第33話 嫁入り
木仙さんの力によって、霊界のフウカさんのお屋敷まで来ることが出来た。
フウカさんが境界の鏡を使って天界から神様の世界へ転移したのに対し、自分の力だけで神様の世界から霊界まで帰ってくる木仙さん。
木仙さんがフウカさんの何倍も強いって話は嘘じゃないみたいだね。
…でも、木仙さんはこの部屋には居ない。
転移してきたのは私とフウカさんだけ。
そして…部屋には何故か布団が敷かれていた。
「木仙さんは?」
「ばあやは自分の部屋に転移したのだと思いますよ。もう深夜ですから」
「そっか……んん?」
深夜?
私達が天界に連れて行かれた時はまだそんなに夜は更けてなかったと思うけど…
「『天』の住まう世界の時間の流れは、下界とは違うと聞いていましたが…本当のようですね」
「そんなファンタジーな設定あるんだ…」
リアル浦島太郎。
たった数分くらいの出来事でも、まさかこっちでは数時間経っていたとは…
「…まあ、嘘なんですけどね?」
「………」
「そ、そんなに怒らないでくださいよ〜」
凄く興味深いファンタジーに感心した私の気持ちを返して欲しい。
こんなくだらない嘘をつくなんて…フウカさんらしくない。
…緊張しているのか、疲れが溜まっているのか。
「天界の騒動は大変でしたね。でも、これでサユリさんは私のもの。もう絶対離しません!」
「それは嬉しいね。……で?期待して良いのか、させてあげるべきなのか。どっちかな?」
「……お見通しでしたか…一体いつ気付かれましたか?」
「…木仙さんが居なくて、布団が1枚だけ敷かれていたところから?」
フウカさんがしたい事は想像がつく。
ここまで読んでいたのか、はたまた天界が黙っていたとしてもこうするつもりだったのか。
…まあ後者だろうね。
ここまで事が私達によく働くなんて、さすがに想定してないだろうし。
フウカさんがしたい事。
…一言で言うなら『初夜』かな?
私と、性的に交わりたい。
本当、フウカさんの行動力は凄まじいね。
「もし天界が動かなかったら。フウカさんは私を連れて…いや、拉致して無理矢理してた?」
「ええ。サユリさんなら受け入れてくれるでしょうし、何より外野が煩いので」
「外野…?」
「ふふっ、そのお話は後々…」
不敵な笑みを浮かべて私に迫ってくるフウカさん。
そのまま私の肩を掴んで押し倒そうとしてくるのかと思いきゃ……そこはヘタレなフウカさん。
押し倒すまでは出来ず、その場で固まって荒い息をしている。
夢の中ならもっと大胆なんだけどね?
現実ではそうもいかない。
「フウカさんは可愛いね。やっぱり私がリードしないと」
「い、いえ!私が!!」
「そう?じゃあ任せてみようかな?」
自分から布団に寝転がり、服を脱いで待つ。
フウカさんはそんな私を見て恐る恐る自分の服を脱ぎ、その場に落とす。
露わになったフウカさんの裸体は…少し心配してしまう程の細身で、本当に余計な肉が付いていない。
その代わり、筋肉も無い。
普段神通力に頼り切り、高い身体能力は神通力によって強化されたものだって事がよく分かる。
「わ、私は姫なのですから、これくらい当然です!」
「姫様ならもう少し贅肉があってもいいと思うけど…まあ、あんな食生活じゃ仕方ないか」
あの精進料理みたいなのが王族の食事なら、この世界の食生活はどうなっているのか凄く気になるところ。
国民みんな飢えてるとか…そんな事無いよね?
…まあそれはそうと、またフウカさんは勝手に私の心を読んだ。
常に心を読まれてるとは言え…やっぱり読まれたくない時だってあるから自重してほしいなぁ〜?
「むぅ…夜伽を私有利で過ごしたかったのに…」
「どうせ初めてだよね?フウカさん」
「うっ…」
「なら、お互い初めて同士、フェアに――同じ条件でやろうよ」
「…分かりました。では私はいかなる神通力も使いません。己の身一つでサユリさんと向き合います」
まるで私と戦うみたいな気合を見せるフウカさん。
…でも、気持ちは分からなくもない。
これから交わるほどの仲とは言え、私達の関係は日が浅い。
相手にいいところを見せたいって気持ちは、私にもあるからね。
「では…」
「私が受け……フウカさんの愛の全てをください」
「喜んで」
覚悟を決めたフウカさんが、私の上に乗ってくる。
そして体を倒すと…身長がほぼ同じな事もあって体がピッタリと重なった。
素肌同士が触れ合って、体重で押しつぶされた胸を挟んで心臓の鼓動を感じる。
妖怪でも心拍と言うものはあるらしい。
「その…一体何から始めるのが正解なのでしょうか…?」
「さあ?私も初めてだからなぁ…」
「そうですか…サユリさんは、少し前に私達のような関係を題材にした“まんが”と言うものを読んでおられましたし…何か知っているかと思ったのですが」
「待って?なんで知ってるの?」
「ふふっ。サユリさんと出会った時からずっと、私はサユリさんの事を見てきましたから」
私が勉強のために百合漫画を読んでいた事がフウカさんにバレてる…
いつか来る今日のために備えて、色々と勉強をしてたんだけど…いざ本番がやって来ると何をしたらいいか分からない。
「とりあえず…キスでもする?」
「そうですね。焦る必要はありませんから」
まず何をするべきか分からない私達は、とりあえずキスから始める。
首を曲げたりして動かすことしかできない私のために、フウカさんが食いつくように激しいキスをしてくれた。
だから、私も舌をねじ込んでフウカさんの口の中にある舌を引っ張り出す。
「ぷはっ…さ、サユリさん……」
舌を絡め取られそうになり、慌ててフウカさんは口を離す。
肩を震わせて、瞳に怯えが見える。
「怖い?ならもっとゆっくりでも――」
「い、いえ!大丈夫です!」
「むぐっ!?」
流石にいきなり過ぎたかと思って聞いてみたら、焦ったフウカさんが食いついてくる。
勢いよくキスをしたせいで、前歯同士がぶつかって少し痛い。
でも、そんな事が気にならないくらいフウカさんは積極的だ。
「んっ……ふぅ…んん…」
「ふう、か…さんっ……んんっ!!」
激しくされて体がこわばった。
なんとか逃げようとするけれど、華奢な体格のわりに私よりも力が強い。
神通力を使ってないよね?
……でも、こうやって激しくされるのは何故か悪くない。
むしろ、凄く気持ちが良くてずっとこうされたい。
「んっ…ふっ………らんぼう…して」
「は、ぃ…」
フウカさんに乱暴に扱われたい。
もっと傷付けてほしい。
そんな気持ちが強くなり、私は思わずとんでもない事を口走ってしまった。
だけど後悔はしてない。
このままフウカさんにされるがままってのも…悪くない。
私のことを、肉を貪るケモノのように襲ってくるフウカさん。
口では呼吸を許されない。
でも、激し過ぎるキスのせいで鼻での呼吸を忘れてしまう。
段々と苦しくなって来て、ついに耐えられなくなった私はフウカさんを突き飛ばしてしまった。
「はぁ……はぁ……」
「ご、ごめんなさい…ここまでするつもりは…」
苦しそうな私の表情でも見たのか、ペタンと垂れた耳と尻尾。
フウカさんを心配させたくない、何よりもっとしてほしい。
そんな思いからすぐに体を起こす。
「いや…凄く良かった…」
「ほ、ホントですか!?」
「うん…次は私がやりたい」
「ええ。もちろん構いませんよ」
私だけ楽しい思いをするのもフウカさんに悪いし…何より私だってフウカさんをめちゃくちゃにしたい。
フウカさんに上を譲ってもらうと、まず私は一度フウカさんに抱きつく。
そして、耳元で囁いた。
「私なりの愛情表現のつもりだから、受け入れてほしい。でも、嫌だったら遠慮なく突き飛ばして」
「はい…?―――ッ!?」
忠告というか…警告というか…先に嫌だったら突き飛ばしてくれても構わないと言うことを伝え、私はフウカさんの首を絞めた。
…人の首を絞めたことなんて無いけれど、だいたいどうすればいいか分かる。
要は体重をかけるかとにかく力を込めて気道と脈を圧迫して、空気や血液の流れを悪くすればいい。
そうすれば凄く苦しくなる。
突然の凶行にフウカさんが目を見開いて体に力を入れる。
でもそれを許さない。
私はすぐにフウカさんの唇を奪い、口の中に舌をねじ込んで中をグチャグチャに掻き回す。
そして、フウカさんの抵抗が激しくなった頃、手の力を弱めて唇を離す。
「さゆ、り……さ、ん…」
「私の感じたものを、知ってほしい。苦しいけど心地良い。一度に受け止めきれない愛の苦しさと気持ちよさ。どう?すっごくいいでしょ!?」
自分の言いたい事を言い切ると、私はまたフウカさんの首を絞め、さっきフウカさんにやられたような激しいキスをする。
するとフウカさんが私の顔の方に手を伸ばしてきて―――私と同じように首を絞めてきた。
「いっしょ…」
「もう…そんな事されたら…我慢出来ないよ…―――ッ!!」
私の言葉を聞いた直後、一気に首が絞めつけられて呼吸ができなくなる。
苦しい。
「あっ……くっ…」
「っ……ぅ……」
口から漏れる喘ぎ声は、快楽に溺れていると言う意味ではなく、本当に苦しんでいるように感じる。
実際フウカさんの顔色はどんどん悪くなっているし、私も自分の表情がどんどん歪んでいくのが分かる。
でも、苦しむフウカさんの瞳は、その奥に欲望の炎を宿していて、そんな目に映る私の瞳にも同じような欲望を感じた。
……私には、元より普通の恋愛なんて無理だったのかもしれない。
「「――〜っ!!…はぁ……はぁ……」」
流石に苦しくなって、同時に手を離す。
熱くもないのに額からは汗が吹き出し、重なり合っている肌がじんわりと湿り気を帯びる。
のしかかった状態では呼吸も整わない。
私はフウカさんの上から降りると、向かい合って抱きつく。
フウカさん荒い息が顔にかかってなんというか…背徳的?って感じ。
「軽い接吻から始めるつもりが…とんだ激しいものになりましたね?」
「私はこっちのほうが好きかも」
「私もですよ」
フウカさんの首を絞められた痕を見ると、感じてはいけないゾクゾクとした快感が背筋を走る。
一国の…それも種族単位で統べる王の娘――お姫様をこんなキズモノにした。
キズモノに出来るのは、してもいいのは私だけ。
そんな背徳感が気持ちよくて……少し頭が冷えて考えてみると、自分がいかに常識からかけ離れた思考を持つ人間か分かる。
だから、私には普通の恋愛なんて無理だった思ったのか…
「…人間の若い娘をこんなにして……本来ならば、即座に天界の処刑人が来るような話ですけど…もうサユリさんは私のものですから…」
「私だって、妖狐族のお姫様をこんなキズモノにしちゃって…死刑になってもおかしくない事をしてる。でも、許されるんだよね?」
「ええ。それに、この程度ばあやが瞬きの間に治してくれます。だから、もっともっとキズモノにしてくれても良いんですよ?サユリさん」
「……それを聞いてゾクゾクしちゃう私は、やっぱりフウカさんに出会えてよかったって思うよ」
「私もですよ、サユリさん」
まだ夜は始まったばかりだというのに、もう十分したくらいの満足感がある。
こんなにも満たされるなんて思ってもみなかった。
恋愛って素晴らしい。
「じゃあ…本番始めちゃう?」
「そうですね……その、私は知識が乏しいのでサユリさんに…」
「分かった。……私も初めてだから、過度な期待はしないでね」
そう言ってフウカさんを押し倒す。
えっと…確か漫画ではまずは優しく表面を撫でてたっけ?
勉強のために読んでいた漫画の内容を思い出しながら、フウカさんの股の間に指を伸ばす。
すぅ〜っとお腹を伝って指を運ぶと…数百年誰の手にも触れることのなかったフウカさんの大事な部分に触れる。
人非ざるフウカさんでも、おおよそ人型ということもあって体の作りはほとんど同じだ。
形自体は私のソレと変わらないその部分を優しく撫でる。
すると次第に指が湿り始め、フウカさんの体が私を受け入れる準備が出来たことが分かった。
「大好き」
そう一言呟いて、フウカさんの緊張をほぐしてから中へ指を入れる。
フウカさんの中は温かくて濡れていて、指を口の中に入れた時みたいだ。
でも、口ほど広くはないし、少し動かせば壁に当たる。
「んっ……っ…」
そして、指がフウカさんの中に触れる度にフウカさんは恥ずかしそうな声を漏らす。
そんな声を聞いちゃうと、初めは恐る恐ると言った感じだった私の指の動きが、興奮によってどんどん激しくなっていく。
中をゆっくり探るように撫でていた指の動きは、次第に掻き回すような乱暴なものになった。
「あっ…んんっ……んぁっ!?」
「可愛い声。もっとその声を聞かせて」
「あぃっ…!ん…んん〜……あっ…」
体を右に左に揺らせて小さく暴れるフウカさん。
私はそんなフウカさんの上にうつ伏せで寝転がり、両手を中に入れていない方の手で掴んで拘束する。
でも、キスはしない。
「んん…サユリ、さ、ん……んあぁっ!?」
「ついに音が聞こえるようになってきたね。おしまいの時は近いかな?」
「そ、そんな…こと…ありぃっ!!…んっ…あ、あぁ…!―――――っ!!!」
声にならない絶叫を上げ、体を痙攣させるフウカさん。
フウカさんがイッた。
比喩とかそういう設定とかでもなんでもない、本物のお姫様が私の目の前で。
快楽に溺れて私の指を吸い取ろうとしてくる。
その事に私はとても興奮し、自分で自分の中を触りたくなった。
…でも、それをするのはフウカさんの仕事。
すぐにでも楽しめるし…もう少しの辛抱だね。
「どう?私もう我慢できないんだけど…」
「ふふふ…天にも昇るような気分です……」
「それ大丈夫?フウカさんが言うと意味が違って聞こえるんだけど…」
快楽の余韻に浸るフウカさんにツッコミを入れる。
すぐには動けないフウカさんの上から降り、横で待機していると思っていたよりもすぐにフウカさんが起き上がって、私の股に視線を向けてきた。
「今度は私の番ですね。沢山楽しんでくださいね?」
「うん。楽しみ」
仰向けに寝転がる私の上にフウカさんがうつ伏せでのしかかる。
そんなフウカさんに抱きつくと、優しいキスをしてくれた。
そして……
「んっ……」
フウカさんが私のそこに触れる。
私がやったように、まずは優しく撫でて私の体を慣らしてくる。
それだけでは気持ちよくなれないけど…興奮から股間が熱くなるのを感じた。
「サユリさんは、ここを触ったことはありますか?」
「…まあ、人並みには?」
「でしたら…私と同じですね」
急に質問をされてドキッとした。
あまり質問の意図が読めずに居ると、フウカさんの細くて綺麗な指が私の中に入ってくる。
最初は異物が入ってきたような違和感だった。
でもすぐにそれは快感へと代わる。
「んん……」
フウカさんの細い指が私の中に触れるたび、私の頭に小さな電流が流れる。
そのたびに思わず声が漏れ…それがフウカさんを興奮させた。
次第に指の動きは激しくなり、それに応じて私の感じる快感も増す
「あっ…あっ…んっ…ふ、ぁ……」
ビリビリと私の頭と股間に電気が流れる。
1人でする時はこんなに気持ちよくなることなんて無い。
これは…大好きな人に触ってもらえてるからなのかな?
性行為がこんなに気持ちいいなんて…思わなかった。
それなのに学校ではひたすらに駄目だ駄目だと言われる。
大人は嘘つきだ。
こんな快感があるなんて知らなかった。
快楽が私の頭から湧き出す度に、思考の余地がなくなっていく。
もう何も考えられなくなる。
このまま快楽に、フウカさんに身を委ねて…果てたい。
そう思ったその時―――頬に鋭い痛みと感じたことのない快楽が走った。
「ふぇ…?」
わけが分からず頭の中が真っ白になる。
「私、ふと思ったのです。首を絞めての接吻があんなに気持ちいいのなら、きっと行為の最中にぶたれると凄く気持ちいいんじゃないかって…」
フウカさんの言葉を聞いてようやく理解できた。
それと同時に、まだじんじんと痛む頬からキスや愛撫などとはまた違う快楽に気付く。
そして、その快楽に意識を向けたその時、湧き上がるような…まるで雷にでも打たれたかのような電流が股間から頭を貫く。
「―――――ッ!!!?」
言葉にできない声を上げ、私の体がピクピクと痙攣した。
…気持ちいい。
「ふふっ…可愛いですよ、サユリさん」
「ふうかしゃん…」
呂律が上手く回らない。
ドバドバと快楽物質が放出たされて、頭を快楽一色に染め上げる。
もうもとには戻れない。
荒い息が整ってきた頃、ずっと私にのしかかったままのフウカさんの股間に指を回し、何も言わずいきなり穴の奥まで入れた。
「んああっ!?」
悲鳴に似た喘ぎ声をあげるフウカさん。
でも、驚いたのは一瞬で、すぐさまいつもの笑みを浮かべて私を見つめてくる。
「終わらないよ。フウカさぁぁああっ!?」
フウカさんもいきなり私の中に指を奥まで押し込んできて、瞬間的に快楽が溢れだす。
お互いに性器に指を突っ込んだまま見つめ合う。
「フウカさんは知ってるかな?人間界で男性が女性をこんな事に誘う時、『今夜は寝かせないよ』って言うの」
「まさに今の状況がそうですね。サユリさんは体力にご自信は?」
「まあまあかな。じゃあ…お互い今夜は寝られないね」
「ええ」
私とフウカさんの夜はまだまだ始まったばかり。
愛の証明だとかそんな意味ではなく、ただ単に快楽に溺れたい私達は、愛しい人の淫らな顔を見て耳が真っ赤になるほど興奮する。
そして、気が付けば…いつの間にか疲れて眠ってしまっていた。




