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幻想省活動記録  作者: 長野原
正義のプロセス

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18/18

ep10

幻想省と松野が声に出した瞬間、市井に緊張が走った。八乙女から聞いていた、国を頼れない理由



(…名前を知られてる。どうする…後手に回ったら終わりだ)



何も聞いていなかったら、市井は話を聞こうとしただろう、しかし幻想省について話した時の八乙女の怯え様と、これまでの戦いで市井は自分は強いと自信をつけ、その結果市井は戦いを選んでしまい市井は手前にいた松野に弾丸を放った



「うわっ!」


「紅羽さん!」



市井が銃を放った瞬間松野は笠原を突き飛ばして、銃弾を避け、一瞬で軌道がおかしいことに気がついた



「っ!」



体を捻り後ろを振り向くと避けたはずの弾丸が自分に向かってきていた。松野はギリギリで避け弾丸は松野の頬を掠めその後戻ってくることはなかった。

市井は弾丸を避け切り擦り傷しか負っていない松野を見て驚愕した



「は⁉︎なんで避けられんだよ!」


「紅羽さん!市井羽駒さんの視線に入らないように隠れてください!倒れている人を安全な場所へ!」


「っえ?あ、わかった!」



笠原は一瞬戸惑ったが直ぐに松野の言う通り市井の視線から外れるために寝転んだまま横に転がり草むらに隠れた。

松野はジャケットと靴を脱ぎ捨て、ノースリーブのワイシャツ姿で裸足になると腕全体と、足に火がついた



「市井羽駒さん、少し大人しくなってもらいます」



異能力 人体発火

自分の体から火をだせる


松野は左足から噴出した炎の推進力で一気に市井との距離を詰め胴体に右足で飛び蹴りをするが市井は間一発避ける



「はっ⁉︎あっぶね!」


「はぁ!」



一度着地した後、右足の炎を消し連続で蹴りを放つ、市井はなんとかガードしようとするが顔以外に何度も蹴りをくらう



「ぐっ!がっ!ちっ!」



市井は埒が明かないと明後日の方向に発砲し弾丸は松野へと軌道を変えた



「これでっ!」


「しっ!」



松野は横っ腹に蹴りを入れ市井を吹き飛ばし、目線だけを横にずらした後弾丸を燃え盛る手で掴み止めた



「放った物を指定した物に確実に当てる…トリガーは視線、自分から放ること、そして掠る、受け止めるでも当たった判定になり特異性は消えるといったところでしょうか」


「っ⁉︎ちっ!」



たった2回自分の異能力を見ただけで正確に言い当てられ、市井の顔は驚きに染まる。松野は手のひらで溶けた弾丸を地面に捨てる



「その顔は当たりですね。その様子だと戦い慣れもしていないようですね」



粛清対象となるのは主に異能力者であり、松野は粛清の仕事を失敗したことがない。

市井が戦ってきた相手とは違い松野は戦ってきた経験が違う、市井は立ち上がり銃を構えたが内心かなり焦っていた



(やばいっ!調子に乗った!こいつはやばい!)


「大人しく投降することをお勧めします」


「清美ちゃん、かっこいいぃ!」



背後で倒れている男たちを引き摺って運びながら笠原が叫んでいたが市井はそんなことを気にする余裕はなかった。元に松野が殺すつもりなら最初に決着はついていた



「くっそ!」



市井は歩いて近づいてくる松野の真上に砂利を投げ、左右に銃を撃つ、真上からは砂利、左右から銃弾が松野に襲いかかるが、松野は弾丸を両腕で掴み止め、その場から飛び上がり降ってくる砂利をオーバーヘッドキックで全て市井に蹴り返す



「はぁ⁉︎バケモンかよ!」



多方向からの攻撃も対処され、飛んでくる砂利から慌てて逃げるが松野は一気に距離を詰め、思わず銃を構えるが無意味だと銃を下げる。

その行動が功をなし銃を狙った松野の蹴りを回避する



(この人…戦闘に慣れているわけではないでも、判断が冷静ですね)



市井は銃を持ったまま松野の攻撃をなんとか回避する、松野は市井の手から銃を取り上げて無力化することを目的としているため松野になんとか食いついていた。

一方笠原は倒れている男達を車の影に隠し続けて最後の1人の元へ走る



「はぁ、はぁ、きっついなぁ」



息を切らしながら倒れている男の足を掴み引きずろうとすると、足から血が流れていることに気がつく



「怪我してる…えっ、すごい血出てない?」



市井に切られていた足はかなり重傷で笠原は動かすことを躊躇し、とりあえずその場で止血をしようと座り込む



「どうしよう⁉︎し、止血…何もない!」



手元に包帯はなく、焦っていると倒れている男がスーツ姿なことに気がつき、とりあえずネクタイを外し利用することに



「やってみるしかない…大丈夫うちは結構器用だし、頑張れぇ紅羽ぁ、うちならできるぅ」



自ら鼓舞しながら止血を試みているうちに男が目を覚ました



「う、、ゔぅん」


「あ、大丈夫⁉︎足は見ない方がいいかも?いややっぱり見て!止血うまくいってると思う?」


「っ!痛ってぇ…あぁ、多分大丈夫だ…」



状況はわからなかったが笠原が自分の手当てをしてくれていることは理解でき、痛みに顔を歪めながらも素直に笠原が止血した足を確認する



「よかったぁ、映画で一回やってたのを見よう見まねでやっただけ、だからうまく行ってよかったぁ。うち結構天才じゃない?」



見ず知らずの自分を助けるために一生懸命な笠原を見て、男はなんとも言えない暖かさを感じ、感謝を伝えようとするが、市井の存在を思い出す



「っ!俺はいいからさっさと逃げろ!これをやったやつが近くにいるかもしれねぇ!」


「大丈夫!うちの友達がとっ捕まえてくれるから!ていうか救急車呼ばなきゃ!でもあんたを安全な場所に…」



油断し立ち上がった笠原は市井の視線に入ってしまい、松野に追い詰められなりふり構ってられない市井は咄嗟に視線に入った笠原に発砲した



「…はっ!」


「危ねえ!」



市井の異能力の特性上誰を狙ったのかがわかりづらい、松野は自分を狙ったと思い警戒したが、直ぐに違うことに気がつき、笠原の元に走り出していたが、間に合うはずもなかった。

銃弾は笠原に向かって飛んでいき、発砲音を聞いた男は咄嗟に叫び笠原の前に立ちはだかった



「がっ!」


「いっ!」



銃弾は男の胴体を貫通し、軌道が少しずれ笠原の腕に擦り傷を負わせた。

松野が離れた隙に市井は逃げ出し、笠原は倒れた男の元に駆け寄ると、夥しい量の血が流れ素人目でも助からないとわかった



「ねぇ!あんたなんで…」


「…わかんねえ…借りは返さねえと」



咄嗟に庇ってしまったが、後悔はなかった、男にとって自分を助けようとしてくれたそれだけで命をかけるには十分だった。

見ず知らずの自分のために涙を浮かべてくれる優しい女を守れたことにただ安心した



「き、救急車…」


「いい、もう、助からねえ…さっさと逃げろ…」



笠原は涙を拭い、立ち上がり走り出した。その様子を見た男は軽く笑い、自分の命がなくなっていく感覚に身を任せようとするが、ある感情が湧き上がってきた



(あの、野郎…兄貴を殺しただけじゃなく、俺を撃ちやがってっ!しかも関係のねえやつにまで手を出した。許せねえ…)


「ゆる、せ、ねぇ…」


“許せねえ”



男は市井に対して強い憎悪を向け、肉体が死んだ。

市井は松野が走る後ろ姿を確認しながら逃げていた



(逃げ切れるか?だめだ万が一真里が戻ってきてしまったら…くそっ!逃したのが失敗だったのか?一番は俺が全員殺してここで待つことだ…)



市井は逃げている最中コンテナに目が止まった。出来るかはわからなかった、しかし、やってみる価値はあると、全力でコンテナを松野に向けて押し出した。コンテナは一切動いていないように見えた。しかし、感覚で分かった異能力が発動していると



「ははっ!」



コンテナは少しづつ動き始め、物理法則を無視し宙に浮かび松野に向かって飛んでいった



「なっ!」



コンテナが軋む音で振り向いた松野は自分に向かって飛んでくるコンテナに驚きながらも、ジャンプして回避する。コンテナは轟音を響かせ地面に激突し松野がコンテナの上に着地したことで当たったと判定され動きを止める



(見誤った!異能力の発動条件は放るではなく放つという意思!少しでも動けば条件が満たされる)



市井の異能力の脅威レベルを上げ、横目で笠原が走っている様子を見て、松野は市井との戦闘に意識を向けるとコンテナがもう一つ飛んできていた



「ふっ!」



コンテナをギリギリまで引き付け、横に飛び側面を足で触れ、特異性を消す。コンテナはそのまま松野を素通りして飛んでいく、飛んできた方向を向くが市井の姿がなかった



「どこに…っ!」



自ら飛ばしたコンテナに捕まり隠れていた市井はコンテナを避けた松野に発砲する。弾丸は松野の腕を貫通し松野は地面に落ちる。

市井は銃を口で咥えて持ち、片手をあけコンテナを掴んでいた手と入れ替えもう一度異能力を発動しコンテナは落下した松野に向かって飛んでいく



「くらえぇ!」


「はぁぁ!」



松野は立ち上がり、弾丸を受けた腕から炎を噴出し飛んでくるコンテナを全力で殴り、コンテナを破壊した



「いっ!」



松野の腕は骨が砕け大量の血が滴り、使い物にならなくなっていた



「終わりだ!」



市井も地面に着地し、松野に残りの弾丸を撃とうとした



「やぁぁぁ!」


「なっ!ちっ!」



銃を構えた市井に笠原が全力でタックルをするが、市井は倒れずにふらつきながらも発砲するが違和感があった



(体が重いっ⁉︎)



市井が放った弾丸はあらぬ方向へと飛んでいき松野に向かうことはなかった



「清美ちゃん!」


「は⁉︎しまっ!」



その隙を松野は見逃さず、銃を構えた市井の腕を蹴り上げ、銃を手放した市井の後頭部に足を添えてそのまま地面に振り下ろした



「ぐっ、がぁ!」



市井は顔面から地面にぶつかり、意識を失い、一緒に倒れた笠原は息を吐きながら立ち上がる



「はぁ、助かりました紅羽さん…怪我は?」


「ぎゃー!清美ちゃん腕ええ!え、お、お医者さん!病院!」



松野の腕の様子を見た笠原は騒ぎ始め、引くほど動揺していたが、とりあえず薄着な松野に自分着ていたスカジャンを肩にかける



「ありがとうございます。一旦落ち着いてください。いまはアドレナリンでそこまで痛くないので、車に応急セットがあるのでとってきてもらえますか?」


「ま、待ってて!行ってくる!」



笠原が走っていくのを見ながら、松野は意識を失っている市井の隣に座り、息を深く吐く



「はぁ、文字通り骨が折れましたね」



いいジョークが思いつき笠原に言うのが楽しみだと考えていると、ふと冷たい風を感じ、次の瞬間には宙を舞っていた



「はっ⁉︎」


「うわっ!どうしたの⁉︎」



飛んできた松野を笠原は驚きながらも助け起こし、松野は何が起きたのかを考え一つ考えが浮かんだ



「紅羽さん!さっきの撃たれた人は⁉︎」


「あ!そう!大怪我だから、直ぐ助けを呼ばないとって思って携帯持ってないからまず清美ちゃんを助けようとと思って」



笠原が指を刺した方向に倒れている男はぴくりとも動いていなかった。すると突如倒れていた市井の体が浮き始めた



「まずいっ!霊化した!」


「霊?幽霊?え?何が起きてるの?」



状況を理解していない笠原に松野は簡潔に伝える



「人は死亡する際に強い感情によって幽霊になる場合があります!市井さんに撃たれた方が幽霊となり市井さんを襲っています!」


「は、え?幽霊っている、いや、あの人死んじゃったの?」



市井は意識を取り戻したが、ただ苦しそうにうめいているだけだった。

幻想省に所属している者は人を殺すことに忌避感を覚えている。道徳的観点もあるが1番は殺した相手が霊化し、自分に牙を向く危険があるからだ。粛清の際もそのリスクが付き纏うが、相手が何も感じない思わないうちに殺す。暗殺することが1番の解決策である。松野も例外なく実践しており、松野が武器をあまり携帯せずに素手での戦闘をするのも、粛清対象に警戒されないように近づくためであり、無力化を狙った戦闘が苦手なのもそのせいだった



(幽霊対抗できるものは持ってない…札も、紅羽さんの異能力は…触れることが必要でも幽霊には触れれない…)



松野は市井を助けようと近づくが幽霊に阻まれているのか近寄ることすらできなかった。

笠原はその場で固まってしまい、このままでは市井が死んでしまうと思った時、市井の体が大きく揺れ存在を認識できなくなった



「え⁉︎なにが…」



固まったままの笠原だったが市井が認識できなくなった瞬間にあることを思い出して声を上げた



「あ、八乙女真里…」


「…あ!」



笠原が八乙女の名前を出し松野もその存在を思い出した



(なぜ忘れていたんでしょう⁉︎まさか異能力?)


「後清美ちゃん…うちらさ、昨日駅で誰か追いかけたよね?」



笠原がそう言った瞬間に電撃が走ったようにそのことを思い出した。逆になぜ今までそのことを思い出せなかったのかが不思議だった



「紅羽さん、そのことを覚えてました?」


「ううん、今なぜか急に…」


「恐らく八乙女真里さんの異能力でしょう。気配を消すなんてものじゃないです。存在を認識させないようにする?いや、薄くする…」



松野は異能力を考察しながら笠原の側に寄り周囲を警戒し続け、市井が持っていた銃が近くに落ちているのを発見し拾う。

存在を視認できていない脅威が市井と八乙女さらに幽霊もいるため一切油断できなかった



「昨日駅で追いかけた異能力者が八乙女真里さんだったんでしょう。そのことを完全に忘れていましたので報告すらしてないです」


「あの2人何者なの?市井羽駒の方はなんか異様に強いし…」


「異能力者は一般人と比べて身体能力が高くなる傾向があります。市井羽駒さんが異能力者なのは確定でしょう。ただ、戦闘経験は浅そうでした」


「え、そうなの?確かに清美ちゃんすっごい強いもんね。でもうちは?」



異能力者はどんな異能力を持っていようと異能力を持っていない人物と比べて身体能力がかなり高く、例外はない



「紅羽さん、運動神経はいい方ですか?」


「うーん、小学生の時は足早かった気がする…でも運動不足だから今はわかんない」


「昨日駅まで走った距離は2キロ弱です。普通運動不足の人は私のペースについて来れるわけがないです」



実際使う機会がなかっただけで笠原の身体能力は成人男性の平均よりも上である、それほどまでに異能力者と異能力者ではない者には戦闘力に差がある



「うちすごかったんだ」



笠原はいつもの調子を取り戻し、松野は警戒しながら自分の腕を確認する



(血を流しすぎましたね…)



血が滴っている腕を見て松野は覚悟を決め、肩にかかっているスカジャンを半分脱ぎ腕に炎を纏う



「ぐぅぅ!はぁ、はぁ」


「え⁉︎大丈夫⁉︎」



松野は自身の炎で傷口全体を焼き止血した。脂汗を流しながら、荒い呼吸を整える



「はぁ、ふぅぅ、はい、大丈夫、です」


「には見えないよ!病院行かないと!」



敵がどこにいるかわからない状態で動き回るわけにもいかずにいると、数台の車が現れた



「今度はなに⁉︎」


「応援ではなさそうですね…」



車からは柄の悪い男達が大勢降りてきて現場を見て騒ぎ始める



「おいおい!どうなってんだ⁉︎久保を殺った奴を追い詰めたんじゃねーのか⁉︎」


「兄貴!あいつら…しかも鈴木さんが死んでます!」



死体を見て鈴木と名前を言った1人の男の声で柄の悪い男達は一斉に松野と笠原を見て、松野が手に拳銃を持っているのを発見すると怒号が響いた



「てめぇらか!久保と鈴木殺ったのは!」


「え、違う違う違う!あ、清美ちゃん!銃捨てて!」


「厄介なことになりましたね…」



男達が2人を目掛けて走ってきたのを見て、松野が周囲を見渡し、銃を片手で潰してから捨て笠原に声をかける



「紅羽さん、撤退です。逃げましょう」


「うん!そのつもり!」


渾身会(こんしんかい)に手出したこと後悔させてやらぁ!」



一般人を制圧するわけにもいかず、見えない脅威に襲われる気配もないので、松野は撤退を選んだ。

渾身会と名乗った集団と松野と笠原の2人がその場から逃げ出した後男が1人残っていた



「鈴木さん…マジで死んじゃったんすね」



男は鈴木と呼ばれた死体ではなく虚空に話しかけていた



「それに、あいつは…鈴木さん、後は任せてくれっす!」



男はそう言って車に乗り込み後を追った



場所は変わって松野達が戦闘していた工業地帯からかなり離れたビルの屋上でフード被った男が双眼鏡もなしにその方角を見ていた



「ふっふふ、これは思わぬ収穫かもしれませんね…」



強い風が吹きフードが外れた。

フードの男、金森はそう呟き携帯を確認し、その場から離れた



一方松野と笠原は渾身会をなかなか振り切れずにいた



「かなりまずいですね。私の車置いてきちゃいました」


「はぁ、はぁ、確かにうち足速いかも!」


「待てやごらぁぁぁ!」



身体能力的には2人の方が優れているが、戦闘直後で松野は負傷してることもあり、逃げ切れるか怪しかった。しばらく走ると目の前に車が止まった



「やっぱり紅羽じゃん!乗れ!」


「アオ兄⁉︎なんでこんなとこに…」


「お知り合いですか?」



先ほど現場に残っていた男が車で現れ、とりあえず2人は車に乗り込むことにした。

車は走り去り2人は逃げ切ることに成功したが車内はには気まずい空気が流れていた



「いやー、兄貴達に車を使って追うって脳みそがなくて助かったな」


「………」


「え、えっと」



車に乗り込んだ後笠原は不機嫌そうに黙ってしまい、松野は気まずかった。笠原は松野に気を遣ってやっと口を開いた



「こいつは間宮青斗(まみやあおと)、うちの…知り合い」


「初めまして、それと助けてくれてありがとうございます」


「これはご丁寧に、てか知り合いって紹介はないんじゃないか?」



間宮が明るく話しかけても笠原は終始不機嫌そうに反応しなかった。明るい笠原しか知らない松野は空気感に耐えられそうになかった



「っ、ごめん清美ちゃん…とりあえず病院に」


「あ、できればスミスさんの所に」


「うん、了解。悪いけど緊急だから車降りてくれない?」



松野に対しては普段通りに話すが間宮に対しては冷たい対応を続ける笠原に間宮の機嫌も悪くなる



「なぁ、俺なんかしたか?つーか、いきなりお前が捕まってこっちは大変だったんだぞ?」


「なにが大変だよ!あんたこそこんなとこでなにやってんの!」



間宮の発言に笠原は大声で怒り始めた



「うちが、なんのために!他のみんなは⁉︎」


「なに怒ってんだよ…他の奴らはみんな足を洗ったよ。俺はお前が心配で」


「心配するならまともになってよ!せっかく…もういい、降りて」



冷たく言い放った笠原に間宮は折れたように大人しく従う。

路肩に駐車し、間宮を降ろして笠原が運転を変わる



「なぁ、お前こそ今なにしてるんだ?あれか?執行猶予みたいなやつか?」


「もうあんたには関係ないから、助けてくれたことは感謝してる。でもそれだけだから」



吐き捨てるようにそう言って笠原は車を出した。間宮は車が見えなくなるまで見ていたが笠原が振り向くことはなかった。

その後車内に沈黙が流れ、笠原が最初に沈黙を破った



「清美ちゃん、ごめんね…変なとこ見せちゃって」


「いえ、でも少し意外でした。紅羽さんがあんなに怒るなんて」



松野はなにも聞かなかった。気を遣ってくれているのは明らかだった。だからこそ笠原は話始める



「少し昔話してもいい?」


「聞かせてくれるなら」



ポツリポツリと笠原は自分の過去について話し始めた

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