ギルドと僧侶の行方
目覚めると、枕元のスマホが静かに光っていた。
《月光充電完了》
「満タンか。よし」
俺は起き上がり、早速ノアを呼ぶ。
「ノア、次に何をすれば異世界攻略に近づく?」
《まずは社会的身分を確立してください。この街の冒険者ギルドへ》
「ギルド?」
《この世界では、無所属は信用がありません。宿、依頼、取引――すべてに影響します》
「つまり、身分証みたいなもんか」
《はい。さらに依頼を通じて戦力と情報を得られます》
「異世界攻略の第一歩ってわけだな」
《涼さんが異世界から帰還を目指すなら、孤立は危険で非効率です》
俺は小さく息を吐いた。
「まずは“社会人”になるか」
《それと、途中で調味料を調達しておく事もお薦めします》
「有難う、了解だ」
街へ出る。
途中の雑貨屋で小瓶をいくつか購入。
(流石、商業都市、武器屋から雑貨屋まで何でもあるな)
調味料屋では塩、胡椒、カイエンペッパー。
(カイエン迄……意外に充実してるな)
店を出て早速ギルドに向かう。
ホテルマネージャーに教えてもらった場所にちゃんとあった。
巨大な木製扉を押し開ける。
中は熱気に満ちていた。
屈強な戦士、ローブ姿の魔術師、弓を背負った女。
全員が一瞬こちらを見る。
(視線、重っ)
俺は受付へ向かう。
そこには長耳のエルフ女性。
「登録料は金貨一枚になります」
「お願いします」
金貨を支払う。
書類に職業を書く欄。
――便利屋。
一瞬の沈黙。
「え?お客様の職業は便利屋ですか?」
クスクス。
周囲から笑い声。
受付エルフが困った顔をする。
「……最低ランクからのスタートになります」
「最低て?」
「ほぼ新人扱いです」
横で誰かが言う。
「便利屋って何するんだよ」
「雑用係か?」
クスクス。
(まあ想定内。実際新人だし)
掲示板を見る。
高ランク依頼は金貨単位。
低ランクは銅貨。
(差、えぐいな)
「やっぱり来たか」
背後から声。
振り向くと、昨日のシーフ、カインがいた。
「便利屋で登録か。面白ぇ」
「全然面白くない。それよりカイン、情報を買いたいんだ」
俺は金貨を一枚見せる。
カインが口角を上げる。
「昨日衝突した僧侶の件だろ?」
「話早っ!ていうか何でそれを知ってる?ひょっとしてお前、俺のストーカー?」
「ばっ馬鹿言うなよ。なんで俺がわざわざ涼のストーカーをするんだよ?」
(全外れでは無さそうな反応が逆に怖いんだが)
「隣町の宗教都市リュグレイン。大神官の娘だ」
(やっぱり高身分だったか)
「俺はそこに向けて今日中に出発するから、隣町迄案内してくれ」
「同行は別料金だぜ」
「金貨1枚で頼む」
カインは受け取らない。
「無理」
「隣街まで一緒に行くだけだろ?」
「理由迄は解らねえが恐らく彼女訳有りでな、今外は魔物が異常に多いのと、それと同じ位彼女の護衛も増えている」
(思ってたより面倒な事になってきたな)
「じゃあ、二枚」
「まあいい。隣町までエスコートしてやる。それと出発前の飯も涼の驕りだからな。昨日美味そうな飯屋見つけたんだ」
「抜け目ねえーな、わかったよ」
「涼はよっぽど僧侶女の事が気になってるんだな」
「……」
「俺と同じ22歳で若いしな」
「何?俺30だけど、お前かなり年下のくせになんて生意気な口調を」
「ハハハ、まあまあ、それより早く金貨2枚よこせ」
(生意気盛りだな。あの僧侶は癒し系のイメージだったなあ)
たしかに腹が減ったのでカインお薦めの飯屋へ行く事にした。




