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Separate Memory 〜美しい地獄で生きる。その為に世界を見捨てた。〜  作者: 水瀬輝夜
-歪の産声-

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04


翌日の放課後。

屋上の鉄扉を押し開けると、そこには昨日と同じように空を見上げる和翠の姿があった。


「……こんにちは」


優也の声に、和翠は待っていたかのように振り返り、柔らかく微笑む。


「お疲れ様。貴方も、また『暇つぶし』?」

「はい……。先輩と、一緒ですね」


優也は、胸に刺さったままの「確信」を確かめるように切り出した。


「あの。先輩を見た時、初めて会った気がしなくて。それで……どこかで会ったこと、ありませんか?」

「うーん、つまり遠回しに私をナンパしてる?」

「ち、違いますっ!」


全力で首を振る優也に、和翠は小悪魔めいた笑い声を上げる。


「そんなに否定されると、少し傷ついちゃうかな。……でも、釣り合うかどうかじゃなくて、お互いに好きかどうかじゃないかしら。違う?」


核心を突く言葉に、優也は深く息を吐き出し、意を決して右手を差し出した。


「……僕と、友達になってください」

「ええ。喜んで」


五月の風の中、二人の手が重なった。





『――優也、お前は小学生か?』


夜、自室のベッドに寝転ぶ優也の耳元で、スマホ越しに久志の呆れた声が響く。


同じ時刻、木原家。


「友達って……姉さん、それじゃ小学生じゃないんだから」


和翠の報告を聞いた弟の一輝もまた、全く同じ言葉を投げかけていた。


「でもね」と、和翠はベッドに腰掛け、一輝に反論する。


「何かを始めるなら、まずそこからじゃない?」


優也もまた、スマホの受話口に向かって自論を語っていた。


「何かを始めるなら、まず『友達』にならないと始まらないだろ?」

『まあ、言いたいことはわかるけどさ。わざわざバイト明けの俺に報告することか?』


久志のツッコミに、優也は苦笑しながら返す。


「いや、久志には昨日相談に乗ってもらったから、ちゃんと報告しなきゃと思ってさ」


同じ頃、和翠は一輝に甘えるように笑っていた。


「一輝には昨日相談に乗ってもらったから、報告した方がいいかなって」

「姉さんのペースがあるんだろうし、いいけどさ……。焦らなくていいってことだよ。十人十色、って言うだろ?」


『辞典にも載ってるぜ。考え方や好みは人それぞれだってな』


今度は久志の声が、優也の部屋に響く。


「……考え方、好み、性質がバラバラだってことだよな」


優也がその意味を反芻すると、和翠の部屋でも同じ会話が続いていた。


「わざわざ意味まで説明しなくていいんだけど」と、一輝。

和翠は不思議そうに首を傾げた。


「え? 言ってあげないと解らない人もいるかもしれないでしょ?」

「解らない人って……ここには俺と姉さんしか居ないけど」

「それは、解る人には解るの」


『なんのこっちゃ』


呆れる久志の声に、優也は少しだけ口角を上げた。


『でも、一歩前に進なんだろ? 手応えはあるんだな』

「手応えというか……。これで良かったんだって、そう思えたんだ」

『お前がいいなら、それで良い。俺はそう思うぜ』


「それって、結局は当人の問題ってこと?」


和翠は、一輝が投げかけた「自分たちがいいなら周りは関係ない」という言葉を噛みしめていた。


「そうだよ。世間の目なんて気にするなよ。姉さんは、人のためじゃなく自分のために時間を使ってもいいんだ。……幸せは待つものじゃない、掴み取るもんだ」


『いいか優也。幸せは待つものじゃない。掴み取るもんだ』


久志の言葉が、優也の胸の空白を鋭く突いた。


「久志……顔に似合わずロマンチストだな。……でも、ありがとう。幸せは待つものじゃない、掴むもの。忘れないよ」

『ああ。……じゃ、また明日学校でな』


通話を終え、優也はベッドに倒れ込んだ。

ふと、和翠の顔が浮かぶ。今頃、彼女は何をしているだろうか。


「……よし、明日、番号交換を頼んでみよう」


同じ月を見上げながら、和翠もまた、スマホを握りしめてベッドの中で震えていた。


「……番号交換、してくれるかな。でも、動かないとダメなんだよね」


不意に、優也の真っ直ぐな瞳が脳裏を過る。  ――ドクン、ドクン。

胸の奥で、熱い鼓動が跳ねた。


「……うん。また明日、学校で会えるといいな」



to be continued.


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