離れた場所に設置されていたテレビを見ると、ちょうど生放送で駅前を映しており、その画面にはしろしろさんが映り直ぐに途切れた。
幻想生物がテレビに映る、つまり、テレビを見ていた人間全員が、しろしろさんという幻想生物を実在するかもしれないと認識してしまうという、最悪の事態だった。
東田は数秒の硬直の後、叫ぶ
「…え、駅前に!電磁パルスが直ぐに投下されます!」
東田の声を聞き更に慌ただしく動き始めた管理課の職員たち、東田は直ぐに電話に意識を戻す
『東田さん?何が起きたんです?』
会話が途切れ、急に叫んだ東田に電話口の佐藤が疑問をぶつける。
電磁パルスは世界で管理している衛星から、幻想生物の存在がメディアで拡散されるような、緊急事態時にすぐに発射される、全ての電子機器を停止させる爆弾で、街一つ覆う威力がある。
電磁パルスはすぐに投下され佐藤と山田の二人とは連絡が取れなくなる為、東田は急いで佐藤に告げる
「今、しろしろさんがテレビに映りました!すぐに電磁パルスが投下されます!範囲的認識は桁違いです!しかし増援はすぐに来ません!30分は時間を稼いで下さい!」
急いでる為かなり命令口調だが佐藤もことの緊急性を理解し、黙って聞いていた。
そして最後に電話口で言葉を発する
『…それって倒しても問題ないんですよね?』
その軽口の後に電磁パルスが発動し電話が切れた。
その発言に東田は少し笑い、管理課の職員に指示を飛ばす。
「ネットは詳しい人に任せて、我々は処理班と共に一般人の保護を!しろしろさんはあの二人に任せます!」
東田の言葉で職員が全員動き出した。
その少し前、山田はしろしろさんを追跡ししていた、ハンターも幻想生物と同じく一般人から隠れるべきであるが、しろしろさんがルートを選ばない為、山田もかなり目立っていた。
それを見た一般人は騒ぎ立てる
「え!何あの白いの?」
「うわ追いかけてる人、すご!」
「パルクールじゃん!かっけぇー」
いやでも聞こえてくる声に山田は辟易していた
(クソ目立ってるじゃねーか、武器も出せねーし、マジどうしよ)
自分が目立たないようにしたら見失ってしまうし、大勢が見てる中武器を取り出して攻撃するわけにもいかず派手な追いかけっこが続き、段々と人が多くなっていく
(これ、駅前に向かってねーか、人通りのないとこに行ってくれたら楽なんだけど)
山田の願いも叶わずに、しろしろさんはこの町で1番人が密集している駅前に辿り着き、ペデストリアンデッキに登る。
山田もそれを追って駅前に着き、人の波を避けるために街頭の上へ飛ぶ、しろしろさんは形を変えながらうまく人を避けて進んでいた。
「きゃ!何この白いの!」
「うわ、きも!」
山田が別の街頭に飛び移った時、しろしろさんの通り道にテレビ用の大きいカメラを構えている人を見つけてしまった。
「やっべ」
山田はデッキの手すりに飛び移りそのまま走りカメラに向かう、走っている最中にナタを取り出し、周囲から軽い悲鳴が聞こえたが無視してカメラを狙いナタを振り下ろし壊す、しかし一歩遅く、しろしろさんはカメラに写ってしまった。
山田の行動に周りはパニックになる
「きゃ!」
「うわ!なんだあんた!」
「カメラ壊れてるじゃん!」
「待って刃物持ってる!やばい!」
喧騒を無視して山田が辺りを見回すと、しろしろさんはデッキから落ちていくのが見えた。
山田から人々が離れると、山田はため息を吐き場所も憚らずにタバコに火をつけ、一気の煙を吸うと大きなため息と共に吐き出す
「はぁぁぁぁ、終わった」
直ぐに上空から電磁パルスが落ちてきて、周囲を稲妻が走り、それを見た民衆はパニックになり逃げ出す
「うわ!何これ!え?電気消えたんだけど!」
「スマホ壊れた!」
そして落ちたしろしろさんが巨大化しデッキに頭を出しそれを見て更に逃げ惑う人々
「ば、化け物だぁ!」
「キャァァァァ!」
15メートルほどの大きさになったしろしろさんを正面から見て山田はタバコを捨てナタを構える
「これ、俺悪くないよな」
一般人への秘匿などと言っている場合ではなくなったため、愚痴をこぼしながら覚悟を決めた山田は片手で耳からリング状のピアスを取り、デッキから飛ぶ
「うらぁ!」
山田はしろしろさんの胴体にナタを振り下ろし切り付ける、しかし血は流れずに体が裂けるだけだった、直ぐにピアスを指で曲げてから攻撃した箇所に投げると小さい爆発が起きる。
山田はデッキの下に着地して、しろしろさんの足をナタで切り付けるとバランスを崩したしろしろさんはデッキを壊しながら倒れる
(やべ、誰も巻き込んでないよな?)
山田が崩れたデッキの心配をしているとしろしろさんの胴体から白い無数の腕が伸びて山田を襲い始める
「うわ、俺、こんなんばっか!」
その場から飛び退き、再びデッキに登ると白い腕は山田を追ってきた、しかしデッキの上には逃げ遅れた一般人数名おり、白い腕を見て悲鳴を上げる
「キャァァァァ!何あれ何あれ!」
「うわ!こっちきた!」
白い腕のほとんどが山田を追っていたが数本が一般人に襲い掛かり、首を絞め宙に浮かせる
「ぐぁ!」
「あ゛ぁ!」
それを見た山田は宙返りをして自分を追っている白い腕を全て切り、一般人の元に走り首に巻きついている白い腕も切り落とす
一般人は地面に落ちて咳をしながら喉を抑えている。
「がはっ!」
「ぐぁ!」
そしてしろしろさんの本体が起き上がっているのを見た山田は逃げ遅れた一般人に顔を向けずに言う
「さっさと逃げてもらっていいっすか」
それを聞いた一般人は逃げ始め、しろしろさんは山田と一般人に向けて白い腕を無数に伸ばし、山田は一般人を守るために避けずに全て切り落とす
(キリがねぇ)
しろしろさんの本体は大きな腕を山田に向かって振り下ろし、山田は回避しようと飛ぶが無数の白い腕がそれを邪魔する
「ちっ!」
デッキは崩壊し、山田もそれに巻き込まれて地面に落ちる。
なんとか瓦礫を避けて上を見るとしろしろさんの無数の腕が一般人を追いかけていた。
山田はなんとかデッキに戻り、腕を切り落とそうとするが、しろしろさん本体に行手を阻まれて間に合わずに、一般人はまた腕で首を絞められる
(クッソ!邪魔くせえ!)
すると銃声が鳴り、首を絞めていた腕を正確に撃ち抜き一般人は解放されて逃げ始め、聞き馴染んだ声が聞こえた
「はーい、皆さん逃げてくださーい!」
佐藤がアサルトライフルで正確に無数に伸びる白い腕を撃ち落としていった。
それを見た山田はしろしろさん本体の攻撃を避けて佐藤に向かって走り合流する
「遅え、でも助かったわ」
「ごめんごめん、とりあえず、こいつは我々で対処しなくちゃいけなくなった、少なくとも30分は増援来ないらしい」
「最高、こんな化け物俺らだけで相手すんの?割に合わねー」
会話している中でもしろしろさんは二人に向かって無数の腕を伸ばしてくるが、佐藤がそれを全て撃ち落として、背中に背負っていたスナイパーライフルに持ち替えて、本体の頭を撃ち抜く
「ナイスショット、流石の神エイム」
「任せてほしい、ただ」
撃ち抜いた頭は穴が空いたがすぐさま再生し塞がる
「弱点とかあんのかね」
「まあ、死ぬまで攻撃しかないよね」
しろしろさんの本体は瓦礫を持ち二人に向かって投げてくる、それを避けながら山田は指示を出す
「小さい腕は任せた、遠くからライフルで削って、俺は本体の気を引きながら色々やるわ」
「了解、任せた」
佐藤はその場から離れ、山田は飛んでくる瓦礫を避けながら本体に向かう。
小さい腕も山田に向かってくるが、それを気にせず走る、すると小さい腕は山田に触れる前に佐藤の銃撃で全て撃ち落とされる
(相変わらずキモいなぁ)
走りながらでも山田の援護をして、一発も外さずに腕を撃ち落とす佐藤の銃撃を見て若干引く山田。
佐藤は少し離れた場所で止まり、スナイパーライフルを構えてしろしろさん本体の足を狙い撃つ
「当たり、当たり」
二発撃ち二つとも足に命中し命中するたびに当たりと口に出す
本体は前のめりに倒れ、その隙に山田はナタをしまい、腕からチェーン型のブレスレットを取り外すと、それは2メートルほどの長さになり、色が銀色から熱を帯びたオレンジに変わった。
「さあ、秘蔵武器第一弾、熱線チェーン」
熱戦チェーンは文字通り、金属のチェーンが超高温になる武器だ、山田は飛び上がりチェーンを鞭のようにしならせてしろしろさん本体の首に当てると溶けるように切り裂き、本体の首が落ちる。
「これで終わったら楽なんだけど」
そういいながら着地し、残りのピアスを外し捻ってから、しろしろさんに向かって投げ捨てる。小さい爆発が数回起きて爆風が落ち着くとしろしろさんの胴体はボロボロになり、溶けていった。
しばらく、油断せずに構えていると佐藤が歩いて近づいてきた
「おつかれー、案外楽だったね」
それを聞いて、山田もチェーンの電源を切り普通の銀色に戻す
「それな、てか、これ良くね?熱線チェーン」
山田はチェーンを佐藤に自慢するように見せつける
「わかる、遠目で見てたけどめっちゃカッコよかった」
「だよなぁ、強えし、まあ温まるのは一瞬なんだけど、冷めるまでクソ長いのがたまに傷…」
油断をして雑談をしていると山田は違和感に気がつき、一瞬黙り呟く
「頭どこいった」
しろしろさんの胴体は溶け白い水たまりができていたが、頭がどこにも見当たらなかった、直ぐ近くに落ちているはずだと思った山田は警戒し直す、佐藤もそのことに気がつき周りを見渡す
「ないね、溶けっ!がぁっ!」
突如佐藤はその場から吹き飛ばされ、遠くのビルにぶつかり姿を消した。
「なっ!ちっ!」
山田は直ぐに隣を見ると、筋骨隆々になった人間サイズのしろしろさんが山田に殴りかかっていた、避けるのが間に合わずにチェーンで攻撃しようとするが粉々に砕かれ、山田も別方向に殴り飛ばされて駅構内にぶつかる
その頃SNSは異様な盛り上がりを見せていた、謎の白い物体が写り不自然に直ぐに消えたテレビ、その少し前に白い何かが人を絞め負傷させた事件、そしてしろしろさんと言う都市伝説、最後に一切の連絡が途絶えた駅前、そんな事件が立て続けに起きさまざまな憶測が飛び交っていた。
[政府が行っている人体実験の被験体が逃げたんしたんだ!]
[しろしろさんだよ、人を締め殺す山の怪異]
[外国の最新兵器だ!ビームを出すのを見た!]
[宇宙から何かが落ちてきた!宇宙人の侵略だ!電撃を出すんだ!]
[いや、ボディビルダーの神だよ、白くてムキムキなんだ]
[音速を越えるパンチを繰り出す、ボクサーの突然変異じゃね?]
政府の陰謀、都市伝説、外国の兵器、宇宙人、様々な憶測が飛び交い、さらにそれを面白半分で適当な情報を言う者、真実は一つもないがそれぞれ、そうだと認識してしまう人が一定数存在してしまうと、幻想生物はその憶測と同じような力を得てしまう。
そのため、現在二人が戦っているしろしろさんは時間が経つたびに強化されてしまっていた。
普段なら直ぐに情報統制が敷かれるが、幻想省の情報統制を詳しく知る金森が邪魔している為うまくいかなかった
佐藤は意識を取り戻し瓦礫を押し除けて起きあがろうとするが足に力が入らずに膝から崩れ落ちる。
「痛った、ちっ、足逝ったなぁ」
自身の足を見ると右足が曲がってはいけない方向に曲がっており、全身に痛みがあり、至る所から血が流れていた。
佐藤は商業ビルの中に居て、正面を見ると自分が吹き飛ばされてできた穴が空いており、そこを目指して足を引き摺りながら歩く
「あいつ、死んでないだろうね」
なんとか歩いていると、道中に完全に壊れたスナイパーライフルと、アサルトライフルが落ちていた
「ちっ、高かったのに…」
佐藤は腰からハンドガンを取り出して、壊れてないことを確認すると穴に辿り着き外を見る
「はぁ、これは死んだかな」
外では自分と同じくボロボロになった山田がナタでしろしろさんと戦っていたが、明らかに劣勢だった。
佐藤は穴から飛び降りて左足だけで着地するとデッキの手すりに寄りかかりながらハンドガンで、山田の援護を始め、弾丸が体に当たりしろしろさんの動きが鈍くなる、それに気がついた山田はしろしろさんから距離を取り、内ポケットからナイフを数本取り出してしろしろさんに投げつけ、叫ぶ
「お互いしぶといなぁ!」
「僕もお前が生きてて嬉しいよ!」
山田が投げたナイフはほとんど防がれたり、そもそも当たらなかったが、一本だけしろしろさんの腕に突き刺さり、電撃が流れ、一瞬しろしろさんは硬直する、その隙に山田はナタで首元に切り掛かり佐藤も、頭を狙いハンドガンを連射する。
「ちっ!強すぎね?」
ナタはしろしろさんの首の真ん中で止まっており、弾丸もしろしろさんに当たると少し凹む程度で止まり地面に落ちた。
「ぐあぁ!」
山田はナタを手放し離れようとしたが、間に合わずにしろしろさんの攻撃を喰らい、佐藤に向かって吹き飛ぶ
「ちょ!痛った!」
佐藤は避けられずに山田にぶつかり倒れ、山田も佐藤の近くに転がる
「悪りぃ」
「気にしないでぇ」
「あ、やべぇかも」
山田が起き上がりしろしろさんを見ると首にナタが残ったまま自分達の方を向いて、胴体が光っていた、嫌な予感がした山田は佐藤の腕を掴みデッキから飛び降りる
「痛た!」
佐藤は落ちた際に頭をぶつけて悶絶しているが直ぐにしろしろさんがビームを放ち先程までいた場所が熱で溶けているのを見て目を見開く
「おいおい、あいつビーム出したぞ?」
「マジでなんなのあいつ?」
人がどう認識するかで姿、能力、全て変わってしまう、これが幻想生物の恐ろしい所だ、明確な芯の部分がなかった都市伝説は、最早ただ人間に害をなす化け物に成り果てていた。
直ぐに次のビームが飛んできて佐藤を抱えて避ける山田
「あっぶな!お前足面白い方向に曲がってんな!流行ってんの?」
「最先端ね、痛みに我慢できる者だけがたどり着ける極地、いや、狂気」
「やかましー」
ふざけた会話をしながらも、飛んでくるビームを避け続ける山田、佐藤もハンドガンでしろしろさんを狙う
「それ効いてないぞ」
「射撃の天才を舐めないでほしい」
山田は目の前で弾丸が効かないところを見たため、佐藤に言うが、何か考えがあるのか射撃をやめない佐藤、それを見て山田は信じることに
「おっけ、任せたぞ、射撃の天才」
佐藤は黙り込み集中してしろしろさんに標準を合わせる、山田は佐藤を抱えたまま一定の距離でしろしろさんを避け続ける、そして狙ったタイミングでしろしろさんに弾丸を当て続ける佐藤
10発ほど撃ち込んだ時、しろしろさんの頭が大きく揺れる、そのタイミングで佐藤は叫ぶ
「今!首切りタイム!」
佐藤は山田を押し飛ばし、倒れながら更に弾丸を2発撃つ。
山田は佐藤を見ずに走り出し、その瞬間佐藤が放った弾丸がしろしろさんの首に当たり1発2発と正確に、全く同じ場所に当たる、その瞬間しろしろさんの首にヒビが入る
(なるほど、マジで天才じゃん)
佐藤は山田に抱えながら撃った弾丸12発をしろしろさんの首の同じ箇所に当て続けていた、遠目からも、しろしろさんに弾丸が弾かれたのを見ていた佐藤は、少し凹むところも見えていた、全く効いてないわけではないと判断した佐藤は、山田が首を切れるように首に狙いを定めて、狙い通り首にダメージを負ったしろしろさん、山田も今度は切れるとしろしろさんの首に刺さったままのナタを思いっきり蹴り飛ばす
「オッラァァァァァァァァ!」
しろしろさんの頭が宙を舞い、佐藤は頭を目掛けて弾丸を放ち遠くに飛ばす、そして直ぐに弾が切れてハンドガンを下ろす
「弾切れ」
自分にやれることはやりきったと、山田の方を見る佐藤
山田は首を切った後、胴体に蹴り入れた
「ちっ!」
しかし、しろしろさんは首がなくなっても山田の蹴りを腕でガードしていて、山田の足を掴み地面に叩きつける
「がはっ!」
佐藤はそれを見て立ちあがろうとするが直ぐに座り直しタバコに火をつけた
「はぁ、僕たちだけで倒せるって啖呵切ったのになぁ」
突如しろしろさんの胴体にお札が張り付き、しろしろさんは動きを止める。
山田は這いつくばりながらしろしろさんから距離を取り上を見上げるとため息を吐いた
「今回最初から見てたって言ったらマジでキレますわ」
空には星6ハンターの安倍晴樹が浮いていた。
「今回は本当に今着いたんや、後は自分の仕事や」
安倍はしろしろさんの前に降り立つ。
山田は近くの瓦礫に背を預けて座りタバコに火をつけた、佐藤も足を引き摺りながら山田の隣に腰を下ろす
「空飛べたんすね、助かりました」
「ええんやで、ようここまで時間稼げたなぁ、お陰でなんとか間に合ったわ、せっかくやから星6ハンターの本気見せたるわ」
「本気?」
安倍がニヤリと笑うと、大気が震え始め、白い光のオーブが無数に現れ、日が暮れて暗くなった駅前が異様に明るくなる
「うっわ!ちょ!まて!もうちょい離れる!」
「ぼ、僕も!ちょ、ここ危険だよね!」
山田と佐藤は慌てて立ち上がり、足を引き摺りながら距離を置く
「そんな逃げんくても、守ったるのに、まあええ、なかなかレアやで!急急如律令!」
安倍がそう言った瞬間、白いオーブがしろしろさんに集まり、一瞬の静寂の後、空を突き抜ける光の柱がしろしろさんを消し飛ばした
「はっはー!やっぱり、全力は気分ええなぁ!」
光が消えた後、そこには何も残っていなかった、安倍の高笑いを聞いて、二人は引き攣った笑みを浮かべる。
「あの人やべーわ」
「それな」
「聞こえてるでー」
山田はタバコの火を消して、寝転がる
「はあ、後もう任せるわ、俺は疲れた」
山田はそれだけ言い残して意識を飛ばす
「おつかれ、はあ、安倍さん?改めて助かりました、ありがとうございます」
「ええって、このレベルの幻想生物ここまで追い詰められるんは、他の星3ハンターには無理やで、ようやってくれたわ」
「まあ、本当は討伐する気だったんですけどね」
しろしろさんは急激に範囲的認識の力を得て、今では全国に広まってしまったため、星5ハンターでも相性次第では負けるほどの幻想生物に成長していた。
「はは!まあ惜しかったんちゃう?後少し早ければ倒せたと思うで」
「あ、そういえば我々で飛ばした頭がそこら辺に転がってると思うんですけど」
「あ、ほんま?」
佐藤が指差した所を安部が探すと直ぐに白い頭を発見して持ち上げる
「これか、ほい」
安倍がしろしろさんの頭を両手で挟むと直ぐに消滅し、安倍の手が合わさり軽い音が鳴った
「それで済むなら、さっきの派手な技必要なかったじゃないですか」
「ええやん、様式美ってやつや」
「絶対使い方間違ってます」
そうしてしろしろさん騒動は幕を閉じた。
その後は、騒動を目撃した一般人を全て記憶処理をし、太陽フレアの影響で電波が通じなくなりガス爆発が起きてしまったとカバーストーリーを植えつけた。
SNSはしばらく放置したのちに、駅前に巨大な白いバルーンモニュメントを設置して誤魔化した。
それだけでは騒動は治らなかったが、証拠は全て消し去ったため時間が経てば話題にもならなくなるだろう。
山田と佐藤が時間を稼いだお陰で、隠蔽も間に合い、負傷者は出たが死者は奇跡的に一人もいなかった。
そして安倍が行った人工神の教会掃討作戦で検挙された人物の中に金森はいなく、完全に行方をくらませた
20時間後
山田は病院で目覚め、その後の話を佐藤と二人で安倍から聞いていた
「そんなわけで、予想よりもとんでもない依頼になってしもうたな」
「50じゃ割に合わないんすけど、結局俺の装備ほとんどぶっ壊れたし」
「僕の弾の在庫も、スナイパーもアサルトも無くなったし」
軽く言う安倍に文句を浴びせる二人、二人がしろしろさん戦で消費した武器類全て新しく買うとなると、50万では圧倒的に足りなく、このままでは命を賭けたのに赤字になってしまう為二人の文句は至極真っ当な文句だった
「流石に二人のおかげで被害かなり少なく済んだのに、損させる気はあらへんわ。今回の事態な幻想省はかなり二人に感謝してるんやで、てなわけで臨時報酬や」
安倍は懐から紙を出して佐藤と山田二人に渡す
それを受け取った二人は紙を見て目を見開く
「ま、まじっすか?」
「桁が…二つ増えてるっ!」
「マジかよ!これ半々で分けて、おいおい!いくらお釣り来るんだよ!」
「あー、勘違いしてるようやけどそれ二人それぞれにやで」
5000万分の特別報酬を与えると紙に書かれていて、二人で分けようと思ったが、紙にはそれぞれ二人の名前が書かれていた。
安倍の指摘でそのことに気がついた二人は顔を見合わせる
「え?一人5000万?」
「そうやで」
二人は少し黙った後に同時に叫ぶ
「「うぉぉぉぉ!」」
「え!マジか!どうする⁉︎」
「寿司だろ!焼肉だろ!後サイセ!」
「めっちゃ高い酒買おう!」
「馬鹿でかいテレビ!」
盛り上がりながら、何を買うか大声で話していると病室のドアが開き、看護師が注意した
「ここ!病院なんですけど!」
「「すいません」」
二人は頭を下げて黙ると看護師は去っていった
落ち着いた二人に安倍は話しかける
「自分的にはもっともらってもええと思ったんやけど、まあ喜んでるならええわ」
「もう夢がいっぱいですよ、ただ税理士に電話しないと」
「あ!そうじゃん、とりあえず、武器類は全部経費で買い戻すとして、これって給料って扱い?贈与?」
「多分給料やね、自分も給料としてこれよりもらってるから、二人が討伐してたらもっと貰えてたはずなんやで?」
幻想省には二人は時間を稼いだだけで実際に討伐したのは、安倍であると二人があまり目立たないように報告した。
それは目立つのが嫌いな山田と上から目をつけられて忙しくなるのが嫌だという佐藤、二人の意見でそうなった
「いいんですよ、我々はこれで」
「これは、改めて東京で自分の事務所に入らへんって勧誘しようとしたんやけど無駄みたいやな」
「マジ勘弁で、俺らはグダグダ生活できればいいんすよ、主人公じゃないんだから」
二人は今の生活を気に入ってる、主人公のような物語よりも、今を目標もなく生きるだけの日常を望んでいた。
安倍は諦めたように笑い立ち上がる
「君らはその方が良さそうやね、でも気が変わったらいつでも言ってな、今東京は結構荒れてんねん、ここだけの話やけど今15歳の少年が幻想生物、吸血鬼の力を使えるようになってしまってな、上の方が危険だから排除しようとしとるんやけど、理性も残っとるからハンターとして雇ってるんよ、吸血鬼君かなり強くてな、直ぐに星6ハンターになるかもしれんで、二人が東京来たら紹介するわ、ほなまた来るわ」
安倍の話を黙って聞いていた二人、安倍はそのまま病室から出ていき、二人は顔を合わせる
「「漫画あるあるじゃん」」




